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#3418 年金積立金運用報告書を読む⑦:気になる変化 Sep. 22, 2016 [年金]

 データを整理してみて、基礎年金拠出金がどういう性格で、どういう計算方式で算出され、会計の仕組み上どのように扱われているのか疑問がわきました。
(そうした疑問にZAPPERさんが投稿欄で的確に答えてくれています。次の回ではそうした投稿欄での情報提供と議論をご紹介します。)

  データを見ていておやっと思ったことがありました。基礎年金拠出金の総支出に占める割合の変化が年を王ごとに上昇していますが、理由がわかりません、データを見て一緒に考えてほしいので再掲します。
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 H36年の推計値を実績値と並べました。現状のまま放置すると推計値のようなことになりますが、政府は回避すべくさまざまな手を打つちます。後で述べますが、選択肢は四種類くらいに限られています。

                     ---------実績値--------  推計値
<収入>      H13年   H20年  H26年    H36
 保険料      21.8   24.4   27.9     25.6
 国庫負担      5.2    7.2   10.7      10.7
 運用収入      4.0    1.8    3.2         1.6
 基礎年金交付金 3.9    3.3    1.3         1.3
 積立金取崩し   0.0    3.5    0.0         8.8
 その他       0.9    1.6    2.7         2.0
  収入合計    35.8    41.8   45.8        50.0

<支出>      H13年   H20年  H26年    H36
 給付費      22.1      24.1    23.9    26.4
 基礎年金拠出金12.5    17.4    19.6       21.6
 その他       0.4       3.1       0.4         2.0
   支出合計   35.2     41.9     44.0        50.0
 年金積立金   147.3      131.7    112.1       48.1
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  基礎年金拠出金の総支出に対する割合がなぜ年々上昇しているのか理由に推測がついたら教示願いたいというわたしの要請にもZAPPERさんが答えてくれました。
 第1号被保険者の免除申請が増えていることがその主たる原因ではないかというのです。基礎年金拠出金の計算方式や会計上の仕組みが書かれたサイトも教えてくれました。年金に関する周辺情報に疎いわたしにはこれらの情報がとっても役に立ちました。専門家ノバックアップがあることはとってもありがたい。かれが教えてくれたサイトをリストアップしておきます。
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*【国民年金法】基礎年金拠出金の計算
http://sharoshiw.blogspot.jp/2015/05/blog-post_68.html

 第3号保険料問題と基礎年金拠出金
http://www.office-onoduka.com/nenkinblog/2007/04/post_34.html

 自分の年金受給開始年齢を確認しよう
http://allabout.co.jp/gm/gc/24983/

 「いよいよ始まる「年金減額」。いくら減るのか、何が問題なのか」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20130913/365190/?ST=p_bizboard&bzb_pt=0

 基礎年金拠出金の計算方式や基礎年金勘定と厚生年金勘定間の会計の仕組みがよくわかる資料が次のURLの資料です。一元化したはずなのに、なぜ厚生年金積立金から基礎年金拠出金が支出されているのか、理由は基礎年金が別勘定によって統制されているからです。それが確認できる資料がこの中にありました。こういう細かいところがわからないと全体のお金の動きが腑に落ちないのです。とっても気になっていました。
 基礎年金の財源と年金一元化問題
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/0486.pdf
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 厚生年金と国民年金は一元化されており、厚生年金会計に表示されている基礎年金拠出金は、厚生年金会計から、基礎年金会計への振り替え分であるから、GPISの勘定間の内部振り替えです。

 基礎年金拠出金割合が平成36年度に50%に達すると仮定したら、基礎年金拠出金はシミュレーションよりもH36単年度だけで6.8兆円増え、年金財政に深刻な影響を及ぼすことがわかります
 増分の計算は中1年生の数学の応用問題に使えます。「距離・時間・速度」「食塩・食塩水・濃度」と同型の問題です。
 10年間の積立金取崩額を計算したときに1次関数の式とx軸で囲まれた台形の面積を利用しました。そこで言及しましたが高校2年で習う積分を利用するともっと簡単に計算できます。数学はあっちのダンジョンでもこっちのダンジョンでも利用可能な便利なアイテムなのです。(笑)
(dungeon:地下牢、迷宮。『ソードアート・オンライン』によく出てくる用語です)
*#3105 『ソードアートオンライン16』:アリシゼーション・エクスプローディング Aug.16, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15-1
 
 計算: x / (26.4 + x + 2) = 0.5
         x = 28.4
    28.4 - 21.6 = 6.8 兆円アップ


                     ---------実績値--------    推計値
                       H13年   H20年  H26年   H36年
  基礎年金拠出金 12.5    17.4    19.6       28.4
   割合      35.5%⇒ 41.5%⇒ 44.5%⇒  50%

 シミュレーションの示すところは、非正規雇用下にあり低所得のために免除申請せざるを得ない第1号被保険者の増大をどのように防ぐかが年金制度維持の要であるということ。問題の焦点は老人の受給額減額ばかりでなく、若年層の非正規雇用比率を如何に低減するかということにあります。つまり若年層に正規雇用を保障する必要すべしということ
 労働法制の規制解除がどれほどばかげたものであったか明白です
(規制解除の旗振り役を任じた竹中平蔵氏はいま派遣業界最大手のリクルート社会長職におさまっています。あきれて開いた口がふさがりません。頭脳を己の利得にのみ使う者が増えてしまった。ズルイ、アクドイ、卑怯、昔の日本では最も嫌われた人格です。頭脳はふるさとのために、日本という国のために、人類と地球に共存する生きとし生けるものたちのために使ってこそ値打ちがあります。)

 強い管理貿易で海外に移転した生産拠点を国内に取り戻し、職人仕事を中心にした経済社会を創れば、若年層に安定した正規雇用を保障できます。そのためには、西欧の経済学の前提条件である工場労働(=苦役)とはまったく別の公理の導入が必要です。
 日本的な職人仕事観を公理に措定した経済学をベースとした経済社会を築はばよろしい。そのあたりに興味のある方は、弊ブログのカテゴリー「資本論と21世紀の経済学」をお読みください。

