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#3513 『転生したらスライムだった件①』 Feb, 28, 2017 [本を読む]

<更新情報>
3/2朝8時半 市倉先生の思い出追記


 なんともへんてこりんなタイトルである。主人公の三上悟は37歳独身、大手ゼネコンに努めている。包丁をもって走ってくる人がいたので、とっさに後輩の恋人をかばって替わりに刺されて死ぬ。そしてスライムに転生するというお話。あのどろどろした粘着性のある液状のスライムである。
 転生した世界の様子が少しずつ明らかになってくる。魔術で「無間牢獄」に閉じ込められた龍を捕食することで、その能力を取り込むことになる。スライムは強い者を捕食することでさまざまな能力を獲得し、強大な能力をもつようになり、彼の周りに人々が集まり町をつくりはじめる。

 捕食による被捕食者の能力獲得は、よく考えたら人間社会で日常的に起きていることだ。人と議論したり、指導を受けたりすると、その人の考え方や指導に影響される。議論することで相手の思考パタンを読み取り、相手の思考パタンである程度考えることができる。
 そう考えると、商学部会計学科の学生だったわたしが、哲学者の市倉宏祐教授の一般教養ゼミに参加できたことは僥倖(ギョウコウ=思いがけない幸運)だったということになる。姉の結婚式に出席するので1週間休んだそのときに原価計算ゼミの応募締め切りが過ぎてしまった。それで掲示板に張り紙のあった市倉ゼミに天啓を感じて応募条件の小論を書いて提出し、ゼミの一員に加えていただいた。大学院で経済史の泰斗増田四郎先生に教えたいただいたことも偶然というにはあまりにもうまくできていた。あのタイミングでなければかなわなかった。わずか三人の院生で1年間指導を仰いだ。
 北海道にも大学はいくつもあるが、哲学と経済史でこのお二人に匹敵する先生はいない。塾生たちにかなうことなら東京の大学へ進学しろというのは、各分野で全国トップレベルの先生が東京にいるからだ。

 スライムの場合は「捕食」は自分の体内に相手のすべてを取り込んでしまうのだが、現実の人間はごく些細(ささい)な一部を取り込めるだけである。自我硬すぎたら一部ですら取り込めないから、器の大きさや柔軟さが取り込み量を決めてしまうようだ。

 何かを教わると、指導してくれる人の知識や思考パタンや話しっぷりや挙措の微小な部分を自然に取り込んでいる。微小だと思っていたが年月をかけて案外大きなものに育っているようだ。10年(1983年ころ)ほどたってから先輩の戸塚さんと市倉先生のお宅を訪ねて似たようなことをしていることがわかりビックしりたことがある。わたしは当時輸入商社で先端的な統合システム開発をしていたのだが、先生はプロローグというプログラミング言語でパソコンを楽しんでおられた。哲学者で数学者でもあるパスカルの研究論文も何本か発表されていた。師と似たようなことをしている自分に気がついたのである。六十歳をすぎても新しいことにチャレンジできる、自分が同じ年齢になったときが楽しみだとそのときに思った。増田先生の実証研究へのこだわりも物事を分析する際に自然とそうしている自分に気がつく。
 人と接触するということは相手の一部を何らかの形で取り込むこと、あるいは排除することである。

