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#3565 監視社会は始まっているか : 前川元文部事務次官 July 6, 2017 [時事評論]

  前川元文部事務次官が「あったことをなかったことにはできない」と発言すると、読売新聞は彼が出会い系バーに通っていたことを「絶妙のタイミング」で報じた。情報源は内閣官房だと噂されている。では、内閣官房のどなただろう、そしてその出身は?
*<問われるメディア>マスコミが取り上げない恐るべき前川発言
http://lite.blogos.com/article/231863/?axis=&p=2

  ことは文部事務次官時代のことで、昨年12月に前川氏が杉田内閣官房副長官から注意を受けたことがわかっている。杉田氏の経歴を見ると平成6年に警察庁警備局長に就任している。公安警察のトップである。戦時中なら特高警察の親玉、そういう経歴の人が平成24年から内閣官房副長官である。
  前川氏が出会い系バーに通っていたことが公安警察からのリーク情報だったとしたら、怖い話である。時の政権と公安警察が結びつけば戦前・戦中の悪夢がよみがえる。
*杉田氏の経歴
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/meibo/daijin/sugita_kazuhiro.html

**警察庁警備局とは?
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%A6%E5%82%99%E5%B1%80

  米国からNSCが使っている監視ソフト Xkeyscore が日本政府へ提供されていると、エドワード・スノーデン氏が公表した。簡単に紹介すると「治安警察用のグーグル」だという。メール、住所録、SNS閲覧記録、サイト閲覧記録…なんでもござれという具合。
*https://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cHM6Ly9ibG9ncy55YWhvby5jby5qcC9tb3JpdGFrZXVlLzEwNDM1ODMxLmh0bWw-

  特定秘密保護法案、共謀罪と続けざまに治安警察用の強力なツールが整備された。内閣官房でこれらを進めているのは公安警察のトップであった杉田和博官房副長官であることは想像に難くない。ネットワークや監視ソフトの機能強化が進んでしまった現在では、特定秘密保護法案や共謀罪の機能は戦時中の治安維持法の比ではない。家族や親戚、友人・知人の中に監視対象者がいれば、あなたも自動的に監視対象にならざるを得ない。ブログやツィッターやFB、インスタグラムはいうに及ばす「いいね」をクリックした記事やネット通販での買い物、閲覧したサイトの記録、スマホをもって移動すれば移動記録など、発言内容と行動のすべてが記録され検索可能になる。

  警察につながっている監視カメラは道路のNシステムが代表例で4-5万台と言われているが、それらとは別にそれぞれの目的で町中に監視カメラがセットされている。コンビニ、駐車場、マンションののエントランス、駅、空港、公共施設・・・、すでに百万台以上の監視カメラが存在している。これらがインターネットにつながれるのも時間の問題である。利便性を追求すればそういうことになる。人工知能と画像認識ソフトを組み合わせることで、治安機関はリアルタイムで国民全員の行動を自動的にトレースできる。大事な要点はそれらが低コストで可能になることにもある。この分野では人工知能が絶大な役割を果たす。
  セコムのセキュリティシステムの契約者は自分の家内部に設置したカメラからの画像をインターネットを通じて随時見ることができる。ネットを通じて見ることができれば、それは Xkeyscore システムでも随時見ることができるし、治安機関は任意の画像情報をピックアップして保存可能ということ。家族が家に居るのか居ないのか、一目瞭然である。出かける前にセットするから、それらの記録も入手できる。いちいち裁判所の令状をとってやるだろうか?
  わたしは臨床検査会社SRLに勤務していた時に、帝人との合弁会社の経営を任されていたことがあるが、親会社の社長であるKさんへの重要な報告には e-mail を使わなかった。社内メール便を使い、封筒にいれて封緘して送っていた。なぜそうしたか?親会社のシステム管理部門の担当者が興味本位で読んでいることを知っていたからである。人間が管理する限り、こうしたことはいつでも起きるし、起きているだろう。仕事上で「管理者権限」をもつ担当者は必要だが、その担当者の心をコントロールすることはできない。好奇心をとめることはほとんど不可能。だからそれを前提にして動くしかない。

  いつ・どこで・誰が・何をしていたのか、画像認識技術と監視カメラ画像から容易に検索できれば、国民のプライバシーはなくなる。そういうことを意識して日常生活を送るのはたいへんなストレスである。ネットで何を検索し、いつどのサイトを閲覧したのか、いつ・誰にどのようなメールをだしたのか、あるいはSNSで「いいね」をクリックしたリストの一覧など、すべて検索可能になる。だから、「いいね」を押す前に監視の目を意識することになり、行動や発言が委縮する。監視する側は人手で検索するのではなく、人工知能が何かをキーにしてあらゆるビッグデータへ触手を伸ばして自動的に検索するようになるだろう。