 ここからはわたしの仮説です。
 年金の受給開始年齢が後ろ倒しになる前から、一部の企業ではさまざまな形で定年延長がなされてきました。特に技術職の60歳代は熟練のスキルをもっているので、勤務時間短縮や給与切り下げによって再雇用するメリットが企業側に大きいのです。
 団塊世代の退職が4年前から始まりましたが、定年後に給与が半額以下でも勤務時間短縮による仕事の継続は健康維持にも収入面でもメリットが大きいのです。年金受給開始までの収入としても定年退職後の再雇用は歓迎すべき政策でした。こうした再雇用や定年延長が社会に広範囲に受け入れられつつあるのが現状だとすると、それは若年層の雇用や雇用条件にどのようなう副作用をもたらすのかについても考えておかなければなりません。
 60歳で定年退職して、低い賃金で再雇用される老人層が増えた分だけ、若年層の正規雇用職が失われれば、若年層の非正規雇用割合が増えるのは当然です。若年層の非正規雇用割合が増えれば30代になってもキャリアをつめない人の割合が増大します。これは大変なことです、生涯にわたって非正規雇用を続けなければならない人の割合が若年層で確実に増大していくことを意味しているからです。このような世代間格差は倫理的にも大きな問題です。日本人は退け際の美という日本的価値観をいま一度思い起こす必要があるのではないでしょうか。
 人工知能の発達は、スキルの高い職種を侵食していくので、単純労働が増えます。その単純労働も人工知能とシステムと機械がつながることで機械に置き換わっていきます。

 生産年齢人口が最近6年間で575万人減少していますが、それを補うために老人雇用を拡大するような政策はその意図するところとは逆の効果をもたらすのではないでしょうか。
 そうしてみますと、雇用調整金や低年齢在職老齢年金などの労働政策は副作用が強すぎる劇薬です。日銀のマイナス金利と同様に、目先の利益を追うと碌なことにならない見本のひとつと言えるでしょう。
 生産年齢人口の実績値と推計値をご覧ください。
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*http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/3-1.xls

年 次人数(千人)   %
15~64歳15~64歳
平成 22(2010)81,735 63.8
23(2011)81,303 63.7
24(2012)80,173 62.9
25(2013)78,996 62.2
26(2014)77,803 61.4
27(2015)76,818 60.9
28(2016)75,979 60.5
29(2017)75,245 60.2
30(2018)74,584 59.9
31(2019)74,011 59.8
32(2020)73,408 59.7
33(2021)72,866 59.6
34(2022)72,408 59.6
35(2023)71,920 59.6
36(2024)71,369 59.6
37(2025)70,845 59.6
38(2026)70,308 59.6



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 以下はZAPPERさんから#3417コメント欄を通じて教えていただいた雇用および年金政策です。

*大企業向け、社会保険の適用拡大策 H28年10月から
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya

 雇用延長と在職老齢年金について:高年齢雇用継続基本給付金
http://www.kitamon.com/hrs/colum/tech090518


< 貧に甘んじる覚悟 >
 若年層に非正規雇用を増やしてまで、老人の雇用を保証する必要はない。わたしたち老人は若者が正規雇用に就けるように貧に甘んじよう。社会にはまともな人件費を支払ったら成り立たぬが、必要な仕事はある。
 たとえば、過疎化し担い手がいなくなった耕作地での農業、ZAPPERさんが釧路でやっているが、当面は採算が期待できない新規事業の実験的試みへの協力など、探せば若い人には担えない仕事がある。60歳を過ぎたら、そういうところで社会のお役に立つ生活をする老人が増えたら、若年層は生きやすい。受給金額の1割減や世帯ごとの受給上限へ制限を受け入れましょう。
 政府は目先を糊塗するために余計なことをしすぎています。
 1994年3月23日に読んだ中野孝次著『清貧の思想』(草思社)を紹介します、よろしければご一読ください。

 同書211ページ、徒然草第百十二段より
「人間の儀式、いづれのことか去り難からぬ。世俗の黙(もだ)し難きに随ひて、これを必ずとせば、願ひも多く、身も苦しく、心の暇(いとま)もなく、一生は、雑事(ぞふじ)の小節(せうせつ)にさへられて、空しく暮れなん。日暮れ、塗(みち)遠し。吾が生(しょう)既に蹉跎(さだ)たり。諸縁を放下すべき時なり。信をも守らじ。礼儀をも思はじ。この心をも得ざらん人は、物狂ひとも言へ、うつつなし、情けなしとも思へ。毀(そし)るとも苦しまじ。誉むとも聞き入れじ。」

 要するに、60歳を過ぎたら世間の雑事やあれが欲しいとかこれも欲しいという「物狂い」から離れて、心の生活の充実をこそ図れということ。


*#3417 年金積立金運用報告書を読む⑥:定量的に考えよう Sep.19, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-19#comments


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文庫本が出ているのでそちらを紹介します。

清貧の思想 (文春文庫)

清貧の思想 (文春文庫)

  • 作者: 中野 孝次
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1996/11
  • メディア: 文庫


#3417 年金積立金運用報告書を読む⑥:定量的に考えよう Sep.19, 2016 [年金]

<最終更新情報:9/21午前0時>

 今朝6時12.5度、根室はめっきり寒くなりましたが、庭の桜は6輪ほど寒さに震えながら咲いています。8月末から北海道に台風が3つも上陸したので葉が落ちて、その後数日暖かかったので季節を勘違いしたのでしょう。釧路でも桜が開花していると数日前のテレビニュース。

 前回#3416で、このまま放置すると、平成26年度末に112.1兆円あった年金運用積立金が平成41年(2029年)にゼロになってしまう結果がシミュレーションで得られました。使用したデータの制限から、このシミュレーションの精度は、平成41年±3年でおおよそ信頼性90%とebisuは判断しています。とくに根拠はありません、企業で経営改善のための財務分析も数年間担当していましたから、あえていうと経験智、'たしからしい'ということです。何もしなければ平成38年(2026年)から平成44年(2032年)までの間に90%の確率で年金財政の破綻が起きる、だからそれに備えていま手を打たなければならない、そういうことです。