 スライムに転生なんて荒唐無稽な話だが、「捕食」による被捕食者の能力取り込みと似たようなことが、日常生活で起きている。この本の著者の感性は意外に鋭いのかもしれぬ。

 この本は1-5巻を生徒が貸してくれた、その翌日に今度は漫画版を3冊持ってきた。
 興味がわいた方のために、本の情報を貼り付けておきます。

 本の語彙レベルや日本語表現レベルはおおよそ小学校高学年から中学生が対象と考えられる。生徒が読んでみたらという本は、読んでみることにしています。
 同じ生徒が貸してくれたSAOの19巻目は先週読みました。18巻がVRのアリスがリアルワールドで心をもった高度な人工知能搭載のロボットとして登場したのに対して、VRの世界のファンタジーとして書かれていました。わたしには18巻のほうが面白かった。きわめて近未来的な含意があったからです。
 少し大人の本も読むようにと、昨年4月に羽田で買って飛行機の中で読んだ東野圭吾『夢幻花』をあげました。プロフェッショナルがどういうものか、東野の作品はさまざまな職業を採りあげてドキッとするような現実味を感じさせてくれます。『マスカエレード・ホテル』『マスカレード・イブ』もそういう作品でした。ホテルマンと刑事の職業がどういうものか、管理職の判断がどういうものかよく描けてました。

*#3052 東野圭吾『マスカレード・ホテル』を読む  May 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-31-1

 #3093 安保法制と軍需産業と成長路線は一体のもの:東野圭吾『禁断の魔術』を読む  July 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-25-1
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*#2784 百年後のコンピュータの性能 Aug. 22, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-22

 #2779 『ソードアートオンライン 9 』:量子コンピュータ・オンラインゲームと心  Aug. 17, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-17-1

 #2804 『ソードアート・オンライン14』  Sep. 12, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-09-13

 #2882 ソードアートオンライン007 マザーズロザリオ Nov. 26, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-26

 #3051 『ソードアートオンライン・プログレッシブ』001~003を読む May 31 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-31

 #3105 『ソードアートオンライン16』:アリシゼーション・エクスプローディング Aug.16, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15-1



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#3512 数学のセンス(4):空間図形 イメージ操作 Feb. 26, 2017 [数学のセンス]

 湾中(根室湾中部漁業協同組合を略してワンチュウ)の牡蠣は癖がなくておいしいから高級レストラン用の材料にふさわしい。ところが生産量が少ないから根室の外へ出せるだけの量がない、かくして根室市民は湾中産のおいしい牡蠣を食べられる。産地でしか味わえない逸品である。フライ用のものは滅多に売っていないので生食用をフライにしてくれた。数回食べたがフライ用のもののほうがずっとおいしい。今日は湾中の牡蠣フライを肴に北の勝「搾りたて」を飲んだ。
 地元産の肴よし酒よし、ふるさと根室最高!

 数学のセンスはこれこれだと定義して、そこから演繹的に展開するのはとても難しそうなので、具体例を取り上げてさまざまな角度から「数学のセンス」に迫ってみたいと思い、3回にわたって帰納的分析を試みています。
 今回は中2の生徒に先週やらせた中3の空間図形の問題を例に採りあげて、空間図形に関する数学のセンスの一端を解説します。イメージ操作がテーマです。イメージ操作が自在にできれば空間図形の問題が容易に解けるようになることは同意いただけるのではないでしょうか。空間図形問題を解くときにイメージ操作が出来れば問題を単純化して正確にとくことができますから、何らかの数学的センスがイメージ操作に含まれていると考えていいのでしょう。
 では問題文を紹介します。数学が嫌いな生徒さんや、学生時代嫌いだった人も辛抱してお読みください、だんだん楽しくなれば幸いです。

-------------------------------------------------
問題5:1辺が6cmの立方体ABCD-EFGHの辺BF、DHをそれぞれ1:2に分ける点をP,Qとし、辺CGを2:1に分ける点をRとする。次の問に答えなさい。
(1)点A、P、R、Qを結んでできる四角形APQRの名称を答えなさい。
(2)四角形APQRの面積を求めなさい。
(3)立体ABP-DCRQの体積を求めなさい。
  『シリウス21 数学 Vol.3』p.207
-------------------------------------------------

 問題には立方体の図が描いてあります。ここでは図を提示できないので、各自描いてみてください。問題文を丁寧に読み精確に図を描くことができれば問題を精確に理解し単純化することができます。は簡単になります。複雑な問題を簡単な問題に還元していくという操作自体が数学的センスであるとわたしは考えています。
 生徒は(1)を四辺が同じだから正方形であると判断して次の問題にかかりました。(2)の計算が終わったところで、質問をします。どのように考えたらよいのか、ポイントごとに道筋を明らかにしていきます。

