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#3531 生徒の質問:学力テスト数学問題 Apr. 13, 2017 [数学]

  中学校の学力テストが今日(4/13)実施された。中3の生徒が問題用紙をもってきて、「最後の問題がさっぱりわからなかったので解説してほしい」と要求がありました。面白い問題なので紹介します。

 大問6: 右の図で、Oは原点、2点ABの座標はそれぞれ(3, 9)、(9,3)です。また、点PQはそれぞれ線分OA、AB上にあり、AP:OP=1:2とします。下の問いに答えなさい。
 問1:四角形POBQが台形となるとき、直線PQの式を求めなさい。
 問2:四角形POBQの面積が△APQの面積の5倍になるとき、点Qの座標を求めなさい。

 このテキストエディタでは図が描けないので、各自描いてみてください。
 質問した生徒は問1は簡単に解いています、問2がどうやったらいいのかさっぱりわからなかったそうです。

 問題を黒板に写しながら、条件を整理します。△AOBの面積は計算可能ですが、計算はせずに攻略の道筋をつけることを優先します。
 条件から△AOBの面積の1/6が△APQです。ではAB上のどこにQ点を取ればいいのかということになります。そこで別の条件との組み合わせをやってみます。AP:PO=1:2ですから、APを底辺とするとAOの1/3、ここまで整理してピンときました。高さが半分になれば△APQの面積は△AOBの1/6になります。
 問題を言い換えると、線分ABの中点座標Qを求めよという問題なのです。そのことに気が付くのは数学のセンスの良い生徒です。この種の問題をやったことがあれば解くのは簡単ですが、初めてのタイプだったら案外解けません。同種問題なら次回以降はこの生徒には楽勝です。初見のタイプの問題にもなんとか工夫して時間内に解き切ってほしいと思います。
 問題を解くカギは問題文に示された条件すべてを利用すること

<3項問題>
 高2の生徒が二項定理の章の予習をやっていました。

   (a+b)^n=nCoa^n + nC1a^(n-1) b + nC2a^(n-2) b^2 + ・・・+ nCra^(n-r)b^r + ・・・+ nCnb^n

 二項定理の問題をやり終わった後に三項問題に進んで質問がありました。公式の利用の仕方がわからないというので、具体的に計算して見せるだけです。

 問: (1+2a-3b)^7  の a^2b^3の項の係数を求めよ

 利用する公式は、
      分子:  n!       a^p b^qc^r
      分母:  p!q!r!
        ・・・p+q+r=n
 この式に代入すればいいだけで、あとは計算力の問題。かっこの中の文字にはそれぞれ係数がついているのでそこだけ注意すればいい。答えはー22680です。

 さて、ここからがお遊び。この公式を四項に拡張できるかと生徒に投げかけました。手間暇はかかりますがやってやれないことはないでしょう。宿題にしました。(a+b+c+d)^5 で試してみたらいいのです。a+b=s、s+d=tとして(s+t)^5を計算し、元に戻してさらに計算すればできます。
 三項の公式を二項に縮小してみたらわかりますが、OKです。

 こういうふうに、上下に「拡張」できるかどうかを「遊び」で確認するのは楽しい。三項の公式は二項でも使えることがすぐにわかります。

 こういう遊びは様々な章で見つかるでしょう。遊んでセンスを磨いてください。
 「これを知る者はこれを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」です。


#3530 ヒポクラテスの月形(中3教科書より) Apr. 13, 2017 [数学]


  中3の生徒が配られた教科書を見ていたら面白い問題を見つけたという。「数学の窓」と題して「ヒポクラテスの月形」が194ページに載っていた。数学の歴史への興味を引き立てるにはよい題材だ。
 
 教科書がない人は図を描いて確かめてもらいたい。
 円を描いて、直径を結びその両端をBCとする。半円の円周上の任意の点をAとしてBA、CAを結ぶ。AB、ACを直径とする半円を上のほうに描く。そのときに、ふたつの月形の面積の和が直角三角形ABCの面積に等しくなるが、これを証明せよと書いてあった。

  この生徒は中3の数学はすでに学び終わっており、同じ問題を中1のときにやっている。首都圏の有名私立中高一貫校の中学入試ではヒポクラテスの月形は標準問題である。40年ほど前に東京渋谷駅前の個人指導の進学塾の専任講師をしていた時には、有名私立中学受験生は全員この問題をやっていた。それくらいポピュラーなのである。中高一貫校の先生が作問するから、三平方の定理を使えば簡単に証明できるような問題を中学入試で出題する。だから、鶴亀算、相当算、植木算などの和算の知識のほかに中学数学で出てくる問題で、小学生にも解ける問題は要注意である。

 考えたけど証明がわからないというので、黒板に書いたが、ほんとうは1時間でも考え抜いて理解してもらいたい。こういう良問を独力で考え抜くことが頭脳の発達の滋養になる。

<相手を見て教える>
  学習塾の門たたく生徒は、成績中位で学力を上げたいという生徒たち、学校の授業が理解できないので成績が落ち込んでいる生徒たち、学校の授業は難易度が低すぎて物足りないという生徒たちに大雑把に分類できる。議論の都合上、成績順に第一グループ、第二グループ、第三グループと命名しておく。
 第一グループと第三グループに学校と同じ方式の集団授業は必要がないことは自明だろう。第二グループと第三グループはときに分数や少数の計算の基本に戻って教える必要があるが、学校の授業では小学校で既習済みだからほとんどの先生が授業では教えていない。
(学力テストデータを分析すれば何を教えなければならないかは一目瞭然。点数の分布については実データを弊ブログで何度もとりあげている。)
 どこの個別指導塾でも同じだろうが、ニムオロ塾では生徒一人ひとりを見て、どこが理解できていないのか判断し、必要な解説をしている。あとはひたすら問題演習である。5-10分考えても理解できなければ第一段階ではヒントをあげるだけ。それでも理解できない場合は解説をする。最初から完全解説をしてしまったら結果がよくない。自分で考えることをすぐに投げ出し、先生に質問を繰り返すことになる。そういう癖がついてしまう。毎日やることは癖になるから、悪い癖がつかないような配慮が大切だ。
 第一グループの中学生には高校数学を射程に入れた説明をガンガンやって構わない。難関私立中学受験の生徒たちには、三平方の定理を使った証明を教えてもいいのである。高校生にはヒルベルトの「幾何学基礎論」の概要と現代数学の基本を解説したほうがさまざまな数学的概念や操作の意味の理解が深まる。


幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)

幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: D. ヒルベルト
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫


学問の体系構成や概念の展開に興味があって四〇年前に読んだのはこちらの方。内容は高校数学程度の知識で十分読めます。現代数学の枠組みを知るには不可欠の本です。この本を読んだらゲーデル「不完全性定理」も読みたくなるでしょう。ゲーデルは数理論理学の教科書レベルの知識が必要です。ニムオロ塾の塾生は中二の時に、数学syである藤原正彦「国家の品格」を音読トレーニングで読んでいるので、ゲーデルの不完全性定理の名前だけは知っています。
幾何学基礎論 (1969年)

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  • 作者: ヒルベルト
  • 出版社/メーカー: 清水弘文堂書房
  • 発売日: 1969
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ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)

ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)

  • 作者: ゲーデル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
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#3308 不等式の大小問題:因数分解を見落とさないこと May 31, 2016  [数学]

 根室高校は3年生が今日から、2年生と1年生が明日(6/1)から前期中間テストです。

 生徒が数Ⅱの教科書に載っている問題を片っ端から復讐していました。昨日質問のあった問題の中から、不等式の大小問題を紹介します。計算の苦手な人が正解へ至る道を見落としがちな問題と判断したからです。

 数研出版 数Ⅱ教科書32頁 「補充問題7」
 
 a<b, x<y のとき、  ax+by と bx+ay の大小関係を不等号を用いて表せ

<解答>
 (ax+by)-(bx+ay)=(a-b)x-(a-b)y=(a-b)(x-y)・・・①
  a<bより、 a-b<0  x>yより、 x-y<0 ・・・②
 ①と②より
   (a-b)(x-y)>0
 よって、
  ax+by>bx+ay


  因数分解できるのですが、2乗の項が出てこないので因数分解できないと思い込んでしまうことがあります。思い込みが自在にリセットできたら、数学はずいぶん簡単に感じられるでしょう。

 基本問題なのですから、①のところの因数分解を見逃さなければ大丈夫です。見ただけではダメです、計算問題の苦手な人は書いてたしかめておきましょう。

 これを見逃した人は、1年生のときの因数分解の問題の復習をしておきましょう。引っかかった問題に印がついていれば、それだけをピックアップしてやれば1/20以下の問題数で復習を完了できます。チェックマークがついていなければ、大仕事になるので、これから大学受験まで引っかかった問題にはマークをつけて勉強してください。こういうことは中学1年生のときから習慣にしておくべきことです。やっていなかった人は、いまからでも習慣を改めてください。

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#3168 確率:8文字の条件付配列問題   Oct. 31, 2015 [数学]

 数学の問題文をどう読みどのように対処するかという点で面白い問題だったので、昨日生徒から質問のあった問題を紹介する。
 一昨日の、ダーレンシャンの小説の一段落を取り上げた鋭い切り口の質問に続いて、今日は他の生徒から数学の質問、塾の先生は毎日が新鮮な刺激に満ちている。

<問題77>
 A, B, C, D, E, F, G, H の8文字をでたらめに横1列に並べるとき、AはBより左に、BはCより左にある確率を求めよ。

 類似問題を一度解いたことがあれば、簡単に答えが出るだろう。初見の場合にどう対処するかという視点で解説してみたい。異なる8文字の並び方は、

  8!=8*7*6*5*4*3*2*1

 8!を計算してはいけない、まったくの無駄、事象Aを求めたら、約分の可能性を予測しておきたい。だから8!=40,320なんて計算をして時間をロスしてはいけない。分子も計算しなければいけなくなり、掛け算と約分に時間を奪われる間抜けなことになる。
 しかし、数字のセンスのよい者は、5!=120、6!=720くらいまでは覚えている。だから、