 なぜこのようなことをしているのかというと、わたしたちの年金積立金が枯渇するという事態がいつ起きるのか、そしてそれを回避あるいは緩和するには、どのような施策がありうるのかを定量的に検討したかったからです。

 わたしは35歳のときに公団の分譲住宅を購入しましたが、そのときに売り手の説明を鵜呑みにせずに、女房と一緒にいくつか条件を変えて自分たちで計算をしてみました。そして無理がないと判断して買うことにしました。50歳で返済が終わりその後の人生の選択に借金という制約がなくなりました。分不相応な物件を購入していたら、お袋の介護のためにふるさとに戻ってくることができなかったでしょう。他人の計算を鵜呑みにしないで、自分で計算して確かめるのが癖になっているのです。(笑)
 借金をするときには厳しいくらいの条件でもシミュレーションしておけば、予測外のことが起きてもどれくらいの影響が生ずるのか即座に理解できますからあわてずにすみます。たとえて言うと、予防が一番、病気になってからでは遅いのです。
 いくつかの企業で経営を任せられたことがありましたが、いつも具体的な目標を立てて戦略を策定し、2~3年で成果をあげてきました。そういう視点で年金財政の行く末も眺めています。

 話を本題に戻します。平成36年に年金積立金は64兆円減少して48.1兆円になります。平成36年の積立金取崩額はこのままでは8.8兆円です。
 たとえば年間取崩額を平成36年の時点までに半分にするという目標を設定したら、どういう戦略がありうるのかということが具体的(定量的)に議論できます。

 とりうる選択肢については前回四つ書きました。 
①受給年齢の引き上げ(進行中)
②受給額の引き下げ
③年金保険料の引き上げ
④国庫負担の増大

 ⇒①:段階的に受給年齢を引き上げることによって、70歳受給開始にしたらいくら緩和できるのか?
 ⇒②:年金受給額を1割減らしたらどうなるのか?
 ⇒②:年金受給額2割削減を実施したら取崩額がどれだけ減少するのか?
  ⇒①と②の両方に効くもの:雇用調整交付金と低年齢在職老齢年金および高年齢在職老齢年金
 ⇒③年金保険料を2割引き上げたら、取崩額がどれだけ減少できるのか?現在特例扱いしている3号被保険者から保険料を徴収すればどれくらいの影響があるのか?
 ⇒③:厚生年金保険料支払者数を増やすためにはどういう方策があるのか?
 ⇒④:国庫負担を年間1兆円増やしたらどうなるか?また3兆円増やしたらどうなるのか、それらを可能にするにはどういう条件が必要になるのか?

 他にも平均寿命の変化が変数としてあります、出生率の変化も長期的に見ると年金積立金取崩額に影響します。
 労働法制の変更も大きく影響するでしょう。非正規雇用を減らせば年金保険料収入が増えるので、内部留保の大きい大企業の非正規雇用に制限を設けるという選択肢もあります。そういう制度を導入すると、企業は職種ごとに給与を決めなければならなくなるでしょうから、数年の準備期間を要します。

 そういうことを、年金財政が破綻する前に検討し、具体策を実施するために定量的な目安が必要で、そのための推計でした。
 たとえば、年金受給額の減額だけで対応しようとすると、いまただちに年金受給額を1割減額すれば、年金積立金の取崩額がゼロになります。H36年で見ても、取崩額が半分にできます。H36年以降の受給額を2割減にすると年金積立金取崩額は5年間ぐらいはゼロにできそうです。生活困窮者が続出するでしょうから、もちろんあらたなセフティネットが必要になります。そのためには、年金財政に関するシミュレーションと情報公開が大切で、情報を隠したり、嘘情報「百年安心年金プラン」を流すことは事態を悪化させるだけです。政治家も官僚も、誠実、正直であれ。

*「いよいよ始まる「年金減額」。いくら減るのか、何が問題なのか」・・・ZAPPERさんから情報提供あり
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20130913/365190/?ST=p_bizboard&bzb_pt=0


 国民のコンセンサスができれば、年金財政の破綻はあるいは防げるかもしれません。「専門家」や国会議員や政府に任せっぱなしにしていたから今日の最悪事態を招きました。
 国民は公表されたデータから、自分の頭でシミュレーションして、何が可能か、何を受け入れ、何を拒否するのか自分の意見をもたなくてはなりません。
(年金受給者にこれからなる人も、現在受給している老人も、どれくらいの年金減額がされるのかが精度の高いシミュレーションで政策の選択肢が示されれば、いまから準備ができます。)
 責任を取れない政府や頭のよい官僚のやることを丸ごと信用してはならないのだと思います。

 もっと精度のよいシミュレーションのやり方がある場合や年金財政破綻を防ぐ具体策を考え付いた場合は、ぜひ投稿欄へ書き込みください、議論しましょう。

 なお、利用したデータは、次のURLにありますのでご覧ください。これ以外のデータは使用しておりません。
*社会保障・人口問題研究所 年齢別人口推計値
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/3-1.xls
 
*平成26年度年金運用報告書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/ts


 シミュレーションの詳細は#3416にあります。
*#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-18-1


《 余談 》
 年金積立金は、老後の将来へ備えた蓄えでした。それは日本人が古代から受け継いできた基本的な考え方、価値観に根ざしています。台風、洪水、火事、地震、火山噴火自然災害の多い日本列島にずっと住んできたわたしたちのご先祖の智慧が、見えない将来に備えていつでも蓄えをもっておくということでした。
 そうしてみると、国債残高1000兆円というマイナスの積立が、日本人の伝統的な価値観とは正反対のものであることがよく理解できます。
 50年も昔の米国で提唱されたマクロ経済学なんて碌(ろく)でもないものにだまされ続けていないで、そろそろ目を覚まそう。マクロ経済学者である元東大教授・内閣参与の浜田宏一氏の言うことはことごとく外れました。日本の現実に合うわけがないのです。曰く、「日銀総裁が黒田に代わったら、3ヶ月でインフレターゲット2%は実現できる」、「ゼロ金利をやれば経済成長できる」。3年半たっても影も形も見えません。効果が見えないので、マイナス金利へと暴走し続けています、それでも効果がない。経済音痴の安倍総理がだまされるのは仕方ありませんが、わたしたち国民までお付き合いすることはないのです。
 わたしたち日本人は1.2万年かけては継承してきた伝統的な価値観に戻って、経済のあり方を根本から考え直しましょう。グローバリズムに背を向けて、職人仕事中心の安定した経済社会を創ることができます。そしてそういう仕組みを輸出してグローバリズムの息の根を止めてやればよろしい。
 我田引水になりますが、弊ブログカテゴリー「資本論と21世紀の経済学」をお読みください。答えがあります。