「三平方の定理から判断して四辺が等しいと考えたところまではよかった、四辺の等しい四角形には何があるかね?」

 そこで気がつきました。菱形です、正方形は菱形で対角線が等しいグループです。思い込んでしまったのでしょう。先入見が生じるとそれを脳から消すのはなかなか困難です。座禅やヨガの瞑想でトレーニングすることはできます。集中と弛緩(意識の分散)を交互にトレーニングしてみたらいい。少し楽になる程度ではありますが・・・、鉛筆を左手でもってみるのもいい。大人は少しアルコールをいただくのもいい。

「四角形の片方の頂点を、点Aに固定して、辺CG上にもう片方の頂点Rを下へ向かって移動していったら、菱形はどのように変形していく?」

 ピンと来ないようです。

「RがGの位置に来たときに対角線ARがいくつになるか計算してみたら?」

 PとQはそれぞれBP=DQの関係を維持しながら下に降りていくので距離が変わりません。立方体の底面の対角線と同じです。ところが対角線ARは伸びていきます。スタート地点のR=Cのときは、正方形の1辺が6cmですから、「√6^2+6^2=6√2」ですが、R=Gのときは立方体の対角線となるので、「√6^2+6^2+6^2=6√3」です。こういうことが頭の中で動画イメージで切断面を動かしていけるということと、始点と終点の距離が暗算で瞬時に計算できることは強力な武器になりますわたしはイメージ処理と計算での確認を同時にやっています、よく考えたら並列処理です。無意識にやっていますから勝手に連動するようです。イメージ操作は問題攻略の強力なアイテムではありますが、センスとはすこし違う気がします。数学的センスの全体像が間で見えてきませんが、強力なアイテム(武器)優れたセンスがあれば鬼に金棒と言えそうです。
 三平方の定理を習い立てで、口頭で説明しただけでこれが呑み込める生徒は根室の市街化地域の中学校では、学年トップクラスの学力があると判断してよいでしょう。
 この生徒は理解できたようです。始点と終点がわかれば途中はその間を動いていると考えたらよいのですから、変化する量を扱うときは抑えるべきポイントは始点と終点です。ここまでわかったら、(2)の面積計算はすっとできました。
 (3)はノーヒントでやりきりました。Rを含む平面で立方体を水平にカットしたら、(左右の側面を底面とすると)底面が上と下で対称になることに気がついたのです。これにはちょっと驚きでした。上面と下面の形が対称になっているなら、体積はRを含む水平面でカットした体積の半分です。中2の生徒ですから、この手の問題は初見でしたから、アッパレです。9回裏の逆転ホームラン、センスのよさを褒めてやりました。

 空間図形の切断面は立方体が基本で、そこから直方体、円柱、直方体以外の角柱、正四面体、角錐、円錐と拡張していけばよいのですが、中学校で出てくる切断面は立方体とそれ以外の角柱、正四面体、角錐の四種類のみ。
(切断の問題ではありませんが、複雑な形状の空間図形が過去15年間で一度だけ道立高校で出題されたことがあります。)

 立方体を基本に角度を変えて切断面の変化をイメージできるようにしておけばよい。イメージできなければ、大根を立方体に切って、スライスしていけば変化がよくわかります。それを脳に刻み込めば、図を見ただけで切断面がどのような形状になるのかイメージできるようになるでしょう。動画イメージで形状の変化を追えるようになります。女生徒はこれがなかなかできません。脳の性差に関係があるのでしょう。
 道立高校入試問題は最後の問題が空間図形ですから、95%の得点を狙うには、空間図形の攻略が必須です。高校生になってから、空間ベクトル(数B)で空間図形問題がまたでてきます中3の空間図形問題が苦手だと、空間ベクトルはさらに苦手の度が進みますだから中学生の皆さんは空間図形の章をしっかり学んでおきましょう。入試の過去問をやって、最後の問題は難問だし配点も大きくないからとパスしている生徒は高校2年生になってからツケが回ってきます。勉強はやるべきときにしっかりやらなければいけないのです。