  8!=8*7*6! ⇒ ≒60*700≒42000

 こういう概数計算をして、どれくらいの数になるのか押さえているものだ。暗算でつねに概数計算していたら、筆算でのケアレスミスを減少できる。
 予算数百億円規模の会社や自治体だって、つねに3桁でシミュレーションしていれば十分である。億円単位での概算計算で経営管理はできる。細分化された部・課数はせいぜい100~300程度、百万円単位で部門コントロールはできる。
 概算計算で当たりをつけて仕事を進めるというのは、社会人になってからこそ威力を発揮する技である。高校生にそういうことを言ってもピンとこないだろうが、教えるほうはそういうことに配慮すべきだ。センスは一日にして成るものではなく、日々磨き続けてこそ、ずっと後になってから光り輝く
 大企業の経営管理も高校数学も、概数計算で当たりをつけるという技は同じ、ここにも同型性がある。だから、高校生のときにそうした技を磨かなかった者が、社会人になって概数計算で当たりをつけて経営管理をするということは、非常に稀なことになる。逆に、ちゃんと当たりをつけて問題を解いていた者は社会人になって会社を任されても大丈夫だ。経営管理に必要な技の一つがちゃんと身についている。

 確率の問題は、[事象A/全事象] で求められるから、あとは事象Aをどのように求めるかだ。
  <手順1> 問題を必要な部分に分割する (デカルト『方法序説』「科学の方法」「その2」より)

 昇順に並べると、次のようになる。

 ABCXXXXX
 ....
  XXXXXABC

 最初と最後を書いただけで数千行になることは予想がつくから、昇順列挙が無理なことはすぐにわかる。そういう時は、昇順列挙という発想をきれいさっぱり棄ててしまうこと。こだわりが頭の隅に残っていると、正解への読み方が見えてこなくなるから要注意だ

  <手順2> 見えた方法でやれるかやれないかの判断を瞬時にする
  <手順3> ダメと判断した方法を完全に棄て、まったく異なる視点で問題を読む

 全然別の視点から問題をもう一度読もう。

 文字列の入る箱を8つ考えてみよう。
  □□□□□□□□

 この8つの箱にABCの入れ方は、8C3通りあり、その各々でA<B<Cの並びは一つだけ。・・・◎
 残り5文字の並び方は、5! だから、

 事象Aの個数=8C3*5!

 よって、確率は、

   (8C3*5!)/8!=(8!/3!)/8!=1/6
  
 順列の問題だったはずなのに、A<B<Cという条件が加わったことで、この問題の重要部分、ABCの配列が組合せに読み替えができる。問題の読み替えは高校数学攻略の要点である。

 「手順3」はわかってはいてもなかなかできないのが現実。最初の視点にこだわり、別な見方ができなくなるのは、頭の使い方が悪いのである。一度視点を固定してある方向から問題文を読んでしまったら、それを消去するのはむずかしい。一つのアイデアに集中するのはたやすいが、それを心の中から一時的に消してしまうことはむずかしい。
 普段から、隘路にぶつかったやり方を頭の中から消すトレーニングをすればいい。そのうちに、脳内にスィッチができる、その瞬間にカチッっと音が鳴るのをイメージしよう。先入見を排除し、虚心に問題文を読み、条件を整理し、別の視点から問題を眺めることができるようになる。

 この問題のポイントは、の部分にある。初見ですんなりこの部分を見抜けた人は数学のセンスがよい。わたしは思い出すのにちょっと時間がかかってしまった、まるで旧式の蛍光灯のようだ。「ようだ」ではなくて、正真正銘のロートル。(笑)

 類似問題を解いたことがあれば圧倒的に有利だから、この手の標準問題は必ずやっておくべきだ。初見だと正解とは違う方向へ道を踏み間違えたら、時間がなくなる。



*デカルト「科学の方法」
------------------------------------------------

・・・以上の理由でわたしは、この三つの学問(代数学・幾何学・論理学)の長所を含みながら、その欠点を免れている何か他の方法を探究しなければと考えた。法律の数がやたらに多いと、しばしば悪徳に口実を与えるので、国家は、ごくわずかの法律が遵守されるときのほうがずっとよく統治される。同じように、論理学を構成しているおびただしい規則の代わりに、一度たりともそれから外れまいという、堅い不変の決心をするなら、次の四つの規則で十分だと信じた
 第一は、わたしが名称的に真んであると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないことだった。言い換えれば、注意ぶかく速断と偏見を避けること、そして疑いをさしはさむ余地のまったくないほど明晰かつ判明に精神に現れるもの以外は、なにもわたしの判断の中に含めないこと。
 第二は、わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること
 第三に、わたしの思考を順序に従って導くこと。そこでは、もっとも単純でもっとも認識しやすいものから始めて、少しずつ、階段を昇るようにして、もっとも複雑なものの認識まで昇っていき、自然のままでは互いに前後の順序がつかないものの間にさえも順序を想定しえ進むこと。
 そして最後は、すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。
 きわめて単純で容易な、推論の長い連鎖は、幾何学者たちがつねづね用いてどんなに難しい証明も完成する。それはわたしたちに次のことを思い描く機会をあたえてくれた。人間が認識しうるすべてのことがらは、同じやり方でつながり合っている、真でないいかなるものも真として受け入れることなく、一つのことから他のことを演繹するのに必要な順序をつねに守りさえすれば、どんなに遠く離れたものにも結局は到達できるし、どんなにはなれたものでも発見できる、と。それに、どれから始めるべきかを探すのに、わたしはたいして苦労しなかった。もっとも単純で、もっとも認識しやすいものから始めるべきだとすでに知っていたからだ。そしてそれまで学問で真理を探究してきたすべての人々のうちで、何らかの証明(つまり、いくつかの確実で明証的な論拠)を見出したのは数学者だけであったことを考えて、わたしはこれらの数学者が検討したのと同じ問題から始めるべきだと少しも疑わなかった

  デカルト『方法序説』 p.27(ワイド版岩波文庫180

 *重要な語と文章は、要点を見やすくするため四角い枠で囲むかアンダーラインを引いた。
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#3159 日本語読み・書きトレーニング(6):数学と「読み」のスキル-2 Oct. 19, 2015    [数学]

<追記・編集メモ>
 10/20 朝10:40 漢字変換ミス修正、追記および編集

 10/21 朝9:00 D領域について追記

<高校数学と「読み」 >

 今回は高校数学の問題を2例挙げて、どのようなそしてどれくらいの深さの「読み」が要求されるのか検討してみます。国語の問題の「読み・書き」の「読み」スキルとは異なる「数学特有の問題文の読み方」へ言及することになるでしょう。
 換言すると、標準的な普通科の数学を理解するために中学時代にどれくらいの「読み・書き・計算」能力を育てておけばよいのかを高校数学の観点から見ておこうというわけですから、基礎学力ではなく標準学力という視点から眺めることになります。

 先週2年生から質問のあった問題は、次のような条件付確率の問題でした(進学講習のプリントからの質問でした、間違いないと思いますが、記憶で書きます)。
---------------------------------------------
XYZの袋に赤玉と白玉が入っている。
 X: 赤4  白2
 Y: 赤2  白4
 Z: 赤1  白5
このとき、Xの袋から赤玉を引く確率を求めよ。
---------------------------------------------

 質問した生徒は問題文の意味理解が十分ではなかったので、問題文を図にしてどういうことを求めているのか、題意解説をしました。
 ついでやらなければならないのは、条件付確率の公式解説です。
 
 条件付確率とは、ある事象Aが起こったときに事象事象Bの起こる確率をいい、これを PA(B)と書きます

 この問題に即していうと、「赤玉をとりだした(事象A)ときに、それがXの袋の赤玉(事象B)である確率」ということになります。注意しなければならないことは、この問題の標本空間(=全事象)は赤玉を取り出すということです。白玉を含めた18個が全事象ではないというところが読みのポイントなのです。
 ところが公式は白玉も含めた標本空間を対象にして説明されます。数学的な手続きとしては厳密なのですが、解説は冗長です。

 PA(B)=P(A&B)/P(A)

  この問題に即して計算すると、
 P(A)=(1/3)*(4/6)+(1/3)*(2/6)+(1/3)*(1/6)=7/18・・・①
  P(A&B)=(1/3)*(4/6)=2/9・・・②

  PA(B)=P(A&B)/P(A)=(2/9)/(7/18)=4/7・・・③

 ①は全事象は赤白全部の玉の数ですから18、それに対して赤玉は7個ありますから、こんな計算しなくても表を一瞥しただけで全事象は18個、そのうち赤玉は7個ですから、「P(A)=7/18」は即座に算出できます。
 いずれにせよ、①②を算出してから③の値を求める。「守・破・離」の「守」は公式を適用するのに慣れるということです。公式を使うとこういう計算になるわけですが、問題を読み替えられたら、解法はずっと簡単になります。

   「赤玉を取り出したときに、それがXの袋の赤玉である確率」
 赤玉の全事象は7個、そのうちXの袋にあるのは4個、したがって確率は・・・4/7

 言い換えをして、その意味するところを図でイメージできれば、それだけでじつに簡単に問題が解けてしまいます。どこが違うのかと言いますと、図にした後で公式へ向かわずに、根本的な意味理解をするところが違うのです、つまり、読みの深さが違うんですよ、公式が要らなくなるほどに。途中のややこしい計算は一切なしで答えへまっしぐらです。

 また、次のように問題文の読み替えをしても単純化ができます
  「XYZの表を「Xの袋」に網掛けして、さらに赤玉全部に網掛けをすると、両方の網掛けが交わる部分は赤玉4個、そして赤玉の全部の個数は縦に表を集計して7個。」
 赤玉であってそれがXの袋の赤玉である確率を求めたらいいから、答えが4/7であることはすぐに了解できるでしょう。
 条件付確率はこのように問題の読み替えができれば、単純な問題に変わります。頭の中にどのような図を描いて問題を整理するかが勝負所です。
 「数学的な読み」の厳密さは、それぞれの分野の基礎的な理解を前提にしていますから、基礎的理解なしには問題文を読み切れないという現実があります。そこから、いくら文学書をたくみに読み理解できても、数学の問題文の読解はまったく別世界であるというあたりまえの結論に辿りつきます
 ここまで読めれば、公式を自在に駆使できるトレーニングを積んでいながら、公式にとらわれずに問題の本質を見抜き、自在に対処できる、「守・破・離」の離のステージ。