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#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 [年金]

 一通りデータを眺めて、ようやくシミュレーションの入り口にたどり着きました。ここからは這って進むことになります。(笑)
(中高生の皆さんは臨機応変なデータの取り扱い方を学んで下さい、中高生のときに学ぶ数学はとっても役に立ちます)
 元にしたデータは「平成26年度年金報告書」と社会保障・人口問題研究所の年齢別人口推計データの二つです。
 限られた資料からの推計だから、推計誤差は小さくありません。計算結果を先に言うと、年金積立金がH41年(2029年)にゼロになりますが、誤差を大きく見積もって±3.0年とると、推計値の信頼性は90%くらいあると考えます。したがって、枯渇が現実になるのは平成38年(2026年)から平成44年(2032年)の間に起こります。

 H36年の推計値を実績値と並べました。現状のまま放置すると推計値のようなことになりますが、政府は回避すべくさまざまな手を打つちます。後で述べますが、選択肢は四種類くらいに限られています。

                     ---------実績値--------  推計値
<収入>      H13年   H20年  H26年    H36
 保険料      21.8   24.4   27.9     25.6
 国庫負担      5.2    7.2   10.7      10.7
 運用収入      4.0    1.8    3.2         1.6
 基礎年金交付金 3.9    3.3    1.3         1.3
 積立金取崩し   0.0    3.5    0.0         8.8
 その他       0.9    1.6    2.7         2.0
  収入合計    35.8    41.8   45.8        50.0

<支出>      H13年   H20年  H26年    H36
 給付費      22.1      24.1    23.9    26.4
 基礎年金拠出金12.5    17.4    19.6       21.6
 その他       0.4       3.1       0.4         2.0
   支出合計   35.2     41.9     44.0        50.0
 年金積立金   147.3      131.7    112.1       48.1

 保険料収入と給付費が10年後、20年後にどれくらいになるか試算してみます。
 保険料収入は生産年齢人口と関連が強いし、給付費は老人人口との関連が強いので、年齢別人口推計値を利用します。
 社会保障・人口問題研究所の年齢別人口推計データは次のようになっています。

                     H26     H36      H46
 生産年齢人口 7780   7136    6349 
 老人人口    3308   3652    3720 
 総人口    1,2665 1,1973 1,1010

  生産年齢人口の減少は線型性がありますが、総人口と老人人口は10年単位で変化率の差が大きく20年を通してみたときには線型性がありません。

< 保険料の計算 >
 比例計算で10年後の保険料収入を求めると、
   27.9 : x = 7780 : 7136
             x = 25.6 ・・・H36年の保険料収入 2.3兆円ダウン
 同様の方法で20年後の保険料収入は、
  27.9 : x = 7780 : 6349
             x = 22.8 ・・・H46年の保険料収入 5.1兆円ダウン

< 給付費の計算 >
 比例計算で10年後の給付費を求めると、
  23.9 : x = 3308 : 3652
             x = 26.4・・・H36年の給付費 2.5兆円アップ
 同様にして20年後の給付費を求めると、
  23.9 : x = 3308 : 3720
             x = 26.9・・・H46年の給付費 3.0兆円アップ

< 年金積立金取崩額の計算 >
 H36年の取崩額は、
  4.0 + ( 2.3 + 2.5 ) = 8.8兆円
 H46年の取崩額は、
  4.0 + ( 5.1 + 3.0 ) = 12.1兆円

< 十年間の年金積立金取崩額計算 >
 基準年をH26年として、座標(0, 4.0)、(10, 8.8)を考えると、この直線の式は、
  y=4.8x+4
 取崩額は(0≦x≦10)の区間の台形の面積で計算できます。
  s1=(4+8.8)*10/2=64兆円

 同様にして、基準年をH36年に置き、座標(0, 8.8), (10, 12.1)を利用して計算すると、10年-20年後の間の取崩額は、x軸と次の関数の直線で囲まれた台形の面積を求めればいいわけですから、
  (    y = 0.33x  + 8.8
 ⇒高校3年生はこの関数を0-10の間で積分してくれたらよい)

  s2=(8.8+12.1)*10/2=104.5兆円
 これなら、1次関数と台形の面積の問題ですから中学2年生でも計算できます。

 平成26年度末の簿価ベースの年金積立金合計額は112.1兆円ですから、H36年度末の年金積立金残高は次のように計算できます。
   (112.1 - 64) = 48.1
     
   基準年がH26年度だから、このラフな試算では、15.2年後のH41年(2029年)に年金積立金はゼロになります

< 推計から除外した要素 >
 この推計値は非正規雇用の増加分を考慮していません。人工知能の高性能化と低価格化によって、これから20年の間にたくさんの職種の単純労働が機械やシステムに置換わることを考えておかなければなりませんが、このシミュレーションにはそういう要素を入れていません。きわめて限定した推計です。

 公務員共済を含めるとどうなるかはまた別途試算してみる必要があります。とくに国庫負担額への影響があると思われます。

〈 年金財政の破綻を避けるにはどのような方策があるのか 〉
 年金制度を破綻させないためにどのような方法があるのでしょう。
 現在進行中の①受給年齢の引き上げ、そして②受給額の引き下げ、③年金保険料の引き上げ、④国庫負担の増大など。
 これらを全部やることになるのでしょうね。受給額の引き下げは、1世帯当たりとか1人当たりとか最高限度を設けると同時に、何割の切り下げをやったほうが効果的です。このシミュレーションはそういう議論の土台になりえます。