 まとめです。空間図形の切断というイメージ操作を自在にできれば、切断面の形状や面積計算が簡便にそして正確にできます。空間図形のイメージ操作が数学的センスに関係があることがおわかりいただけたのではないでしょうか問題文を図や表に展開することや複雑な問題を簡単な問題に還元していくという操作自体も数学的センスであるとわたしは考えています。


 次回は空間図形の切断面の問題を採りあげて、数学的なセンスを論理的思考の面から分析してみるつもりです。1辺が6cmの正四角錐の切断問題です。


〈答〉
(1)菱形
(2)12√11 cm^2
(3)72cm^3



*#3507 数学のセンス(1):数字に表れる美への感動がセンスを育てる Feb. 16, 2017 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15-1

 #3509 数学のセンス(2):「同型性」と「拡張」⇒どのように考えるのか Feb. 19, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-19

 #3511 数学のセンス(3):授業時間数減少、数量、平面図形 Feb. 24, 2017 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23

 #3512 数学のセンス(4):空間図形 イメージ操作 Feb. 26, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-26

  #3514 数学のセンス(5):空間図形と論理的思考 Mar. 2, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-03-02



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*#2734 イメージの力(4):言葉のイメージ化トレーニング July 16, 2014より抜粋
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-16

 #2597 イメージの力(3):Aとnon-A型について  Feb. 16, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-16-2

*#2595 イメージの力(2): 6タイプに分類 Feb.16, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-16

*#2593 イメージの力(1):ピアニスト&作曲家加古隆の原風景 Feb.14, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-14

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 #2749 記数法とn進数についての質問あり July 27, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-27

#3296 統一模試の数学過去問にトライ:のんびりしている根室の高校生  May 20, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-05-19-1



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#3511 数学のセンス(3):授業時間減少、数量、平面図形 Feb. 24, 2017 [数学のセンス]

<更新情報>
2月26日22時40分<まとめ>追記

 ブログ「情熱空間」の「要するに練習不足ってこと」という記事へ考えているところを投稿したので、それに加筆修正してアップします。「数字のセンス」の育て方に関する議論です。
*http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8755588.html#comments

1.〈 問題演習量が減っている 〉
 これは合格先生とZAPPERさんの問題提起です。
 わたしもそう思うので、合格先生とは角度を変えて制度変更に焦点をあててみます。
 授業で問題演習に割ける時間が足りなくなっているんです。
 40代後半の世代が小中学校のときは土曜日も4時間授業をしていました。国語と算数(数学)がそれぞれ週1時間多かったのです。時間数が減ったことで「読み・書き・そろばん(計算)」の3つの技能がそろって落ちています。それに輪をかけて、家庭学習時間や読書時間減少しています。ゲームのプラットホームもソフトも高性能化が進み中毒症状を呈する生徒が増えています。そして10年前までなかったスマホの使用も生徒たちの生活時間を確実に侵食しています。そういうわけでこの10年間で読書量が大幅に落ちました。小学4年生程度の語彙力の生徒はいまや中学生の20%を超えています。この層は社員として働くことはほとんどできそうにありません。仕事に必要な専門書を読み、必要な資格をとることができないでしょう。
  第2土曜日休みの始まったのが1992年から、ついで第4土曜日の休みが1993年からです。学校完全週休2日制(土曜日休み)の実施は2002年4月からです。減った時間をカバーするには学習指導要領記載事項を教えることに注力して問題演習を減らすことしかなかったのでしょう。それが無理だったということです。
 北海道の教員の平均的なスキルでは、学校の授業で十分な問題演習時間がとれない、それが実態です。家庭学習時間や読書時間も減少しています。どくに読書習慣のない生徒が増え続けています。語彙力不足と読解力不足で文章題の問題文が読みきれない生徒が激増した、この10年間の大きな変化です。