 もう1題、2日前に質問のあった2次関数、円の問題、これも進学講習プリントです。こちらはメモってありましたので内容はプリントそのまま、間違いございません。(笑)
---------------------------------------------
  座標平面上に2点、A(3,2) B(1,-2)を通る円 K:x^2+y^2-8x+ay+b=0 (a,bは定数)がある。
(1)このとき、a,bを求めよ。
(2)円Kの中心座標を求めよ。
(3)直線ABと円Kで囲まれた2つの部分のうち、小さいほうをD(境界線を含む)とする。点(x,y)が領域Dを動くとき、x-yの最大値と最小値を求めよ。
---------------------------------------------

 (1)は「a,bを求めよ」とありますから、連立方程式の問題であることは容易に推測がつくでしょう。円Kの式に座標AとBの数値を代入すると方程式が2つできます。後は計算の手間のみ、中学3年生でも計算可能です。(式は省略)
 答えは、a=2, b=7

 (2)は元の円の方程式にa,bを代入して変形するだけですから、結果だけを示します。これも計算は簡単です。
    (x-4)^2+(y+1)^2=10              中心座標O(4, -1)

  (3)をどのように読むかが問題です。
 質問した生徒にこちらのほうから質問を投げてみました。「直線ABと円Kで囲まれた2つの部分のうち、小さいほうをD(境界線を含む)とする」と問題文に書いてあるので、どういうことか図示するように指示しましたが描けません。理由を訊くと問題文の意味がわからないという返事。
 さらに具体的な文言を確認すると、「小さい方をDとする」という文言が何を言っているのかわからないとの返事。そこだけ見ても「直線ABと円で囲まれた2つの部分」とつなげて考えないと「小さい方」の意味が正確に理解できません。漫然と字面を追っていただけ、中学校でやっていた「朝読書」と同じです。
 問題文を読んでも、概略図のイメージが脳内につくれないとこのようにたった2行の問題文を理解できない。おおよそ2/3~3/4の生徒に起きています。字面を追っているだけで、問題文の情報を処理して脳内にイメージをつくり、図の上での意味の確認作業ができていません。たぶん、中学1年生の1次方程式の文章題の指導や練習量、そしてトレーニングの仕方に、大きな問題がありそうです。この段階から、問題文を読み、イメージ構成トレーニングをしておくべきなのでしょう。
 概略図を実際に描くトレーニングを何度も何度も繰り返すことで、脳内にイメージを創ることにも慣れていきます。

 手順を示すと、座標(4, -1)を中心に半径√10の円を描き、次いでA(3, 2), B(1, -2)に直線を引いて眺めます。ここまでくれば円とABで囲まれた小さい方の意味がわからない生徒はいません。
 後で確かめると√10≒3.1であることも概算できていませんでしたから、y軸と円の位置関係も理解できていなかった。具体的な円と弦の概略イメージがないのでは、問題文のこの文言の意味がわからないのも無理ありません。
 こういうときは描いて見せて、描かせて見るしかないのです。わたしが黒板に概略図を描き、その後で黒板を見ないで描かせます。自分の手で作業させないと覚えられません。もう「小さい方」の意味もD領域もしっかり理解できました。

 次にとりあげるべきは、後続する「点(x,y)が領域Dを動くとき、x-yの最大値と最小値を求めよ」という文言です。x-yの値を問題にしているので、それをkに置き換えます。kはdie Konstante(ドイツ語"定数")のkですが、この場合は一定の値ではなくて変化する量ですからkで置き換えるのはちょっとおかしいとは思いますが、細かいことはとりあえずご勘弁を願います。

   x-y=k・・・①  ⇒  ℓ:y=x-k・・・②

 ①から②が得られます。①を見たときに直線の式「y=ax+b」に変形できることに気がつくのが数学的なセンスです。
  この直線を円Kの上の方から下へ平行移動させる動画をイメージします。最初に円と接点をもち、ついで2箇所で円周を切り、そしてまた接点をもち、その後ゆっくり離れていくのがイメージできれば問題は解けたも同然です。
 直線 ℓ:y-x-kが円から離れていくイメージに、なぜかキューブリックの映画「2001年宇宙の旅」の1シーンが重なりました。宇宙船の修理のために宇宙服を着て船外へ出たクルーが、人工知能「ハル」に殺されて、宇宙船から離れて回転しながら漆黒の闇に吸い込まれていくシーンです。

 円kの外略図を描くためには、円の中心と半径、そして点Aと点Bがあればよい。r^2=10でしたから、r=√10。
  3^2<r<4^2
  3.1^2<r<3.2^2
 これより、√10は3.1と3.2の間に、そして3.2よりにあることがわかります。そうすると、y軸と円kの距離はB点のx座標からrを引いてえられるので、おおよそ4-3.2≒0.8だけ離れています。円の中心(4,-1)にコンパスの中心をおいて、半径3.2で円を描けばいい。座標を1cmの単位でとればほぼ正確な図がかけます。
 実際には概略図を描くために必要な計算を1分程度でやれる計算力があるかどうかが重要です。時間の制限の中での勝負ですから、トロトロやっていたのでは埒が明きません。高校数学はこうした単純計算を高速でやることが当然の前提の上に成り立っています。そんなことを意識して勉強している中学生も中学校で数学を担当されている先生も稀です、しかし、高校へ入学すれば、単純計算が高速でできることが前提になって問題が組み立てられています。高校数学をこなす標準学力を支える基礎計算力とは相当にレベルの高いものだということ
 全珠連珠算3段程度の暗算能力があれば、高校数学は計算の速度と精度において圧倒的に有利といってよいでしょう。定積分の計算のとき、四則演算の量の多さに辟易している人は多いでしょう。

 最初のポイントは①の式、それが直線の式②を表すことに気がつくことです。そこまで読めたら、後はその直線の式が上から降りてくる動画イメージで確認すればよいだけ。上から降りてくるときに最初の接点がkの最小値、そして円から離れるときが最大値になりますが、この問題には「領域Dを動くとき」という制限がありますから、領域Dの下端がkの最大値だとわかります。
 ここまでくれば後は計算力での問題です。
 円の直線の接点は円Kの式のyに(x-k)を代入して、判別式がゼロになるkを求めます。
 
  k: x^2+(x-k)^2-8x+2(x-k)+7
      =2x^2-2(k+3)x+k^2-2k+7

  この式から判別式を作るのは簡単です。
 
   D={-2(k+3)^2} - 4*2(k^2-2k+7)
     =4(k+3)^2-4*2(k^2-2k+7)
 
  接点はD=0ですから、両辺を4で割ると計算が楽になります。できるだけ数字は小さくしてやるのが計算の定石です。計算結果は次のようになります。

    k^2-10k+5=0

 計算がちょっとしんどかったかもしれません。後は2次方程式の一般解の公式を適用すれば解が求められます。

    k=5±2√5

 k=5+2√5のときは、領域Dを通らないので題意にあいませんから、k=(5-2√5)が(x-y)の最小値、k=3が最大値となります。  
 
 計算がちょっと大変ですが、これくらいの計算力がなければ「標準問題」は解けません中学校時代に時間を計って計算トレーニングをしなかった人には結構厳しいでしょう。計算は少し工夫すれば、楽にやれます。途中で判別式の両辺を4で割ってしまう操作がそれ。どのようにやれば単純化できるのか、常に考えながら計算を進めましょう。

 ついでに解説しておきますと、判別式がゼロになるときに出てきたもう一つの解のk=(5+2√5)は②の直線の式と円の下側の接点とy軸の交点座標を表しています。
   y=x-(5+2√5)
 √5の値は「富士山麓にオウム啼く=2.23620679・・・」は暗記しておきましょう。二桁わかれば十分ですから、「5-2*2.2=0.6」、「5+2*2.2=9.4」となります。
 これくらいの図なら、A4の用紙に定規で1cmを単位として正確に座標をとり、円を描いて、直線を平行移動させて確認すべきです。普段の勉強をそこまでやっておけば、理解がぐんと深くなります。 

〈11月3日追記〉
 ハンドルネーム ペトロナスさんが「点と直線の距離の公式」を使った解法をブログに載せていることをコメント欄で知らせてくれました。こちらの解法もやってみてください。
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円と直線で囲まれた領域の問題は、進研模試の過去問です。
(2)に「点Aにおける円Kの接線の方程式を求めよ」が入ってます。
詳しい説明はブログ記事にUPしています。
出題者の意図は円Kの接線と円Kの中心の距離が半径√10であることから点と距離の公式を使って解いて欲しいのだと思います。

http://blogs.yahoo.co.jp/east201110/13427565.html
by ペトロナス (2015-11-03 15:13) 
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 高校数学の問題文の「読み」の実際と、問題をより速く理解するための「静止画イメージ」(条件付確率)と「動画イメージ」(2次関数)利用の実例を挙げました。「数学的な読み」は対象となっている分野の基礎的な理解を抜きにしては成り立たぬということ、文学も『源氏物語』を原文で読むぐらいに深まれば同じ現象が現れます。登場人物相互の社会的身分の距離によって敬語が書き分けられているので、その辺りの基礎的理解なしには理解ができません。同型性がここにも顔を出しています。納得はしていただけないでしょうが、型という点から考察すると、数学の問題を解くのも源氏物語を原文で読むのも、同じという話です。