【基礎年金拠出金の計算メモ】
 19.6*(3652/3308)=21.6兆円・・・H36年基礎年金拠出金
  19.6*(3720/3308)=22.0兆円・・・H46年基礎年金拠出金

*基礎年金拠出金の推計については、弊ブログ#3411投稿欄にZAPPERさんからこれでは大雑把過ぎるとコメントが寄せられています。ZAPPERさんは社会保険労務士で専門家ですから、わたしの理解が違っている可能性が高いので、基礎年金拠出金の推計値については保留しておきます。
 いま議論しながら確認していますが、結論が出次第ここに追記します。専門家の協力で精度のよい推計方法が見つかることを期待しています。

 【9/19朝9時追記】
 コメント欄での議論が終わりました。受給者数が増えれば、基礎年金拠出金も比例して増えますから、おおむねこの推計方式で差し支えありません。そして他に簡便な方法が見つかりません。   


*社会保障・人口問題研究所 年齢別人口推計値
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/3-1.xls
 
*平成26年度年金運用報告書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/ts

*#3417 年金積立金運用報告書を読む⑥:定量的に考えよう Sep.19, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-19

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#3415 年金積立金運用報告書を読む④  Sep. 18, 2016 [年金]

 今日の根室は秋刀魚祭りである。会場では4kg・2500円で秋刀魚が売られている。一尾130-150gくらい、根室市民にとっては小ぶりの秋刀魚である。ebisuは秋刀魚が大好きで、毎年この旬の時期が待ち遠しい。今朝も焼き秋刀魚だ、自宅で食べるのは140-150gくらいのもので十分。台風が去って獲れだしたから一尾50円ほどで手に入る。わかさぎもおいしい。鮮度のよい小型のものがおいしい。6cmほどの小さいものだと60尾ほどで290円だそうだ。天麩羅に揚げて食べている。玉葱と人参の天麩羅を一緒にするとなお結構。主産地の北見が台風の洪水で大被害を受けたので、値段が高騰している。今朝7時の気温は12度だった、秋が深くなってきた。

 さて、今回は年金積立金にかかわるインプットとアウトプットをチェックしてみたい。年金積立金が過去12年間に渡って毎年3兆円取り崩され続けていることが前回までの分析で判明したから、毎年の両方の収支バランスがどうなっているかが気になる。

 51ページに「(3)年金特別会計 厚生年金感情と国民年金勘定の合計」があるので、その表から収入と支出を書き出してみる。金額単位は兆円である。

<収入>      H13年   H20年  H26年
 保険料      21.8   24.4   27.9
 国庫負担      5.2    7.2   10.7 ◎
 運用収入      4.0    1.8    3.2
 基礎年金交付金 3.9    3.3    1.3
 積立金取崩し   0.0    3.5    0.0
 その他       0.9    1.6    2.7
  収入合計    35.8    41.8   45.8

<支出>      H13年   H20年  H26年
 給付費      22.1      24.1    23.9
 基礎年金拠出金12.5    17.4    19.6
 その他       0.4       3.1       0.4
   支出合計   35.2     41.9     44.0


 国庫負担金がH13年に5.2兆円であったものが、H26年には2倍の10.7兆円にもなっていることにも注意したい。すでに歳入の1/5を占めている。H26年度の数値で総収入に占める割合を計算すると、厚生年金が21.2%、国民年金が40%である。少子高齢化で生産年齢人口が減少していけば国庫負担金が加速的に増大する恐れがあるので、それも次回シミュレーションしてみたい。
  基礎年金拠出金が基礎年金交付金の3-15倍あるが、その理由がわからないので、「疑問-2」としてマークしておく。これだと基礎年金積立金が年間15兆円ほどたまっていくような計算になる。どなたかメカニズムをご存知の方がいたら、投稿欄へコメントをいただけたらうれしい。年金制度は面倒くさそうだ。面倒くさいほど、胡散臭くなるものだ。シンプルに理解したい。

 積立金取崩額は「積立金より受入」と表示されているが、年度によってバラツキが大きい。最大値はH17年の6.7兆円、ついでH22年の6.3兆円である。取り崩しはH17年からスタートしているが、H26年までの10年間で40.67兆円、年平均4.1兆円。

 収入合計データをつかって線型回帰分析ができるが、妥当ではない。社会保障・人口問題研究所の年齢別人口推計によれば、生産年齢人口が今後20年間で15%減少する。要するに、推計計算は臨機応変にやればよい。
 同様に老人人口の推計値も20%増加するので、支給開始年齢や平均支給額を現状のままとすると、給付額は老人人口増加分だけ増えることになる。
 気になるのが、非正規雇用割合の増加である。厚生年金に入らない人口が増えれば、年金保険料収入が減少する。1990年代に次々になされた労働法制の規制解除は年金制度に破壊的に作用している。
 推計には中学3年生でもわかるような簡便な計算法を考えたい。数学の問題を解くときには、答えがだいたいどれくらいになるのか見当をつけてからやる場合が多い。計算や計算式にうっかりミスがあれば予想した値からかけ離れたものになるので、計算精度や式の妥当性のチェックになる。20年未満で年金積立金がゼロになるだろう。
 その次の問題は、どうすれば年金制度の崩壊を回避できるかということになる。読者諸氏はebisuと一緒に考えてもらいたい。

 
*社会保障・人口問題研究所 年齢別人口推計値
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/3-1.xls
 
*平成26年度年金運用報告書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/ts


< 余談:危機感の喪失と過激派の台頭 >
 年金積立金は共済年金基金が昨年10月にGPIFに統合されて200兆円ほどあるのだが、それでもそれが20年に満たないうちに枯渇するということに大きな危機感をもって見ている国民や国会議員がたくさんいる。
 しかし、政府財政は50兆円の収入に対して100兆円の支出予算を組み、年間50億円もの赤字国債を発行し続けている。国債残高はすでに1000兆円を超えた。GPIFになぞらえて言えば、積立金が枯渇してしまっただけではなく、マイナス1000兆円もの積立を行ってしまっている。この現実に国民も国会議員も地方議員も危機感が薄いのはどうしたことだろう?

