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#3842 良質のテクストと日本語音読指導 Oct. 20, 2018 [44. 本を読む]

 先々週から中3人と高1の生徒に音読指導を再開した。テクストは西岡常一。小川三夫・塩野米松共著『木のいのち 木の心 天地人』である。
 西岡氏は法隆寺に代々伝わる棟梁の末裔、小川はその弟子である。師匠と弟子の対話は読みごたえがある。
 いわゆる宮大工だが昔は番匠といっていたらしい。明治の廃仏毀釈運動*が宮大工を激減させた事実は、歴史の教科書には載っていない。
 名人の域になると、古代建築に関しては東大教授も足元にも及ばない専門知識をわんさかもっている。手の技だけではなく、建築材料である檜がいつから使われているかを、日本書紀の文を引用しながら解説している。
 5か月ほどたのしい時間となりそうだ。
(裏話をすると、工業高校へ進学して、建築士になるという生徒が二人いるので、職人仕事の精髄を伝えたくて急遽選んだのがこの本である。わたしは小学生のころ大工さんになりたかったことがあるので、西岡氏と小川氏の本は出版されたときに単行本で読んでいる。)

 高1の生徒から昨日、福沢諭吉『福翁自伝』を読み終わったと報告があった。「次は何をやりますか?」と問うので、山本義隆著『近代日本150年 科学技術力総力戦体制の破綻』をとりあげると通告した。
 山本は日本でトップクラスの物理学者である、そして知の巨人でもある。緻密な論証の技は一流の職人そのもの。語彙が豊富で引用文の読解に苦労するところはある、たとえば鉄を意味する用語に充ててある漢字が漢和辞典には載っていない字だったりする。明治に鉄がはいってくるが、従来の鍛冶屋の製鉄とは違うので、その違いを表現する字を創ったのだろう。明治の人々が外国へ行き、見聞きしたものを紹介するのに、既存の漢字では表現しきれぬものを感じたのだろう。そういうみずみずしい感動も引用文から伝わってくる。
 山本義隆氏の緻密な論証の積み上げを味わってもらいたい。
 『福翁自伝』は途中まで一緒に音読し、残り2/3を独力で読ませた。高校1年生でこのレベルが読めたら、明治期のものの半数くらいは読めるだろう、十分に目的は達成した。
 日本語語彙力と読解力はセットになっている。日本語読解力の大きな者は日本語語彙も豊富である。そして外国語の読解が母語である日本語の読解力を上回ることはない。そういう意味で日本語語彙が豊かで日本語の文章の読解力が大きいということは英文読解の基礎をなしている。今年初めころから英文読解トレーニングをしている、だいぶこなれた日本語にできるようになってきたので、精読と合わせて頭から読みこなす速度アップトレーニングを数か月前から始めた。一緒に読んで、やりかたを伝授するだけ。半年後にジャパンタイムズ記事を読むことになるだろう。ジャンルが様々だから、よいトレーニング材料になる。

 当代の知の巨人の一人である山本義隆は1968年に東大全共闘議長だった。団塊世代には懐かしいネームである。

 #3640より
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-11-17
〈 音読リスト:#3405より 〉
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< 国語力アップのための音読トレーニング >
 中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』
○『声に出して読みたい日本語②』
○『坊ちゃん』夏目漱石
○『羅生門』芥川龍之介
○『走れメロス』太宰治
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
 『五重塔』幸田露伴
 『山月記』中島敦
●『読書力』斉藤隆
●『国家の品格』藤原正彦
 『日本人は何を考えてきたのか』斉藤隆
 『語彙力こそが教養である』斉藤隆 

 これから読むものをどうしようかいま考えている。
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳
 『福翁自伝』福沢諭吉
 『善の研究』西田幾多郎
 『古寺巡礼』和辻哲郎
 『風土』和辻哲郎
 『司馬遼太郎対話選集2 日本語の本質』文春文庫
 『伊勢物語』

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で十数年使用した実績がある。音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが2年前から希望者のみに限定している。)
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 明治初期の廃仏毀釈運動とその寺院・仏閣・伽藍の破壊や経典・仏像類の国宝級の文化財破壊の凄まじさについては井沢元彦の下記の著作をご覧いただきたい。中国の文化大革命は他人事ではないのである。
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