 数学の問題文の読みは、脳内で問題文にある条件を整理しながら図をイメージできたら、「読み」が高速になると同時に飛躍的に深くなります
 問題文を読み、その中から問題を解くために必要な条件を整理しながらそれを脳内にイメージとして展開していくことが、どれほど威力をもつかお分かりいただけたのではないでしょうか
 女子が苦手なのは、イメージを扱う部分です。脳の物理的な大きさには性差があって、男のほうが1割ほど大きい。そのことにが関係しているのだろうと思いますが、男子はイメージを操作することにおいて女子よりも圧倒的に有利です。男子生徒は生物学的に有利な脳の機能を生かして問題にチャレンジしてもらいたい。
 脳が1割ほど大きいからイメージを操作しやすいのか、それとも別な機能の点で男のほうがイメージ操作が有利になるのかは、医学的にははっきりしていません。男の脳と女の脳はその大きさも働き方も異なっているということだけは確かなようで、脳科学が脳の機能の性差を明らかにしつつあります。
 「女の考えることはわからない」とは男の台詞ですが、女たちも「男はちっとも女の気持ちをわかってくれない」と言ってます。お互いに永遠の謎ですから、興味が尽きないのかもしれません。(笑)

< 余談:数学描画ソフトGRAPES >
 フリーソフトです。関数の概略図がうまく手書きできないとき、あるいは書いた概略図が正しいかどうかを確認するときには、関数を入力して試してみてください、ソフトが描画してくれます。
 何度か使ってみましたが、とっても便利です。マニュアルや仮説の問題及び解説がついているのでそれを読むもよし、本が出ているのでそちらを買うもよし。

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~tomodak/grapes/

 「世のため人のため」、そうした心意気で仕事をしてくれる人がいるのはとってもありがたいことです。
 


*#2853 『釧路市学力保障条例の研究(1)』東大大学院教育行政学論叢 Oct. 29, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-29


*#3154 日本語読み・書きトレーニング(1) Oct. 11, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-11-1

 #3155 日本語読み・書きトレーニング(2):総論 「読み」と「書き」 Oct. 12, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-12

 #3156 日本語読み・書きトレーニング(3):先読みの技 Oct. 14, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14

 #3157 日本語読み・書きトレーニング(4):「書き」の「守・破・離」」 Oct. 15, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14-1

 #3158 日本語読み・書きトレーニング(5):数学と「読み」のスキル Oct. 16, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-15

 #3159 日本語読み・書きトレーニング(6):数学と「読み」のスキル-2 Oct. 19, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-19

 

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関数グラフソフト GRAPES パーフェクトガイド 改訂新版 (シグマベスト)

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  • 作者: 友田 勝久
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#3158 日本語読み・書きトレーニング(5):数学と「読み」のスキル Oct. 16, 2015   [数学]

 10/18朝 <<一般式と抽象性>>他追記 
     13:30 追記および編集
     21:00 追記:中学卒業までに育てるべき「読み・書き・計算」能力について共通の理解が必要。


 「日本語読み・書きトレーニング」の5回目は、算数・数学の文章題と読解力の問題をとりあげますが、資料の制約があり、問題の整理ぐらいが関の山という状況です。

〈 利用できるデータから見えること 〉
 データを示すことからはじめたいのですが、利用できる全国学力テストデータがないので、「平成27年度釧路市標準学力検査の結果について」から数字を引用します。この資料は公開されているので、興味のある方は釧路市教委のホームページで検索してください(このテストは目標値の設定が甘く、「釧路の教育を考える会」ではあまり評判がよくありません)。
 対象は、小学3・4・5年と、中学1・2年の5学年です。小6と中3は全国学力テストがあるから必要なしという判断のようです。必要に応じてさらにセグメントされた情報が開示されないと、分析ができなくなることはおいおいわかります。
 小5と中2のデータをとりあげます。

<< 小5の結果データ分析 >>
 小5算数問題のうち、文章題は番号16~20の5題です。それぞれの問題ごとに無回答の比率が表示されています。
  (問題番号、正解率、無回答比率)
  (16,    37.4%, 12.5%)
  (17,    46.4%,   9.4%)
  (18,    12.1%, 27.9%)
  (19,    67.1%, 16.4%)
  (20-1, 49.7%, 18.4%)
  (20-2, 52.0%,   8.0%)
  (20-3, 54.4%, 23.3%)

 文章題6題で無解答の平均は16.6%(4年生は24.3%)です。4年とのデータ比較から、5年生算数は問題の難易度の設定が甘すぎます。
 内容が載っているので転載します。
--------------------------------------
 16:伴って変わる数量の関係(比例)式に表す
 17:平行四辺形を作図する
 18:ひし形の性質を理解し作図する
 19:二次元表を読み、問いに答える
 20-1:2つの折れ線グラフの値の差を正しく読み取る
 20-2:折れ線グラフと棒グラフを正しく読み取る
 20-3:折れ線グラフと棒グラフを正しく読み取り問題を解く
--------------------------------------

 ほとんど通常の文章題の範囲には入らない問題です。こういうレベルの問題では、文意が読み取れないという生徒はほとんどいません。それでも1/6が無解答です、どういうことでしょう。わたしは、問題文が視野に入ったとたんに、読むことすらせずにパスしてしまう生徒の姿が浮かびます。
 ついでに、国語の記述式問題のほうの無回答もみておきますか。指定された長さで書く問題や、取材者としての感想を書く問題などが出題されています。
 (7, 55.7%, 12.7%)
 記述式問題は4問あります。

<<中2の結果データ分析>>
 中2数学問題の18番は度数分布表から階級の相対度数を求める問題と度数分布表から最頻値を求める問題です、これは文章題には含めなくてもよいでしょう。19番の「資料の範囲の意味を理解している」という問題も同様。20番と21番も文章題から外すと残るは22番の1次関数の文章題のみ。

  (22-1, 79.2%, 12.0%)
  (22-2, 20.7%, 36.6%)
  (22-3, 22.0%, 29.5%)

  無回答率の平均値は26.0%
-------------------------------------
22-1:ある座標から数値を読み取る
22-2:グラフの特徴から、その関数が比例であることを説明する
22-3:グラフを読み取り、プロジェクターから体育館のスクリーンまでの距離を求める
-------------------------------------

 中身を見ると、文章題と言えるのは22-3だけですね。5年生も中2年生も統計の問題が多すぎました。中2でもその傾向が維持されています。たぶん同じ方がデザインされたのでしょう。
 市販問題集に比べると文章題が少なく、難易度が低い、「目標値設定の軽さ」だけでなく、この点も首を傾げたくなります。数学B問題がなぜできないのかを探ることも釧路市独自の「標準学力テスト」実施の目的だったはずですが、みごとにピントを外しています。担当の部はどういう仕様書をテスト業者に提示したのでしょう?こういう仕事は、仕様書の確認からすべきで、市政チェックは市議会の役割です。

 文章題といっても、種類があります。中学校の範囲で出題されるのは、1次方程式の文章題、連立方程式の文章題、証明問題、2次方程式の文章題、順列・組合せ・確率の文章題、1次関数の文章題、2次関数と1次関数の文章題、図形に関する文章題などがあります。
 問題文の「読み」が重要な役割を果たすのは方程式の文章題に限定されると考えてよいでしょう。確率も関数もその中身を理解していないと、文章が読めただけでは解けません。
 文意が理解できない生徒は、立式できないと考えるべきです。
 無解答が、文意を理解できないことによるのか、文意は読めるが立式ができないことによるのかを見分けるためには、この「標準学力検査」をデザインしなおさないといけないようです。

 中2国語問題は記述式の問題7番の無回答率が18.7%文法・語句に関する知識を問う問題3番の無回答率が30.0%となっていますから、文法や語句に関する知識が貧弱であると言えるようです。

<< 小中を通して見えること >>
 算数・数学の無回答はおおよそ1/4です。文章題の難易度を標準的なものに上げたら、その割合は1/3に達するでしょう
 小学校で文章題をパスした生徒は、中学校でも文章読解力が育たず、やはり文章題をパスする傾向がある。つまり、小学校で日本語読解力が貧弱だと、中学生になっても基礎学力=「読み・書き計算」能力は低いまま固定化されてしまっていると言えそうです。
 これは仮説ですが、文章題に無回答である生徒は計算問題も得点が低いのではないでしょうか。「読み・書き・計算」三拍子そろって貧弱という生徒像が浮かびます。小学校で三拍子そろった生徒の大半は、高校を卒業する時点でも、同学年に比べて著しく「読み・書き・計算」能力が劣っています。むしろその差が拡大したと受け取っていいと思います。
 ある会社で採用を担当し、就職試験問題を作成した方が、「一度やってわかった、出身校でテストの点数に判断がつく、釧路湖陵が○○の階層に収まり、江南が・・・」と解説してくれたことを思い出します。テスト問題は国語と算数ともに小6年生の問題集から百題ずつ採録したものだそうです、まさしく基礎学力を問う問題でありました。
 小中学校で基礎学力のさまざまなレベルの生徒が混在していたのが、高校入試できれいに振り分けられてしまう現実があります

<< 文章題の難易度は桁外れに低い >>
 方程式の文章題に限定して分析してみます。
   問題文の読解⇒立式⇒計算 
 これら三つがそろって正解です。無解答は最初のステップでの躓きでしょう。第2ステップと第3ステップでの躓きは「不正解-無解答」(59.4%-26.0=33.4%)の層ということになります。

 標準的な難易度の文章題を前提にすると、読解力不足で文意が読み取れず手も足も出ない生徒がおおよそ4割、文意を誤解して立式を間違えたり計算を間違える生徒が3割、正解率は3割程度となるのでしょう。
 「標準学力検査」となっていますが、こんなに難易度の低い文章題しか載っていないような市販問題集は日本国には存在しません。全国学力テストの算数・数学B問題に該当するような難易度の問題がほとんどない、このような低レベルの問題を生徒たちに実施して、釧路市は何を測定し、何を改善しようとしているのでしょう。問題のレベルが異常に低く、デザインがお粗末です。どういう仕様書を提示したのか、そして検証委員会は何を検証し、なぜこういう大事なことを見落としたのか、釧路市議会で取り上げてほしいと思います。
 難易度ばかりでなく、目標値の設定も甘く、首を傾げたくなるような設定値が散見されます。これでは生徒も先生も勘違いを起こします。難易度を市販の標準レベルの問題集に近づけるべきですこんなに寸足らずの物差しで測ったのでは、みんな大きく見えてしまいます、早い話が、インチキということ。教育村の関係者が半数以上集まると、こういう杜撰な仕事になるのは利害関係と品性からわかりきったこと。品格のある人間はこのような好い加減な仕事を良しとしません。