 前回書いたので簡単に触れる。米軍基地移転問題で工事を強行したい国が沖縄県を訴えた裁判の判決が昨日でた。国の完全勝訴である、裁判官が国の主張をそのまま認めた。安倍政権はこの訴訟に勝利するために、福岡地方裁判所那覇支部の担当裁判官を入れ替えた。シナリオどおりにことが運んだ。安倍総理に地方裁判所の人事権はないが、こういう風に恣意的な異動が実際には可能なのである。やれてもやってはいけないことは当然だ。三権分立の牽制機能、なかんずく司法と行政の牽制機能が失われている。
 GPIFは政府から独立した機関のはずだったが、人事権を行使してその投資政策を変更させることはできる。国内株式への投資割合を12%から25%にアップして、株価を操作するのを容認する理事を任命すればいいだけ。
 日銀も同様、ゼロ金利政策継続に反対だった白川元総裁を外し、黒田総裁に変えて「異次元の金融緩和」をはじめた。反対と目された理事を外して、金融緩和容認派の理事を送り込んだ。日銀の独立性がこうして失われた。
 日銀が350兆円も国債を買い入れることで、債券市場の金利調節機能が麻痺して久しい。

 健全な保守主義の立場からはこれら四つの事象はどれも容認しがたい。しかし、自民党国会議員や地方議会議員からは反対の声が聞こえてこない。自民党は過激派になったのか?
 健全な保守主義の対極にあるのは急進主義(=過激派)である。1960年代後半の全共闘世代のわたしですら、びっくりするくらい安倍政権のやり方は過激である。45年後に自民党が過激派に変貌するなんて予想のできた者は団塊世代には一人もいないだろう。もっと不気味なのは自民党内部に健全な保守主義を唱える者がいないということだ。ふるさとよりも国よりも、わが身が大切という価値観(エゴイズム)が蔓延してしまっている。


*#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-18-1



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#3414 年金積立金運用報告書を読む③  Sep. 17, 2016 [年金]

< 「疑問その-1」 >
 前回の弊ブログで、平成13年から年金積立金の簿価と時価での両建て表示が始まっており、その差が3兆円しかないことを取り上げて「疑問その1」とした。
 調べてみたら、平成13年4月1日付手年金資金運用基金が設立されており、その前の組織から年金基金を時価で引き継いだのだろうと推測される。その後1年間で(平成13年度末に)評価益が3兆円出たということ。
 平成18年4月1日に年金積立金管理独立行政法人が設立されて現在に至っている。

< 公務員共済年金積立金もGPIFに統合された >
 公務員の共済年金は昨年10月にGPIFに統合されているから、公的年金積立金合計額は時価で約200兆円あるようだ。これで公的年金は一元化された。

< ババをつかまされたGPIF >
 GPIFのポートフォリオ見直しは平成26年に閣議決定され、10月31日に公表された。
 株の買い増しがなされ、国内株式比率は12%から25%に増大した。平成26年から27年にかけて17兆円の国内株式が買い増されている。政府がゼロ金利やマイナス金利で円安誘導し、株高誘導をする中でGPIFが大量に買いを入れたので、過去10年間で一番高値の時期にGPIFは株式を購入してしまった。
*日経平均株価の推移
http://ecodb.net/stock/nikkei.html

 いや、GPIFがわずか2年の間に国内株式を17兆円(共済年金分を含めると約26兆円)も買い増したから株価が上がったともいえるのである。安倍政権によるゼロ金利政策と円安誘導、そして公的年金のポートフォリオ変更による大量の買いという2重の演出によって株高が生じた

< 国民に回ってくるツケ >
 ツケは国民に回ってくる。GPIFは年金積立金を将来大きく毀損するリスクを抱えることになったし、国民は1700兆円の金融資産から受け取るべき利息34兆円(2%で計算)を毎年マイナス金利政策で失い続ける。安倍政権の3年間で100兆円もの増税が行われたに等しい


< 株価の変動とリスクの程度 >
            日経平均      NYダウ   為替レート
 平成25年度末 14,791.99円  16,532.61$ ¥103/$
 平成26年度末 19,206.99円  17,776.12$ ¥120/$
 平成27年度末 16,758.67円  17,603.32$ ¥110/$
(平成27年度末のNYダウと為替レートは4/5のもの)

 平成26年度の資産運用「収益額」は、14ページの「図表2-6 年金積立金全体の運用実績表」によれば15.2兆円である。これは、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券での運用益の合計額である。10年物日本国債の金利はゼロに近い、米国債も今年2月にはマイナスになっている。平成20年3月末は0.792%である。だから、運用収益の90%以上が国内株式と外国株式の運用益による。
*米国財務省証券の金利推移
http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/data/jgbcm_all.csv

 平成25年度末、26年度末、27年度末の3期にわたる日経平均を眺めれば、平成27年度末には約9兆円の国内株式運用損が出ていることがわかる。
 GPIFは平成14年から積立金の取り崩しを行っている。ポートフォリオの変更でこの2年間は国内株が買い増されたので株価が上昇したが、25%の保有限度に達した後、平成28年からまた元に戻って株の売却が始まるから、長期的な売り圧力となって株価が低迷することになる。
 日経平均が15,000円を割れば、平成26年度の報告書にある15兆円の運用益は吹っ飛ぶ。

< 積立金取崩し速度は大きくなる >
 株式運用のリスクよりも気になるのは、平成14年から始まっている取崩しで年金積立金が半分になるのはいつころか、ゼロになるのはいつころかということ。団塊世代の退職でこの4年間で生産年齢人口が448万人減少(#3311)した。団塊世代の退職が完了すると、この数字はもっと穏やかになるが、総人口よりもはるかに急速に生産年齢人口が縮小するのは事実であるから、年金保険料収入は激減していく。その結果毎年の年金積立金取崩し額も加速的に増えることが予想されるが、社会保障・人口問題研究所の推計データを利用してシミュレーションしてみたい。
*#3311 有効求人倍率1超はアベノミクスの成果?:ご冗談を(笑) June 1, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01-1