 それでも、昔もいまも、家庭学習でしっかり計算トレーニングを積んでいる子は20%くらいはいるのでしょう。そういう子たちは「数字のセンス」がいいし計算も速い。たくさんやるから工夫をする機会も多くなります。
 珠算塾が流行らなくなったことも基礎的計算力の育成にはダメージでした。
 「読み・書き・算盤」の基礎的技能がそろって低下していることが、数字へのセンス低下につながっているようにみえます。
 家庭学習が足りないだけでなく、学校の算数・数学授業時間数も2割程度は減っていますから、学習指導要領で規定された事項の解説を優先することになるので、必然的に問題演習時間がカットされているという現実が見えてきます。

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*投稿欄をご覧ください・・・24日夜10時半追記
 ZAPPERさんが文科省の資料が載っているURLを教えてくれたので、資料から数字を拾って中学校の数学の授業時数の推移を書き込みました。中学3年間で団塊世代は420時間、50歳代の世代は385時間、20歳代前半までの人は315時間です。授業時数は1時間が50分計算になっています。
 いま気がついたのですが、国語の授業時数がひどいことになっています。団塊世代は3年間で525時間ですが、現在の中学生はたった350時間(3割減)です。これでは名品を一斉音読する暇なんてないでしょう。

*投稿欄から・・・25日12時追記
   だんだん見えてきました。
 ゆとり教育(=授業時間量削減)は昭和55年(1980年)から始まったのですね。総授業時間数が減ると同時に、国語や算数・数学などの教科授業時間が削られて「総合的な学習等」の時間が210-335時間も新設されました。
 平成10年(1998年)の改正のあと、さらに2012年から「脱ゆとり教育」が完全実施され、「総合的学習等」の時間が削られて、各教科へ割り当てられました。

 文科省の下段URL資料の「現行」というのは2012年以降のことで、「旧」というのは1998年の改正のことを指していると理解してよいのでしょう。
 国語と数学は現在は385時間になっているということ。
 団塊世代に比べて国語は140時間、数学は35時間減っています。
 国語が3年間毎週1時間少ないのですから、現在の中学生の日本語運用能力、語彙力、読む本のレベル低下が起きて当然です。

 官僚と専門家に教育制度を審議させていると、こういうことになるのですね。
日本人の日本語能力が著しく低下していけば、日本的情緒をもたぬ日本人が増えていきます。こころの芯が削られていくような心地がします。

「弱いものイジメをしてはいけない」
「卑怯なことをしてはいけない」

 千年以上も受け継がれてきた日本的な価値観や情緒が失われていくのはぞっとします。もののあわれ、和、大和魂・・・。
正規雇用を減らし、非正規雇用を増やすことで利益を上げ、役員報酬を増やして恬として恥じない経営者が増えています。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」という商道徳も大企業経営者のこころにはなくなりつつあるのでしょう。

 惻隠の情も日本人のこころから失われつつあるようです。
イジメがはびこり、イジメを見ても敢然と身体を張ってとめる子どもがいなくなってしまった
子どもだけではない、大人がおかしい。大人が背中で教えなくてどうする?