<< 方程式の文章題立式について:同型性 >>
 方程式の文章題は、問題文の読解ができれば、あとは立式の問題となります。わたしは「文章題四つの解き方」で指導しています。ついでですから、解説しておきます。
---------------------------------
①簡単な数字に置き換えて考える
②線分図やポンチ絵にして、問題文の数値を書き込んで考える
③表を使う
④ ①から③を組み合わせて使う
---------------------------------

 これで道立高校入試で出てくる方程式の文章題は全部解けます。この中で生徒と先生が一番苦労する内包量を扱う③についてだけ、言及します。
 表を使うのは、速度に関する問題、食塩水の濃度に関する問題、平均値の3種類の問題です。表の基本形は「3行3列」です。表に問題文の数字を書き込み、次に空欄になっているところを2番目の表で説明する算式を利用して埋めるだけで立式が完成します。
 便利なのはこれら三つがまったく同じ計算パターンで解けること抽象度を上げるとこれら別々に見える問題は同型であることがわかります。名詞で書くと別々の語彙が、①②③という記号を使って記述すると同じものになります。数学的思考には、異分野に同型性を見つけることが含まれています。ピンとこないでしょうから、項目を並べます。

 ① 距離    食塩   合計
 ② 時間    食塩水  人数
 ③ 速度    濃度   平均値

 この順番に並べて表を作ると同型性がわかります。別々の名詞で書かれていた各項目が同じ記号で表現できます。つまり、表を埋めるのにまったく同じ操作で立式が可能ということ。

 ①=②×③
 ②=①÷③
 ③=①÷②

 教科書でも問題集でもこの順序で表を作って解説した例を知りません。これら3分野は同型ですから別々に教える必要はないのです。速度と濃度と平均値(内包量=比で表された値)が実は同じ問題であることを表を使って解説すれば、抽象度を高めると覚える公式の数を減らせることを実例で理解できます
 内包量には加法が成立しないことも、速度・濃度・平均値と横断的に見ていくことで、比較しながら統一的に理解できるでしょう、教科書や指導書の表の使い方が悪いので内包量をちゃんと理解できない生徒が多い、教えるほうも難しい。
 たとえば、距離と時間は加法と減法(足し算・引き算)が成り立ちますが、速度は加法や減法が成り立ちません。時速50kmで走る車と80kmで走る車の速度を足しても意味がありません。食塩水の濃度も同じように、10%の食塩水に20%の食塩水を加えても30%にはなりません。数学と英語の平均点がそれぞれ60点と55点であったとして、それを足すことに意味はありません。それらに対して距離や時間、食塩の量や食塩水、得点や人数は足し算してよい外延量です。まったく性質の異なる外延量と内包量を扱うわけですから難しいわけです。
 同じ表で、同じ順番で扱うと教えるほうも教えられるほうもずいぶん楽になります。

 高校数学では佐藤恒雄先生が十数冊の分野別参考書を書いておられます。大学入試に出題される問題を全部で500を超えるパターンに分解して解説していますが、そんなものを全部、高校生が3年間で勉強しきれるのでしょうか、はなはだ疑問です。
 抽象度を上げて、これらを数分の一にできたら、勉強はずっと楽になるし、応用の広いコア部分の知識を身につけられます。数学においては抽象度を上げて同型性を見抜く思考に慣れるということがいかに大切かお分かりいただけると思います

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  ここでちょっとだけ中学数学の範囲を超えて、高校数学への橋渡し部分と、もっとずっと先のほかの諸科学への橋渡しに言及します。飛ばしてくださって結構ですが、でも大事ですから、やっぱり辛抱してください。(笑)

<< 一般式と抽象性 >>
 一般式というのは個別の問題から具体性を捨象してすべての場合に適用できる抽象的な式を導き出すことでえられます。個別の問題で考えると、その数は無限です、それに対し一般式はすべてのケースを包含しています、だから抽象度をアップして一般式で思考することに慣れる必要があるわけです。
 高校数学では一般式で考えることや公式の導出操作に慣れておかなければなりません。中学数学に比べるとそのあたりの重みが格段に増すのです。覚えなければならない公式の数が中学校の数十倍も出てきますから、自分で公式の導出に習熟するぐらい慣れていないと道具として自在に使えるようにはならないのです。自分で何度も一般式の導出トレーニングをすることで、理解も徐々に深くなります。
 そういうことを考えると、中学数学で2次方程式の一般解の公式の導出を繰り返しやることは、高校数学への準備作業として意味があります。それすらできない中学生に標準的な普通科の高校数学の理解ははなはだ困難、はっきり言って無理です。
 数学がわからなければ、自然現象の中に数式を見るのですから、高校物理の理解も無理。抽象度が上がるほど数学は諸科学で使える(応用範囲の広い)ものになります。統計学や経済学は言うに及ばす、原価計算論だって数学(微分方程式)が顔を出します。抽象性が高いために数学の応用分野はあらゆる諸科学に及びます。

< 同型性についての余談 >
 同型性を見抜く力は学問研究にも大きな力となります。わたしは三十数年前にマルクス『資本論』とユークリッド『原論』の「概念の体系構成」に同型性を発見しました。いまでも、世界中の経済学者がだれも気がついていません。世界最古の数学書であるユークリッド『原論』を読む経済学者がいないのでしょう。
  高校時代に図書室にあった『資本論第1巻』を読み、森の中にさまよう感覚がして、百ページほど読んで、とてもいまの学力では歯が立たない、いつかマルクス『資本論』を理解し、乗り越えてやろうと不敵な決心抱いてからそれが適うまで15年ほどを費やしました。公認会計士2次試験の受験参考書「経済学」は近代経済学だったので、高校2年生のわたしでもケインズくらいは何とか理解できたのです。ところがマルクス『資本論』は目の前に聳える断崖絶壁と大きな森を感じさせました。
 30歳のわたしは自分が理解できても、そのイメージを他人にうまく説明できません、それでライフワークにしました。
 スミスの『国富論』、リカード『経済学および課税の原理』、マルクス『資本論』の三つともまとめてひっくり返し、日本の伝統的価値観に基づく新しい経済学「職人中心経済学」をようやく創造し、今年1月にブログで公表しました。
 『国富論』の出版は1776年ですから、二百数十年続いた西洋経済学の終焉を書いたつもりです。世界の経済学者たちがその重要性を理解するのにまだ百年かかるのでしょう、手遅れにならぬうちに早く気がついてもらいたい。

 #3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次>  Aug. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15

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< 低学力化を加速するさまざまな要因 >
 小学校高学年で、少年団活動にのめりこみ、スマホやパソコン、そしてゲームを買い与え、好きなだけ使わせていれば、本を読まず、家庭学習習慣のない子供ができあがります。中学生になれば、なぜか部活がさらに盛んになり、ますます読書時間が失われます。読んでいてもイージな作品が多くなっています。アニメのノベライズものは漫画の本に毛の生えたようなもの、そういう本に夢中になって、レベルが上がってきません。

 小学生も中学生も、生徒の1/4が、「読み」のスキルに問題を抱えていると言ってよいでしょう。9年間そういう状態が続いたら、「本を読まない」、「辞書を引かない」が習慣になってしまっていますから、高校生で改善できる生徒は稀でしょう。
 どうしてそうなるのかは、個々に事情が異なるのでしょうが、
 ①親が勉強に関心が薄い
 ②親と先生が文武両道を言わない
 ③親がゲームにはまっている
 ④親が本を読む習慣がない
 ⑤家に6段以上の本棚がない
 ⑥家庭内での会話が丁寧な日本語になっていない。
  (1語~5語程度の、ブツ切れの会話をしている)
 ⑦子どもたちの「辛抱力」の低下=わがまま度合いが大きくなっている
   
 いくらでも挙げられるのでしょうがこれくらいにしておきます。家庭環境がどうあろうと、伸びる生徒は必ずいます。本人しだいのところもありますが、たくさん事例を観察すれば、家庭環境の相違や都会と地方の格差は無視できないものでしょう。
 キャリア官僚は根室には一人もいないし、一部上場企業の本社部門もひとつもありませんから、そういう家庭の暮らしぶりや、その子どもがどういう学力レベルなのか目にすることがありません。

  キャリア官僚>国家公務員>都道府県公務員>市町村公務員

 序列がはっきり決まっています。権限の大きさの順に並んでいます。退職後の就職先もはっきり違います。根室にいたら、事例を目にしないのでわからないのです。わかるのは、都会から転校してくる生徒の中に特別頭のよさそうなのがいることぐらいです。

 高校数学では「問題文の読み」の重要性が中学校時代の3倍くらい重要になります。問題文を読み、出題者が何を意図しているのかを見抜くとか、読み替える操作が要求されます。中学校とは比較にならぬくらい、問題文の読み方がシビアになります。
 基礎学力三本柱、「読み・書き・計算」のうち、「読み」の力が標準に達しなければ、入り口で躓き、高校数学を制覇できません。もちろん現代国語もです。何度か書いていますが、教科書のレベルが問題にならぬぐらいレベルアップします。アニメのノベライズものや東野圭吾の作品レベルのエンターティンメントを読み漁っていた生徒は標準的な普通科の現代国語に収載されている作品に歯が立たないでしょう。
 高校現代国語や高校数学を前提に、中学校卒業までにどれほどの「読み・書き・計算」能力が要求されるのか、達成されるべき基礎学力について共通の理解が必要と思います
 
 釧路市独自の「標準学力検査」を取り上げて、具体的に論じましたが、悲観的になる必要はありません。現実を現実と受け止め、関係者の皆さんそれぞれがやれる範囲で仕事の改善努力をしていただきたい。
 自分のためではなく、ちょっとだけ「世のため人のため」に仕事をしようではないですか、現実は変えられます。
 