< GPIFはマイナス金利政策を批判すべき >
 長期運用するものの半分を市場で価格変動の激しい株式に投ずるのはこのように大きなリスクを伴うが、政府が日銀と一緒になってマイナス金利政策を実施しているので、GPIFは国債での運用の道を断たれてしまっている

 政府は金融市場への介入をやめるべきだ。もっとも、介入をやめたら国債金利が暴騰して、ただちに政府財政が破綻する、つまり、にっちもさっちも行かないのだ。ゼロ金利の出口戦略はなく、状況はさらに悪化し、今年2月にマイナス金利導入に追い込まれた。「H26年年金運用報告書」を読むと、GPIFのポートフォリオ見直しは政府の財政金融政策の一環であったことがよくわかる。アベノミクスの2本の矢は国際通貨としての円の不信任と政府財政破綻に向かって飛び続けている。日銀の純資産はわずか7.7兆円しかないのに、350兆円もの国債を保有しているから、金利が上がれば純資産の数倍の損失が発生する。日銀が債務超過に陥るリスクが大きいから、日銀は純資産額の何倍もの国債を抱えてはいけないのである。すでに40倍を超える国債を抱えてしまっている。
 どうして経済界も自民党国会議員もこのような異常事態を批判しないのだろう?健全な保守主義の立場からは容認できない政策である。
 GPIFは年金積立金の運用を任されることで年金受給者の利害を代表しているのだから、理想論から言えば堂々とマイナス金利政策を批判すべきだ。しかし、そうした途端に理事の椅子から滑り落ちてしまう。わが身がかわいいのはGPIFの理事も、日銀政策委員会のメンバーも国会議員も同じである。信念と気骨を持ち合わせた人材がどの分野でも枯渇してしまったかのようだ。しがらみのない若い人たちが変革を担うしかない。

 
*平成26年度年金運用報告書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/ts


*#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-18-1


*#3327 日銀による財政ファイナンスは財政法違反 June 13, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-06-12-1

*#3319 安倍晋三とはどういう人か:日銀破綻リスクが浮上  June 7, 2016  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-06-07 
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#3413 年金積立金運用報告書を読む②  Sep. 16, 2016 [年金]

〈最終更新日時〉 9月17日午前11時50分

 「平成26年度年金運用報告書」(以下「H26報告書」と略記)33ページには「参考3-1 年金積立金額(簿価・時価)の推移」が載ってる。データは平成元年から26年度末まである。平成13年度から括弧書きで時価が載っているのだが、平成13年度末簿価147兆円に対して時価144兆円で3兆円しか差がないのはどういうわけだろう。これは理由がわからないので「疑問その1」としておくが、理由の推測はつく、調べて次回取り上げる。
 平成26年度末積立金残高は簿価112.1兆円、時価145.9兆円、差額(時価-簿価)33.78兆円。この内13.7兆円は安倍政権(平成24年度)以前のものである。33.7兆円の8割ぐらいは安倍政権以前に購入した株の評価益だろう。
 何回目かに言及するが、安倍政権になってからGPIFのポートフォリオを変更させて買い増した国内株式で大きな損失が出ていることがデータで明らかになる。だれが責任を取るのだろう?答えは簡単明快、福島第一原発事故同様にだれも責任を取らぬのがこの国の常識。

〈 年金積立金は14年前から取り崩しが始まっている 〉
 年金積立金推移表は厚生年金と国民年金に分かれている。厚生年金の平成26年度簿価残高は104.9兆円(兆円の小数第2位以下切り捨て、以下同じ)、国民年金の簿価残高は7.1兆円である。国民年金の簿価は全体112.1兆円の6.3%に過ぎない。厚生年金積立金簿価は93.7%を占めている。

 簿価の残高を見ると、厚生年金は平成14年の137.7兆円がピーク、国民年金はのそれは平成13年の9.9兆円である。
 平成26年度末は厚生年金が104.9兆円、国民年金が7.1兆円である。12年間で厚生年金積立金は32.8兆円減少し、国民年金積立金は2.8兆円減少した。
 厚生年金積立金と国民年金積立金の合計額のピークは平成14年度末の147.6兆円であるが、平成26年度末には112.1兆円へ、35.5兆円減少した。

 GPIFは平成15年から年金積立金を取り崩しはじめたことがこの表からわかる。年平均3.0兆円の取り崩しである。ポートフォリオを変えたから、このペースを前提にすると今後は毎年「3.0兆円÷4=0.8兆円」の国内株式を売却することになる。でも、このペースはいままでこうだったというだけで、諸般の事情を考慮に入れると加速することを覚悟すべきだろう。

 ポートフォリオを変更し、12%から25%へ国内株式保有割合を増やした。37ページの「(1)運用資産・資産構成割合の推移」表を見ると、平成24年度末14.2兆円であった国内株式は、平成26年度末には31.6兆円に増えている。2年間で17.4兆円買い増したことになる。株価が上がるはずだ。新たなポートフォリオ限度額まで買い増したから、もうこれ以上買い増しはできない。積立金が取り崩されたら、国内株式も市場で毎年売却しなければならない。問題はこの買い増された17.4兆円の国内株式の平均単価である。株価はピーク時には2万円台だったが、26年度末の日経平均1万9206.99円に対して27年度末は1万6758.67円である。買い増した分に大きな穴が開いただろう。今月中に「平成27年度年金運用報告書」が公表されるが、公開された表を見てもポートフォリオ変更による買い増し分でどれくらいの損失が出たかはわからないから、なんらかの推計を試みるしかない。

 単純計算で30年後に年金積立金は90兆円減少して22.1兆円残る計算にはなるが、積立金の減少ペースが加速すればもっと早い時期にゼロになる。年金保険料収入しだいということだから、生産年齢人口減少下で非正規雇用をこのまま放置すれば、ずっと早い時期に年金積立金がゼロとなり、年金財政が破綻する。20年もつだろうか?社会保障・人口問題研究所の生産年齢人口推計値を使って、いくつか前提条件を設定してシミュレーションしてみたい。