  先々週だったか、キャノン社のさまざまなタイプの監視カメラと画像認識ソフトがNHKの特番で紹介されていた。ハンマーで叩いても破壊できないカメラが製品化されていた。機能強化と低価格化が進めば、監視カメラの設置台数はさらに急激に増大し、インターネットにつながれビッグデータとして蓄積されるようになる。
  幼児のころからのサイト閲覧データや物品の購入データ、行動データを人工知能が読み込むことで、思想や行動が高い精度で予測され、監視される。

  政府と強力な監視ツールとそれを合法化する法律で武装した警察が結びつくと、誰かが政府に都合の悪い発言をしようとしたら、あるいはしたら、その人のプライバシーを丸裸にして、脅すことができる。いやな世の中だね。

  わたしはそういう世界で暮らしたいとは思わない。
  わたしは30年後の世界の住人ではないが、このまま放置したらいまよりずっと息苦しい社会になっていると思わざるをえない。
  国家に治安機関は必要だからこそ、その在り方について広く議論して、数年をかけて国民の合意を形成すべきだ。急ぐ必要はない、ゆっくりでいい。

*際立つ前川氏の誠実さ(ブログ:オータムリーフの部屋)
http://blog.goo.ne.jp/autumnleaf100/e/b129634f87e1fe53ce2d777bac53c933


< 余談:一色(ひといろ)のリスク > 7月6日 朝6時半追記
  地下鉄でサリンをまいたオウム真理教の信者たちは理系出身者が多かった。オウム神仙の会というのができたころわたしもヨーガや瞑想法や呼吸法、健康法、意識構造などに興味があって、ヨーガや中国仙道房中術、医心方、に関する本やフロイトとフロイトの異端の弟子であるライヒの諸著作を読み漁っていた時期がある。
  1970年代のことだが、オウム真理教の教祖の麻原の出した本を渋谷の本屋で手にした時のことを鮮明に覚えている。いわゆる「空中浮遊」と称する写真が本のカバーになっていた。結跏趺坐して髪が上のほうへなびいていた。ふつうにみれば結跏趺坐して1mほどの台の上から飛び降りるところを写真に撮ればあのようなものになる。ああ、インチキだ、この程度のトリック写真でだまされる奴が何人いるのだろうとあきれてページをめくっただけでこの本は買わなかった。だが、実際にだまされた人はたくさん出た、それもまじめな理系大学生に多く出た。熱心な女信者たちは競って教祖に身を投げ出した。信者たちは教祖が指示するままに麻原彰晃の著作しか読まないようになっていった。こうして自己洗脳のサイクルが始まった。教祖の予言(ハルマゲドン)を実現するために、信者たちは富士山麓の上九一色村に大きな教団施設をつくって共同生活をはじめ、人殺しやサリンの製造に疑問をもたずに地下鉄サリン事件まで突き進むのである。オウム真理教の信者たちはブレーキのない暴走車のようだった。

  人はさまざまな価値観を若い時にインプットしたほうがいい。様々な価値観や生き方、生活を知るにはたくさんの人の話を聞くとか、さまざまな人が書いた本を読むしかない。そういう過程で、健全な思想的免疫システムが出来上がるのだろう。

 国家が一つの価値観のもとに思想統制をしたり、異論を排除するには警察権力を利用するのが手っ取り早いことは戦前・戦中の特別高等警察(いわゆる「特高」)や憲兵、そして治安維持法の果たした役割を見ればわかる。あらゆる出版物が検閲を受け、報道の自由はなくなる。コンピュータとネットワークはまもなく社会の隅々までいきわたり、すべてをその中に取り込んでしまう。そして人工知能が監視装置の頭脳の役割を果たす。この三十年間の発達をみれば、その性能は指数関数的に改善されて、人間の想像力の限界を超えてしまっている。人工知能を生み出した人類には、近未来に何が起きるかまったくわからないのである。
  これから起きることは戦前・戦中の比ではない、監視社会を招来してはならぬ。



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  『幕末明治 女百話』には幕末明治の庶民の生活の一場面や風俗を女の目からとらえた話説が満載である。日本人が江戸の町で何を育んできたかいまではスッカリ失われてしまった。江戸情緒がよくわかる。「明示は遠くなりにけり、鴎外虚子もいまはなく…」、そう慨嘆したのは誰だったか。とにかく幕末明治はとっても興味深い、ぜひ暇つぶしに読んでみてほしい。
幕末明治 女百話 (上) (岩波文庫)

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