 最後に、全国学力テストデータが、学力改善のために、学校別・科目別に基本統計量がすべて公開されるように望みます。


*#2853 『釧路市学力保障条例の研究(1)』東大大学院教育行政学論叢 Oct. 29, 2014 
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*#3154 日本語読み・書きトレーニング(1) Oct. 11, 2015 
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 #3155 日本語読み・書きトレーニング(2):総論 「読み」と「書き」 Oct. 12, 2015 
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 #3156 日本語読み・書きトレーニング(3):先読みの技 Oct. 14, 2015
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 #3157 日本語読み・書きトレーニング(4):「書き」の「守・破・離」」 Oct. 15, 2015
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 #3158 日本語読み・書きトレーニング(5):数学と「読み」のスキル Oct. 16, 2015
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 #3159 日本語読み・書きトレーニング(6):数学と「読み」のスキル-2 Oct. 19, 2015
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#3086 空間図形の三角比応用問題  July 19, 2015 [数学]

 今日の根室は花火大会。彼や彼女のいない中高生も友達にあてつけられながらそれなりに楽しんだだろう(笑)。後は8月9日から始まる金刀比羅神社のお祭りまで、こころはうきうきしている。
 全国一涼しい根室もこのところ連日20度を越える「猛暑」に生徒たちは「アツイアツイ」とあえいでいる。本日の最高気温は13時の23.5度(最低気温は午前4時の13.1度)、何が暑いのかと、根室高校を卒業してから東京に35年間住んでいたわたしは、根室っ子の暑がりようにあきれてしまう。こういう生徒たちも東京の大学へ進学すれば「23.5度、超すずしい!」というようになる、根室のよさは根室を離れてみてしみじみ実感できる。
 夏勉強するには全国一快適な環境の根室だから、高校生諸君は夏休みに入ったら1日8時間以上勉強したらいい、一生の内で一日中勉強していていいなんてハッピーな時期はそう長くはない。

 「首都圏や札幌圏の高校生に学力差をつけるのはいつだ?」
 「いまでしょ!」


 さて、本題に入ろう、7月18日に根室高校では模試があった。試験を受けた帰りにニムオロ塾へ寄った生徒から数学「大問B3」の(3)の問題について質問があった。解答をざっと見たが理解できないので解説して欲しいという。
 空間の位置関係の認識センスがいい生徒なら時間内になんとか処理できる、さて時間内に正解できたセンスのよい生徒は何人いただろう?根室高校で2年生の7月にこの問題を上手に処理できるのは、0~3人だろう。
 この問題は2年生、数B受験者用の選択問題である。問題文を転載するので、高校時代に数学が好きだった方は思い出してやってみたらいかが。

--------------------------------------------------
△ABCがあり、AC=3、∠ABC=45°、cos∠BAC=1/3である。
(1) sin∠BACの値を求めよ。また、辺BCの長さを求めよ。
(2) △ABCの外接円の中心をOとする。△OBCの面積を求めよ。
(3) (2)のとき、△OBCを底面とし、BP=CP=OP=BC である点Pを頂点とする四面体POBCをつくる。四面体POBCの体積を求めよ。
--------------------------------------------------

 攻略の仕方を読みとってもらいたい、赤字にした部分がこの問題の攻略ポイント。だから、問題文に示された条件は、これをどう使えば正解にたどり着けるのかという視点で読もう。この種の応用問題は問題の読み方がほぼ半分のウェイトを占めている。「読み・書き・計算」で一番重要なのが読みである。大事な順番に並んでいる。

 (1)と(2)は問題ないだろう、生徒もこの2題はクリアできた、後で答えを書いておく。生徒ができなかったのは(3)の問題である。△OBCを底面として頂点Pがどういう配置になるのかが読めれば正解にたどり着ける。そこが読めなければ正解にたどり着けず、漂流してしまう。どこへ向かって漕いだらいいのかわからない。

 四面体の体積Vの計算式は簡単である。Pから△OBCの外接円への垂線の足の接点をHとすると、計算式は次のようになる。
   V=1/3・底面積・h=1/3・△OBC・PH
 これが分からない生徒は模試を受けていないだろうから、問題は△OBCの面積と四面体の高さPHである。OBCの面積は(2)で計算済みだから、PHを求めることがこの問題のポイントだと分かる

 △OBCを底面にした四面体を頭の中でイメージすると、頂点Pが底面に対して斜めに張り出すことは容易に想像がつくが、頂点Pからの垂線が△OBCの外接円のどの辺りに落ちるのかは、問題文をもう一度読み直さなければわからない。(3)の問題文にヒントがあるはずで、四面体の辺に一つだけ条件がついているからこれを使えということだ

 BP=CP=OP=BC 

 図を正確に書いてみてもいいし、この条件から読み取るのもいい。与えられた式は頂点は△OBCの各頂点から等距離にあることを表しているから、△OBCの外接円の中心に垂直にポールが立っているとイメージしてもらいたい。そうすると、外接円の円周上の任意の点からポールの一点Pに線を引いたらすべてその長さが等しくなることに気がつく。空間イメージはこれだけで十分だ。△OBCの外接円の中心をO'とすると、四面体の高さPHは、直角三角形BO'Pの辺PO'となる。
 PB=BCだから4、

 外接円の半径が少し厄介そうだ。辺BCの中点をMとすると、∠BAC=∠BOM=45°だから、
  cos∠BAC=sin∠OBC=sin45°=1/√2
 (この値は(2)の問題で、△OBCの面積計算の際に使っている) 
 あとは正弦定理で外接円の半径R'を計算すればいい。その値は9√2/4である。
 直角三角形PBO'の PB=4、BO'=R'=9√2/4から三平方の定理で辺PO'を求めると、
   PO'=√94/4

   V=1/3 ・ △OBC・PO'=√47/6

 <答え>
(1) sin∠BAC=2√2/3、 辺BC=4
(2) △OBC=√2
  (式:1/2・BC・BO・sin∠OBC=1/2・4・(3√2/2)・1/3)
(3) V=√47/6

 <参考>
分割した図を3つ描くとよい。
 ① △ABCとその外接円、そして外接円の中心OとBとCをそれぞれ線分で結ぶ
 ② △OBC、BCの中点をMとする図を描く
 ③ 直角三角形PBO'(O'=H)

 無理に四面体の立体図を描かないほうがいい。分割したほうが様子が分かりやすくなる。

  複雑な問題に遭遇したら、「第二はわたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること
    ―デカルト『方法序説』「科学の方法、四つの規則」より―

 <参考-2>
 暇つぶしに辺ABの長さを求めてみたらいい。△ABCはAB=BCの二等辺三角形になっている。△ABCは三辺が4:3:4の整数比、角度は45°、67.5°、67.5°の二等辺三角形。

*#3073 高校生の哲学への関心度 July 5, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-05-1

 #3082 利便性の追求の果てには何があるのか July 15, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15

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*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 #2936 『資本論』と経済学(2):「1.経済現象と日本の国益」 Jan. 26, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26

 #2937 『資本論』と経済学(3):「円安はいいことか?80⇒120円/$の威力」 Jan. 27, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27

 #2938 『資本論』と経済学(4) : 「経済学とは?」 Jan. 27, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-1

 #2939 『資本論』と経済学(5) : 「『資本論』の章別編成」 Jan. 27, 2015  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-2

 #2941 『資本論』と経済学(6) : 「マルクス著作の出版年表」 Jan. 29, 2015   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28-1

 #2942 『資本論』と経済学(7) : 「デカルト/科学の方法四つの規則」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28-2

 #2943 『資本論』と経済学(8) : 「ユークリッド『原論」 Jan. 29, 2015   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29

 #2944 『資本論』と経済学(9) : 「何をやりつつあったかは残された文献に聞け」 Jan. 29, 2015    
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-1

 #2945 『資本論』と経済学(10) : 「プルードン「系列の弁証法」 Jan. 29, 2015    
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-2

 #2947 『資本論』と経済学(11) : 「労働観を時間座標系においてみる」 Jan. 29, 2015     
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-4

  #2948 『資本論』と経済学(12) : 「学としての『資本論』体系解説」 Jan. 29, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30

 #2950 『資本論』と経済学(13) : 「マルクスの経済学体系構成法」 Jan. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-1

 #2951 『資本論』と経済学(14) : 「マルクスの労働観と日本人の仕事観」 Jan. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-2

 #2952 『資本論』と経済学(15) : 「ヨーロッパ労働観⇔と日本の仕事観」 Feb.1, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-3

 #2953 『資本論』と経済学(16):「仕事がキツイ!に潜む心(仕事観)の問題」 Feb.1, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01

 #2955 『資本論』と経済学(17):「要領の悪いものほど忙しいとぼやく」 Feb.3, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-03

 #2958 『資本論』と経済学(18):「教育の職人」 Feb. 5, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-04-2

 #2960 『資本論』と経済学(19):「日本経済の未来」 Feb. 6, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1

 #2961 『資本論』と経済学(20):「経済成長の天井 山田久氏の論」 Feb. 7, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07

 #2964 『資本論』と経済学(21):「過剰富裕化論」 Feb. 8, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07-3

 #2966 『資本論』と経済学(22):「相対的貧困率上昇と富裕層増大」 Feb. 9, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-08-1

 #2967 『資本論』と経済学(23):「ピケティの空想的所得再分配論」 Feb. 10, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-09

 #2968 『資本論』と経済学(24):「浜矩子 予算案と公共性について」 Feb. 11, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-10

 #2971 『資本論』と経済学(25):「村落共同体と税:自由民と農奴について」 Feb. 12, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-12

 #2972 『資本論』と経済学(26):「文部科学大臣下村博文「教育再生案」について」 Feb. 13, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-12-1

 #2973 『資本論』と経済学(27):「注-1~5」 Feb. 13, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13

 #2974 『資本論』と経済学(28):「注ー6」と主要文献リスト Feb. 14, 2015  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13-1

 #3082 『資本論』と経済学(29):利便性の追求の果てには何があるのか July 15, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15