 日本人の価値観や情緒は、古典文学や明治期の名品にたくさん書かれています。近いところでは山本周五郎や池波正太郎が江戸情緒を伝えています。幸田露伴『五重塔』も職人気質をしっかり書き込んでいます。そういう日本的情緒をたっぷり含んだ作品群を読み、その中に含まれている滋養を十分に吸収して大人になってもらいたい。
 国語の授業時間を525時間に増やすべきです。
by ebisu (2017-02-25 12:03) 
-------------------------------------------


2.〈 おおよその答えを想定して問題を解く 〉
 数学の得意な生徒は答えを予想して問題を解きますから、想定の範囲からずれると黄色信号がともるんです。それが違和感の正体。英語は別です。たくさん読み書きした結果、正しい語彙と用例がインプットされ、それが脳内にライブラリーとなって違和感を産み出します。

「なんだかヘン」

 これがないのがセンスの悪い人。どんな答えを出しても気がつかない。廊下の幅に関する問題の答えが2cmでも単位の間違いに気がつかないのは違和感が沸かないからでしょう。

 1をかけても1で割っても元のまま、1より大きい数(たとえば2)を書けたらもとより大きくなり、1より大きい数(たとえば2)で割ったら、答えは小さくなる(2で割ると半分になる)。
1より小さい数を書けたら、元の数よりも小さくなり、(0.5や1/2で)割ったら元の数よりも大きく(2倍に)なる。

 これだけでも、小数や分数の計算間違いをずいぶん減らせます。
 1より小さい数で割ったのに、
「あれ、元の数より小さくなっちゃった」
となるのでしょう。

 昨日中3の空間図形の問題(難易度Bクラス)をやってました。答えが整数なら、図形を見れば数秒でおおよそ見当がつきます。それから計算したらいい。分数で答えが出ても予想した整数に近ければ正解です。計算結果が予測値と離れていたら立式と計算過程をチェックします。これが標準手順になっているのがセンスのよい者。

 数日前の中2の生徒とのやり取りを例にとって説明します。

 「シリウス21 数学 Vol.3」207ページの平面図形と立体図形の問題をやっていました。
-----------------------------------------------
問題3:図の四角形ABCDは、1辺の長さが15cmの正方形である。辺BC上に、BE=8cmとなる点Eをとり、∠DAEの二等分線と辺CDとの交点をFとする。FからAEにおろした垂線をFHとするとき、次の線分の長さを求めなさい。
(1)AH
(2)DF
-----------------------------------------------

 (1)は△ADFと△AHFが2辺とその間の角がそれぞれ等しいので合同ですから、AH=AD=15cm。三角形の合同を利用すると問題が解けると気がつくこともセンスです。条件から、利用できる定理を考えればいい。中学数学で習った狭い範囲内でサーチすればいいだけですから、問題ごとに2-5個くらいに限定されます。
 (2)は図を描いてみたらわかりますが、DFはBEよりは少し長く、CFが7cmよりも少し短いので、答えが整数なら9だということが推測できます
 ここまでわかれば、DF=HF=xとして

  △ABE+△AEF+△AFD=15^2

とやれば、xが計算できます。三平方の定理でAEの長さを計算しておきます。あとは三角形の面積の立式ですから簡単です。
 推測値は9cmですが、ドンぴしゃり。これが20になったりしたときは、ありえない数字なのでどこかにミスがあるはず、立式と計算過程をチェックします。
 だから、途中計算はメモを残してチェックできるようにしておきます。暗算は厳禁、こうすると見直しが高速でやれます
 アッセンブリー言語でプログラミングすると見づらいので、1980年頃からストラクチャード・コーディングが普及しました。わたしが見たのはストラクチャードCOBOLでしたが、これでシステムを開発時の担当プログラマーと数年後にメンテナンスに携わるシステムエンジニアが別の人でも容易に読めるようになりました。すぐに簡易言語で高速のもの(EASYTRIEVE)が開発され、事務系のプログラミング環境は格段によくなりました。
 プログラミングに限らず、整理して後から見やすい形に書くことがいいのです

 文章題では「答えに当たりをつける」ことがとっても大切です結果が出たらあらかじめ予測した数値と突合してみる、突合すべき数字をもたないものはどこかにミスがあっても気がつきません。何よりまずいのは自分が出した答えに確信がもてないことです。
 「答えに当たりをつける」生徒は、ミスが少ない。ミスが減らせるのですから、センスがよいと言っていいのでしょう