〈 ポートフォリオ変更はなぜなされたのか? 〉
 株価下落を防ぐために政府はGPIFのポートフォリオを変更させて、国内株式保有比率をアップすることで、買入余力を増やしたのだろう。株高の演出である。
 その煽りを受けて最近2年間でGPIF保有の国債が大量に売りに出た。日銀が国債保有を増やしているのはここにもその理由がある。ほうっておいたら債券市場で長期金利が上昇してマイナス金利政策が破綻していた。

 次回は、簿価と時価との差額とリスクを取り上げようと思う。
 いろいろ疑問はある、年金給付金は年額どれくらいなのか、その金額の何倍の積立金があるのか、年金保険料収入の推移はどうなっているのかなど、「報告書」を読んでいけば明らかになるだろう。


*平成26年度年金運用報告書
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/tsumitate/tsumitatekin_unyou/dl/houkokusho_h26_01.pdf


《 余談:同じ手口 》
 沖縄県を国が訴えた裁判(米軍普天間飛行場を辺野古へ移す件)の判決が昨日(9/16)出たが、予想されたとおり、沖縄県側の完敗だった。安倍政権は沖縄よりだった福岡地方裁判所那覇支部の裁判長を昨年異動させて、政府よりの裁判官に替えた。そして今回の判決である。
 同じことはGPIFでも起きている。ポートフォリオを変えさせたくば反対する理事を入れ替えればいいだけ。2-3年かければ思いのままにできる。
 日銀の独立性も同じ手口で奪われた。ゼロ金利政策に消極的だった白川前総裁をはずして黒田総裁に替えた。そしてゼロ金利政策の継続に反対だった理事を外して政府よりの理事を任命した。
 三権分立も日銀の政府からの独立性もこうして失われた。ブレーキが壊れてしまった暴走車はますます速度を上げ、今年2月からマイナス金利を導入、エンジン回転数はレッドゾーンに、壊れるまで速度を下げられない。
  マスコミはこれら三つの事象に共通項があるにもかかわらず、そのことを報じない。ああ、そういえばNHKも同じ手で政権側に抱き込んだんだっけ。

 自民党国会議員からもこうした政権運営の手口を批判する者が出てこない。自由と民主主義を守るよりも議席の安全が優先する。選挙で公認を外されることを恐れ、ものを言わぬ国会議員や地方議員ばかりでは政府財政が破綻して日本が沈没する。麻薬であり癌である政党交付金は廃止すべきだ。

〈 潔さ 〉
 民主党は女の党首に代わったが、またぞろ見飽きた「戦犯」たちがうごめいている。政権奪取後に無能力をさらけ出した幹部がさっさと議員を辞めなければ、名前だけ替えたって民進党は滅亡するほかはないのだろう。わかっていても政治家が職業になってしまっているから、幹部たちはいまさら政治家を辞められない。有権者はあきれている。

 健全な保守主義を標榜する勢力が台頭してほしい。


*#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 
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#3411 年金積立金運用報告書を読む①  Sep. 14, 2016 [年金]

 年金保険料収入額と給付額のバランスがどうなっているのか確認したくて、ネット検索をしていたら、ようやくお目当てのものが見つかった。「平成26年度年金積立金運用報告書」の中にお目当ての数字があるようだ。
 バランスが崩れ、保険料収入よりも給付額等の方が多くなったら、運用資産を売却して給付に充てなければならない。保有株式を長期にわたり株式市場で売却し続けたら、株価が下がり続ける。それがいつの時点から始まり、どれほどの損失発生の可能性があるのかシミュレーションしてみたいのである。政府主導で運用資産のポートフォリオを変更し、株式割合を2倍に増やしたが、将来リスクについては言及することがない。アベノミクスに利用された年金資産がどれくらいのリスクを抱えることになったのかは専門家がちゃんと議論すべきだが、素人にもある程度の見当はつけられる。手に入れられる資料を丹念に読んでみたい。

 p.46にある「厚生年金・国民年金の収支状況」表の平成26年度欄に次の数字が載っている。

 総収入 42.3兆円
 総支出 39.5兆円
 収支尻  1.7兆円

 収支尻がプラスなら、取り崩しは起きないが、これがマイナスになると年金運用資産を取り崩して給付に充てなければならない。
 内訳を見ると、興味深い事実が浮かび上がるが、それは次回取り上げたい。 

 ① 年金保険料収入>給付額等
 ② 年金保険料収入<給付額等

 ①なら心配要らないが、②の状態になると、足りない分を国庫から補うか、それでも足りなければ運用資産の取り崩しが恒常的に生ずることになる。②に状態が長期的・恒常的に生ずるなら、すでに買い入れた国内株式31兆円は市場で大量の売却圧力にさらされ、株式市場は長期下落が避けられない。海外株式も30兆円ある。
 
 安部総理が運用益が三十数兆円あるから、四半期で5兆円とか年額で10兆円を超える損失があっても大丈夫だと言っているが、はたして本当だろうか?
 第2次安倍内閣の成立が平成24年12月26日だったから、アベノミクスで株価操作をした結果の運用益をそれまでの運用益とは切り離して考えるべきで、そうしてみたときにどうなのかということも、この資料を基にして考えることができる。
 今月中に平成27年度版が出るので、それも見てみたい。マイカテゴリーに「年金」を設定したので、シリーズで「年金積立金運用報告書」を皆さんと一緒に読み解きたいと考えている。

(商業高校あるいは商業科3年の簿記知識程度で「報告書」は十分読める。「公民」を習っている中学校3年生や「政治経済」を選択している高校生にも読んでもらいたい。年金積立金の運用を通して見えてくる周辺の問題を含めて、中高生の未来にかかわる重大な問題でもあるからだ。)


*「平成26年度年金積立金運用報告書」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei/tsumitate/tsumitatekin_unyou/dl/houkokusho_h26_01.pdf

*#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-18-1


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