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<『方法序説』>

 高校生はこれくらいのレベルの本を少し背伸びしても読んで欲しい。フランスではこの本を国語のテクストに使っているそうだ。この本はサイエンス(科学)について書かれた哲学書である。デカルトは哲学者であり、数学者であり、科学者であった。
 日本にはこのような複合領域の研究者を多面的に扱える学者がすくない。構造言語学の大家であるチョムスキーもそういう分野の学者であり、彼の本の翻訳がなかなかなされないから、原書で読まざるをえない。理系と文系の境界領域あるいは両方の素養が必要な領域には重要な研究分野が多い。マルクス『資本論』もそういう領域の本である。文系の学者の目でばかり見ていたのでは、肝心要の「学の体系構造」が視野に入ってこないのである。したがって、世界の理論経済学者たちはずっと頓珍漢な議論をし続けている。その構造を明らかにし、新しい経済学の可能性に言及したのはebisuの論文が世界初。(⇒弊ブログのカテゴリー「資本論と21世紀の経済学」を参照)

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 ワイド版のほうが活字が大きくて読みやすい。

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#3020 分散と平均値の問題 : 「初等統計学のススメ」 Apr. 9. 2015 [数学]

 8日から新学期が始まり、明後日金曜日にテストがあるようだ。新入生は数学のクラス分けテストになる。根室高校普通科120名(定員割れで今年の新入生は97名だったかな)は「お迎えテスト」の結果で4段階のクラスに選別される。上から、γ(ガンマ)クラス、β1(ベータワン)クラス、β2(ベータツー)クラス、α(アルファ)クラスである。一番下のαから一番上のγクラスへ階段を昇る人は、年に1人いるかどうかだ。ニムオロ塾の生徒は大半がγクラスだったが、このごろそうではない生徒がいるようになった。数学が苦手な生徒も塾で勉強しているということ(笑)。中学校の文協学力テストで400点を越える生徒が10年前に比べて5分の1以下に激減しているから、高校生の学力が低下してきていることも事実である。学力下位層は一生懸命に勉強した経験のない生徒が多く含まれているから、がんばれない生徒が増えていると言った方が適切かもしれない。勉強でがんばった経験が乏しい生徒が増えているのである、塾で教えるのもむずかしい時代になった。しばしば躾からやらなければならない。
 数学が苦手な生徒でも、ebisu(に限らず他の塾でも)先生の言うとおりに勉強してくれたら、αからγクラスへの階段を昇るのはそんなにむずかしいことではない、自分のやり方を棄てて、指導どおりに一生懸命にやればαでも半分の生徒はγクラスのメンバーになれるだろう。この記事でもわかるが、つねに基本へ立ち返り、根っこのところまで理解できるような指導をしている、世の中にそういう先生は少なくないはずで、基本をおろそかにしない学習スタイルが自然に応用力を育んでくれる。

 さて、本題に移ろう。高2の生徒から数Ⅰ「データ分析」の章の問題の質問が出た。解答を見てもなぜそういう式になるのかわからなかったというのである。理由は後で明らかになる、無理もなかった。
 問題文を見てもらいたい、教科書準拠問題集「3TRIAL数Ⅰ+A」の問題283である。

------------------------------------------------------
<283>  15個の値からなるデータがあり、そのうちの10個の値の平均値は9、分散は3、残り5個の平均値は6、分散は9である。
(1)このデータの平均値を求めよ
(2)このデータ全体の分散を求めよ
------------------------------------------------------

 1番目は、データの個数と平均値を掛けて合計をそれぞれ出し、総合計を総データ数で割ればいいだけだから、首都圏の市立中学受験のできの良いほうの生徒なら全員が正解できるレベルの問題である。だが、2番目はそうはいかない、「分散と平均値の関係式」を使うことになるので理解がちょっとやっかい、関係式がなぜ成り立つのかの説明は教科書にも準拠問題集にも載っていない。自力で考えるということのようだ。その関係式は準拠問題集の同じページの上の段に次のように書かれているのみで解説はナシ。

分散と平均値の関係式
 (xのデータの分散)=(x^2のデータの平均値)-(xのデータの平均値)^2

 この式がなぜ成り立つのか、高2・4月の段階で意味のわかる生徒はほとんどいない、高1の範囲ではこの関係式を証明するのははなはだ困難であるから無理もない。具体的な事例で、帰納的に説明するしかない。
 EXCELを使わないと計算を間違えて、仮設例を簡単にしたつもりでも手計算でやると答えが関係式と一致しない。6データの仮設例を使って簡単化してやってみたが、案の定、計算が合わなかった。ところが∑記号を使って一般式で説明すると実に手際がよくて簡単なのである。
 統計学の専門書ではこういう問題は採録していない、不要だからだ。数学の問題としてはありうるが、統計処理の実務でこういう事例が出てくることは考えられない。

 仮設例: 1、3、5、8、13の5データを前三つと後ろ二つに分けて計算してみた。

 どこかで計算間違いをしたのか数字が合わなくて、検証できなかった。EXCELを使って検証したから、あとでアップする。
 授業中に簡単な仮設例での帰納的解説が破綻したので、結局、この式の演繹的証明をする羽目になった。理解するのは無理だなと思いながらの解説はどこか迫力がないものである。申し訳ないと重いながら∑記号中心の数式を書き連ねる。∑記号は数B の「第4章 確率分布と統計的な推測」のところと数Ⅱの積分で出てくるから、まだ習っていない。どこの学校でもそうかもしれないが、数Bは(根室高校では)数列までしか教えないから、「確率分布と統計的推測」の章は習わない。
(正規分布や推測統計学の基本概念は文科系の大学でも教養課程で授業があるから、この章はぜひ高校でやっておいてもらいたい。)

 数学記号は便利なもので、専用の数学記号を使うとじつに 'simple' に解説できる。使わなければ解説がやたら複雑になるか、シンプルな解説ができても'センス'を必要として多くの生徒には理解できないケースが多い、ましてや複雑な解説は言うに及ばず。ebisu先生、このケースではシグマ記号を使わないシンプルな解説を思いつけなかった、御免。
 もちろん、質問した生徒は黒板に書いたシグマ記号を使ったシンプルな証明を見ても、おおよそしか理解できないから、書き取っておいて数列を習ったところでもう一度見てもらうしかない。EXCELで昨日やったシンプルな仮設例を使って計算しプリントアウトして渡すか、あるいは2時間かけて必要最小限の範囲で数列の授業をやるかだが、今日はテスト前々日だから2時間かける余裕はない。興味があればどちらかの方法で金曜日のテスト後に特別授業に応じたい、こういうときはニムオロ塾では本人次第だ、勉強したい生徒には教えるし、したくない生徒には教えない。水を飲みたくない馬を川辺に連れて行っても飲まないから、ばかばかしいから高校生にはそういうことをしない。高校生は自己の判断について責任の負える大人として扱う。これも人生を生き抜くための一つのトレーニングである。

 そういうわけで、この「Trial B」問題は、高2の4月では質問をしてくれたγ(ガンマ)クラス(一番上のグレード)の生徒ですらも完全理解には手がとどかなかった。ならば対処療法でとりあえず「分散と平均値の関係式」を暗記して応用力を磨くのみ、関係式の基礎的な理解は年明けころになる。そのころに、もう一度証明をやってみせたらすんなり理解できる。
 さて、質問した生徒はどういう選択をするのだろう、2時間の∑記号計算の授業を要求するだろうか?
 こういうことがちょくちょくあるから、塾家業は楽しい。塾長はその都度、塾生に自己選択を迫り、成長を促す。DVD授業やインターネットの配信授業では不可能、生徒と先生が同じ時間と空間を共有するナマの授業のいいところだお互いの感情も、言葉の意図するところも、目と耳とこころで読み取れる、本来の教育とはそういう教える者と教えられる者との共有された時間と空間の中にあるのではないだろうか。日本には400年目からそうした私塾の伝統がある。江戸時代にはすでに3万もの私塾があった、これほど勉強好きな国民は世界中で日本だけだった(過去形で語らなければならないのが悲しい)。おそらく教育熱心なのは1万年の縄文文化にその淵源を持つのだろうから、「振り子」はいずれ元に戻る。ebisuは心配していない。
 答えを書いておくのを忘れるところだった。
「先生、このごろ物忘れ多いね」と生徒に言われて、ギクッとする。たしかに、その傾向はある。(ニヤリ)


 (1番目の答えは 120/15=8、2番目の答えは7)

-------------------------------------------
<証明と解説>
 関係式を∑記号を使って記述すると次のようになる。mは平均を表す。

 1/n{∑(x-m)^2}=1/n{∑x^2-2m∑x+nm^2}
  =1/n∑x^2-2m^2+m^2 ・・・ 1/n・∑x=m
  =1/n∑x^2-m^2

したがって、
分散と平均値の関係式
 (xのデータの分散)=(x^2のデータの平均値)-(xのデータの平均値)^2

は証明された。
-------------------------------------------

<この問題の解き方の要諦>
 問題の解き方の要諦(ポイント)は書いておいたほうがいいだろう。関係式を見てもらいたい、∑x^2と全体の平均値mが計算できれば、分散1/n{∑(x-m)}が計算できるのである。mは(1)ですでに計算済みだから、各データの2乗の総和を求めるにはどうしたらいいのかと考えたらいい。数学的な勘(sense)の良い人はすぐに気がついただろう、∑x^2をk=1→10までとK=11→15まで計算して、それらの合計をとればいいのである。

 1番から10番目までのx^2の総和の平均値をaとし、11番から15番目までのx^2の総和の平均値をbとすると、関係式から次の式が成り立つ。
 3=a-9^2
  9=b-6^2
 よって、a=84、 b=45
  ∑x^2=a*10+b*5=84*10+45*5=840+225=1065
   1/15∑x^2=1065/15=71
  関係式より、15データ全体の分散は次の式で計算できる。(mはデータ全体の平均値を表す)

