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#3963 生徒がもってきた英文和訳問題(2):解説 Apr. 17, 2019 [62-1 個別指導の実際]

<最終更新情報>
4月18日朝9時50分

 前回の弊ブログでZ会で最近宿題に出された英文和訳問題文を紹介した。生徒がネットで解答が見られるというので、作ってあった和訳と比較対照してみた。
 問題文を再掲してからがいいですね。青字の部分が英訳に指定された文です。

 If you counted the times you say "please" in a day in relation to the number of requests you make of your employees, telephone operaters, store clerks, whomever, I would bet you could increase your usage of the word tenfold.

  And if you do, pay special attention to the results, for it is my observation that a person's willingness to comply --- even the promptness with which he complies --- improve dramatically when your reguest or instrution either starts or ends with with a simple "please".

 「And if you do,」のdoは代動詞ですが省略もあります。一文前のところを見るとわかります。深層構造に書き換えてみます。
 And if you increase (your usage of the word tenfold), 
  直前の文を見れば do の正体が判明します。the word は定冠詞がついているので、"please" を指しています。だから意味は「プリーズと十倍言えば」ということ、単なる条件節です。do が increase になり、( )で示した省略句を補えば意味は精確につかまえられます。

 
問題はその次の部分にありました。
 「And if you do, pay special attention to the results, 」この文の pay 以下を命令文ととっていると解答を見た生徒が主張してました。形の上からはなるほどそうですが、深層構造(Deep Structure)は命令文ではないようです。第一、意味が通じないでしょう。この生徒は高1と高2の教科書の精読を終わり、高3の教科書をすでに半分消化していますから、文脈判断があるていどできます。平易な日本語で訳文を書くトレーニングを積んできましたから模範解答の不自然さに気がついたかな。
 同じようにDSに書き換えてみます。
 And if you increase (your usage of the word tenfold), (you) pay special attention to the result, ...
 条件節と帰結節の主語が同じだから、あとのほうが省略されただけですから命令文ではありません。従属節と主節の主語が同じなら、どちらが先に並ぶかという順序の問題がありますが、あとのほうが省略されるというのが、英語の基本的な修辞ルールです。
 「条件節と帰結節」は数学記号で書くと「P ⇒ Q」です。「プリーズと十倍言えば ⇒ 特段の配慮をしろ」ではそのあとの理由の節と意味の整合性がとれないことは普通の学力がある高校生なら理解できます。省略された主語の you を補って、すなおに、次のように読みましょう。
  「プリーズと10倍言えば、その結果がよくなるように特段の配慮をしています」

 対比のため「富士山の頂上なら水は95度で沸騰する」という例文を挙げます。
    If the water on the top of the Mt Fuji becomes 95 degrees, it boils.

  この例文では条件節の the water は主節では代名詞 it で置き換えられます。ところが問題文は条件節の主語が代名詞の you なのですから、主節の主語は同じ you の繰り返しになります。だから、同じ主語なら後置される主節のほうの主語が省略になっているのです。もう一つ挙げましょう。
 I become sleepy if tired. (疲れたら眠くなる)
 このケースでは、if (I am) tired の括弧内が省略されます。if節が前に来れば次のようになります。
 If I am tired, become sleepy.
  どちらの文が自然かというとわたしは最初にあげた if 節が後置されるほうをとります。ではなぜ逆順になったかという問題が残りますが、直前の文を if you do の do が受けているので、そちらを前置して、前の文とのつながりを明示したかったからでしょう。 


 その次の接続詞 for 以下の節を読めばなお一層はっきりします。
 for は前置詞ではなく理由を表す接続詞です。「P ⇒ Q(PならばQ)」と言った後で、その理由を補足しています。それがこの節の論理的な役割です。なぜ接続詞であるのかは、forのあとに節構造が配置されているからです。そしてここで多くの高校生が迷ったのではないかと思います。「for it」と塊で理解してしまうと前置詞に見えます。そうすると is 以下の節が訳の分からぬものになってしまいます。
 この節の it は主語で that 以下なのです。主語が節構造をとっていてとっても長く、いわば「頭の重い」文になってしまう。そういうときは、仮の主語 it で代用し、真の主語は that 節で後置するのが英文を書く際の基本的なルールです。it~that 構文とか it~to 不定詞構文は同じなのです。後置される主語が to 不定詞句か that 節かの違いだけで、どちらも長すぎるということ。英語の修辞上の基本ルールは主語が長ければ it で置き換え、そして主語はこれだよと指示しているthat以下をみよということです。主語を「 」で括って青字にして、動詞と主格補語を黒字にして、本来の位置に文を書き直してみましょう。

 「 a person's willingness to comply --- even the promptness with which he complies --- improve dramatically when your reguest or instrution either starts or ends with with a simple "please"」 is my observation .