  1/15*∑(x-m)^2=1/15*∑x^2-m^2=71-8^2=7
 
  関係式と分散の意味がしっかり理解できただろうか?この解き方が了解できたら、あなたは分散の統計学的な概念とこの「分散と平均の関係式」をしっかり理解したと判断していいだろう。関係式を暗記するだけでは応用ができない、基本をしっかり理解すれば、変化をつけた応用問題にも、原理原則に戻って思考し、対処できるようになる。


<∑記号を使わない分散と平均値の関係式の証明>
 ハンドルネーム・ペトロナスさんから、スマートな解説をいただいたので、本欄へアップしておきます。
=============================

Σ記号を展開して和の式で説明すれば生徒さんも理解できたのかなと思います。


データをx[1]、x[2]、・・・、x[n]、データの個数をn、データの平均をm、分散をsとする。

分散の式の定義から
s=(1/n){(x[1]-m)^(2)+(x[2]-m)^2+・・・+(x[n]-m)^(2)}
展開すると
s=(1/n){(x[1])^(2)+・・・+(x[n])^(2)}-(2/n)(x[1]+x[2]+・・+x[n])m+nm^(2)} ・・・①
m=(1/n)(x[1]+x[2]+・・・+x[n])より①は
s=(1/n){x[1])^(2)+・・・+(x[n])^(2)}-2m^(2)+
m^(2)
s=(1/n){x[1])^(2)+・・・+(x[n])^(2)}-m^(2)
したがって
(分散)=(x^(2)の平均値)-(xの平均値)^(2)

by ペトロナス (2015-04-11 11:52) 
=============================


<余談>
 ebisuは大学で統計学を習った。そのあと統計学は仕事で使った、必要があったから何冊か専門書も読んだ。大学院を卒業して産業用エレクトロニクス輸入商社に勤務した最初の年(1979年)に、経営分析と経営改善のために25項目の分析モデルを作成し、データ分析をするために統計処理が必要だった。当時のパソコンの性能はおもちゃ、とても仕事では使えなかった。マイクロ波計測器制御用のパーソナルコンピュータなら統計計算が可能だったが、これはBASICでプログラミングしなければ動かないし、日本製品はなく、HP社製のそれは値段が百万円を超えていた。だから、プログラムのできる科学技術計算用計算機のHP67とプリンタ付のHP97を使ってやった。逆ポーランド方式のプログラミング言語で計算式のプログラミングが簡単だった。値段も前者が11万円、後者が22万円だった。電卓で計算していたら、見かねて社長がすぐに(中途入社1ヵ月後)買ってくれたのである。仕事をいっぱい抱えていた(プロジェクトを5つ、実質一人、あとのメンバーは役員と課長が二人)から、時間がもったいなかった。400ページほどの英文マニュアルが2冊、それを1週間で読みきって使った。家に帰ってマニュアルを読んでプログラミングしていたら空が明るくなって慌てて寝たことが数回あった。
 400ページを超える英文マニュアルを1週間で2冊読みこなし、理数系のプログラミングや統計学の基礎的な勉強をしなければならない。それができないようなら重要な仕事は回ってこない。だから、仕事では英語も数学も必要になる、好き嫌いなど言っていられない。実社会は数学と英語の両方のできる人材を必要としている(片方では強力な武器にならないのである)。
 本社で経営管理のための経営分析モデル作りやデータ解析をやっていて、線形回帰分析や曲線回帰分析を多用した。円安や円高で業績が翻弄される会社だったが、2年で為替相場に業績が左右されず、安定的に高収益を上げられるような仕組み(コンピュータシステム)を二つ作った。業績は急激に改善され高収益会社となり財務安定性が強固になったから、店頭公開を果たしている。
 文科系でも統計学の素養は必要である。数Bの確率変数の章は学校ではやらないが、自力でそれくらいはやっておいたほうがいい。

 北海道医療大学へ進学した生徒があるとき、大学の統計学の授業がわからないので教えてほしいといってきたことがあった。使用しているテクストを見たら、東大の教養で使っている統計学の教科書だった。数式中心の説明が並んでいて、数Ⅲまでやっていないととても歯が立たない代物だった。統計学の専門書でこんなに数式を多用するものは珍しい。EXCELを使うプリント演習問題が宿題に出されていた。
 こういう頼まれごとも楽しいのである。久しぶりに統計学の勉強を生徒と一緒にした、もう4年も前になる。検索してみたら2011年8月16日のブログにアップしていた。早いものでその生徒は4月から道内で就職して働いている。臨床心理学科だったから、大学院へ進学して臨床心理士の国家資格をとってほしかった。臨床心理学なら大学院受験の英語は教えられるから、次の夏休みには来るかと思っていたが、3年生のときに進学をあきらめてしまった。どうってことはないハードルだったのだが、本人からみたら高く見えてしまったのだろう。


*#1628 夏季講習:統計学 Aug. 16, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-08-16



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 4年前に生徒が北海道医療大学の臨床心理学科で使った教科書はこれである。数学が大好きな生徒には理解しやすい教科書だが、数学が不得手な生徒には理解超困難なテクストと化す。理系学生向けの統計学教科書と言っていいだろう。
数式を極力減らした文科系の学生向けの統計学の本もたくさんあるが、数式を多用して解説してくれたほうが、実際にはシンプルで理解しやすい。数学という壁を作らなければ、さまざまな分野の専門書を独力で読みきることができる。

 高校を卒業して地元に就職した者たちのなかに数学が大好きで数Ⅲを履修した新社会人がいたらこの本にチャレンジすることを薦めたい。基礎統計学にかんする素養があれば、さまざまな専門書を読むときに、データがどのように統計的な処理がなされて結論がだされたのか、その信頼度も判断できるようになる。いつか自分で統計データを加工する場面に出くわすことになるかもしれない、そのときに勉強したのでは間に合わないのである。
 チャンスをつかむためには勉強の幅を広げておくべきだ。不思議と読んだ専門書の専門知識や技術を使う仕事が、読み終わったころに持ち上がる。わたしは何度もそういう経験をしてきた。異質な分野の専門知識を身につけたら、その専門技術を磨く仕事は天が用意してくれるのである。ebisuの場合は無駄になった勉強は一つもない。望めばの話だが、異質な複数の専門知識や技能のある者は大企業の「本社エリート社員」として競争の中を生き抜けるよ、役員くらいにはなれるだろう。複数の専門知識のない者は結果が出せないから、化けの皮がはがれて自然に脱落していく。


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#2625 数学問題(#2622)の解答 Mar. 21, 2014 [数学]

 日曜日にアップするつもりだったが、観測史上最大の吹雪に見舞われ、ニムオロ塾は休みにしたので、予定を早めることにした。本稿は#2622に掲載した就職試験問題の解説と解答である。

-------------------------------------
【問題】
  座標平面状において、点A(-1, 0)、点B(1, 0)があり、直線 y=x-2 上に任意の点Pをとる。このとき、AP+PB(線分APと線分PBの長さの合計)の最小値はいくらか。
-------------------------------------

 これは線対称の問題で、y=x-2を線対称の軸に見立てると簡単な問題になる。そこを見抜けるかどうかはセンス次第だろう。もっとも、この手の問題を何題か解いた経験のある人なら、すぐに気がつくだろう。必要な基礎知識は中3程度で充分であるが、就活中の学生はずいぶん昔のことなので忘れている人が多いのではないか。

 ワードで作図しておいたのだが、貼り付けられないので、文章で説明するしかない。図を見ていただいたほうが簡単なのだが、自分で描いて確認してもらいたい。高校入試を受けた諸君にも良問になっている。

 与えられた座標はA(-1, 0), B(1, 0)
 与えられた直線の式は y=x-2

 y=x-2を線対称の軸Lとすると、Bに対応するB'の座標は直線Lのx切片C(2, 0)とBとを一辺とする正方形を作るから、B'(-1, 1)は図を描いてみれば明らかで、計算の必要もない。

 AB'と直線Lの交点をPとすればよい。
 このとき、PB=PB'も明らか、
  したがって、AP+PB=AP+PB'

 AC=3、CB'=1だから、
  AB'=√(3^2+1^2)=√10
 よって、AP+PB=√10
         

  久しぶりに数学問題にチャレンジした人もいるだろう、楽しんでもらえただろう。


---------------------------
凡例:
 3の2乗⇒3^2
 ルート10⇒√10
---------------------------

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#2622 就職最前線大学三年生の春休み帰省:数学の質問あり Mar. 20, 2014 [数学]

 4月からは大学4年生、就職活動に忙しくなる。道内の大学に通う学生達は就職候補企業が道内に案外少ないことに驚いているだろう。大企業の本社の98%は東京だから、道内の大学は地理的・経済的に不利、実際の就活にお金がかかりすぎる。100~150社に応募するのが普通だというから驚きだ。

 公務員試験を受けるという元塾生が質問があると問題集をもってきた。一つはこういう問題だった。

-------------------------------------
  座標平面状において、点A(-1, 0)、点B(1, 0)があり、直線 y=x-2 上に任意の点Pをとる。このとき、AP+PB(線分APと線分PBの長さの合計)の最小値はいくらか。
-------------------------------------

 高校1年生の基礎知識で充分に解ける問題だから、成績上位層の中3でも解ける人がいるだろう。高校生のほうが余計な知識に迷わされてできが悪いかもしれない。5つの選択肢から正解を選ぶ問題だが、迷路にはまり込んだらそうなるという答えも並べられていた。
 大学3年生の終わりだから、高校1年の終わりから数えても6年間がすぎているので、おおかたは忘れているだろうから、ブラッシュアップが必要だ。

 迷いの元になりかねないから選択肢は書かないので、計算してみてほしい。問題文を理解し、正しく作図ができれば簡単な問題だ。作図ができないと迷路にはまり込みかねない。

 大学3年になったら就職試験に備えて、高校数学の勉強をしなおしておこう。

 ヒントを書いておく。

 *線対称の作図ができたら、あとは一次関数と三平方の定理の基礎的な複合問題*

 答えは日曜日に書き込みます。


*#2625「数学問題の解答 Mar. 21, 2014」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-21-1


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