 長い主語でしょう、不格好です、如何にも主語の位置が気持ち悪いのがよく伝わってきます。だから、itで代用しておいて、あとからthat節で説明するよということなのです。to 不定詞句を利用して句構造になるなら節構造ではなく主語は句構造になるだけのことです。
 簡単に書くと
 it is my observation.
  たったこれだけの文なんです、とってもシンプルでしょ。

 「even the promptness with which he complies」、挿入句であるこの文も日本語にしづらい、とくに promptness が厄介ですね。ジーニアス4版には載っていません。抽象名詞語尾の ness を外した prompt はなじみのある単語ですが、prompt を知っていてもこの場合は類推はちょっと無理。この単語を見たとたんにわたしは初期のころのパソコンで「プロンプト」を思い出しました。画面が入力待ちになります、それがプロンプトでした。「うながす、促進する」くらいの意味でしょう。「機敏な」という形容詞の方を知りませんでした。ネット辞書 Weblio で検索したら、「即発、機敏さ」とありました。シンプルセンテンスに書き換えておきます。

    he comlies with the promptness
 he=a person ですから、逐語訳すると「人が機敏さをもって対応する⇒機敏に対応する⇒緊急対応⇒急な対応⇒急ぎのお願い」という意味ですが、事情がわかりませんね。
 欧米では職種がはっきり決まっており、たとえば、お店がどれほど客で混雑していても掃除で雇われた人が、品物の包装を手伝ったり、お客さんの相手をするなんてことはしません。経理担当の人がたとえ上手に包装できたとしても、商品の包装の手伝いをすることはないわけです。日本では、「〇〇さん、ちょっとお客さんの相談に乗ってあげて」とか「お客さん待たせているから、経理の〇〇さん包装手伝って」ぐらいは言えますし、それですぐにそうしてもらえます。ところが欧米ではそうではない。他の職種の人の仕事を奪うことになるからご法度です。そのあたりのことを理解していれば、even 以下の挿入句の意味がよくわかります。「緊急対応ですら」という意味になります。こういうことをするには、マネジャーがその人にお客が混雑してきたら、客あしらいもお願いしますとあらかじめ雇用契約に含めることになります。手続きが面倒なのです。お客が込んできたからと言って、急に「職種変更」できません。そのあたりの不都合を「プリーズ」を発話の前か後につけることで何とかしようというわけです。具体的な状況が頭の中に再現できたら、あとはそれを平易な日本語に置き換えるだけ。
 文化に対する周辺情報を知っているかどうかが訳文に反映してしまいます。だから、異文化理解とか、話題になっているものやことがらに関する周辺情報を知っておくことは必要なのです。教養は広くて深い方がいいとはこういうことがあるからです。

 あとは日本語の作文能力がためされます、これだけ長いとたいへんです。
 参考訳を書いておきます。和訳の日本文のストライクゾーンは広い、のびのびやりましょう。

「だれかれかまわず人にプリーズと十倍言えば、(要求や指示の)結果がよくなるように特段の配慮をしていることになります。というのは、要求や指示をプリーズという言葉で始めるか終わらせるかすれば状況が劇的に変わり、人は自ら喜んで応じてくれるというのがわたしの観察するところだからです。(その人の本来の職務ではないことを)いきなり頼んだ場合ですら、(プリーズと言えば)人は四の五のいわずに喜んでやってくれるものです。」

 こんな訳文を書いたら、Z会の採点では6割ももらえるかな?Z会にはZ会の採点基準があるようですから、それにチューニングした訳文を書く必要があります。でも、点数なんか気にせずどんどんやっちゃった方が、学力は伸びます。

 和訳するときの冠詞類の扱いについてコメントしておきます。
 the results には定冠詞がついているので、わかりやすくするために( )で補った語を付加してかまわないのです。冠詞類は日本語にはない機能ですから、それらをどのように日本語にするかは訳文を作る人の個性が出るところでしょう。a と an と the と無冠詞はそれぞれ特別な意味を名詞句に付与しています。冠詞類をないがしろにしてはいけません。これも慣れです。いつも冠詞類を意識して英文を観察していればセンスは自然に磨かれます。

 数学の勉強でもたとえば三角関数の加法公式だけ覚えていれば、差の公式も倍角の公式も半角の公式も30秒で導き出せます。sinとcosだけ覚えておけば、tanはsin/cosですから、これも1分あれば計算できます。逆関数も同じことです。つまり、基本的なことだけ覚えておけば、あとは芋づる方式ででてきます。成績の悪い人は、個別に全部暗記して、脳がパンクしてあきらめてしまいます。成績のよい生徒は暗記するものを選別して量を数分の一にしています。だから、脳の負荷が小さく、応用が利く。英語も同じなんです。基本ルールが何かを常に考える、そしてそこから派生的なものを区別し、基本ルールを徹底的に利用・応用してみる。
 
 問題文と前段の文を引用しましたが、前段の文は仮定法過去、現実に反する仮定ですが、問題文のほうは単なる条件節の文です。これは対比という修辞上の配慮でしょう。文が効果的に配置されています。整理整頓されたこれら2文の配置をレトリックといいますが、美しさを感じませんか?わたしは感じます。

 形、受験英語では「構文」というようですが、それは表層構造であって、「構文」に騙されることもあるのです。深層構造と英語の作文上(修辞上)の基本ルールを知っているだけで十分ですよ。あとは多読してたくさんの事例を消化すればいい。

 質問をした生徒は夏休みが終わるころにはハラリの500頁ある著書Sapiensを読み始めます。高校教科書を卒業してフィールドでの精読トレーニングへ突入です。英語を読む力が飛躍的に伸び、問題文の難易度が高くなるほど学力差がでます、偏差値は結果でしかありません。
 全国の若いお医者さん、よろしければどうぞ市立根室病院へ赴任してきてください。根室高校の先生たちも学力の高い生徒の育成に特段の配慮をしてくれています。今年の四月から阿吽の呼吸で協力体制ができつつあります。医学部進学のこどもの教育の面倒は根室市では地域協力が整いつつあるのでいましばらくはみられます(笑)

#3962 生徒がもってきた英文和訳問題(1):Z会 Apr. 16, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-04-16




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