 あと一つお付き合い願います。
-----------------------------------------------
問題4:半径が2cmの円の円周上に3点A,B,Cがあり、△ABCは正三角形である。辺BCの中点をDとし、ADの延長と円との交点をEとする。次の問に答えなさい。
(1)ABの長さを求めなさい。
(2)DEの長さを求めなさい。
(3)BDEで囲まれた面の面積を求めなさい。
-----------------------------------------------

 最初の問題は円に内接する正三角形の一辺を求める基本レベルの問題です。円の中心からBとCに補助線を引けば二等辺三角形ができます。∠BACが60度ですから、その中心角である∠BOCは120度、したがって、△BODは30度と60度の直角三角形です。これが見えるかどうかは「センス」でしょう
 この手の問題が初見で見つけられる生徒は高校生になったら、進研模試の数学偏差値が80を超えるでしょう。一度やったことがあればできて当然です。この生徒は優秀ですが初見でしたからギブアップでした。補助線さえ引けたら計算は簡単です、慣れですね。半径は2ですから、BCは2√3、暗算ででます。
 AEが直径で4cmですから、ADを引けばDEが求められます。BDEで囲まれた部分の面積は、図を描いて鳥瞰すればすぐにわかります。円の面積から内接する正三角形の面積を引いて1/6をかければいい。こういう手順がすぐに出るようになるには、問題演習量をある程度こなさないと無理です。この中2の生徒は中3の問題集を一冊やり終えつつあるところですから、不慣れなんです。なるべく答えを見ないで自力で解くように指導しています問題が解けないときはその生徒にとって最小限のヒントをあげます。この問題の場合は、

「円の問題で一番出てくるのは円周角と中心角の関係です、そのままで解けないなら、補助線を考えたらいい、特徴のある三角形が隠れています」

ヒントはこれだけ。
 いきなり答えの解説はいたしません。それだけでちゃんと最後まで解き切りました。ヒントが少なければ少ないほど達成感があります。それを味あわせるのが目的です。解くことが楽しくなります。「これを知る者はこれを好むものにしかず、これを好むものはこれを楽しむものにしかず」と言います。問題演習を通じて、問題を自力で解く楽しみを体験させます。
 円に内接する三角形の問題は数Ⅰの三角比で出てきますから、この手の問題を中学校でしっかり勉強しておくと、三角比でまごつくことがないでしょう。中学校の数学は高校の数学の布石の部分が多いのです。いい加減にすませた人は高校生になってからたまったツケを払うことになります。それでもいいのです。短期間、死に物狂いで努力して得意分野に変えてしまう生徒はいつでもいます。小数ですが。

 < まとめ >
 中学校三年間の数学の授業時間数が420⇒385時間(ゆとり時代は315時間)になり、学校の数学授業で問題演習量が足りなくなっています基礎計算能力の育成にはかなりの問題演習が必要ですから、問題演習量の不足は何らかの形で数学のセンス、とくに計算や数量関係のセンス低下をもたらしていると考えれれます
 数量に関する文章題は答えにアタリをつける生徒とそうでない生徒では正解率に大きな差異が生じると考えられます。アタリをつけた範囲からずれていたら、立式と計算過程をチェックします。その際に、チェックしやすいようにメモを書きながら計算してあると、高速で見直しができます。そういう一つ一つにこだわることも数学的なセンスを磨くことになります
 平面図形では補助線が見えるかどうかが、正解への鍵となっていることが多いので、必要な線を書き入れることができるというのも重要な数学的センスです
 正三角形の半分や、直角二等辺三角形は辺の比が既知ですから、そこに持ち込むと問題が解ける場合が多いので、そういう観点から問題を眺めることができるというのも数学的なセンスです。これらの数学的なセンスはトレーニングによって磨きをかけられます。わたしは個別指導でそういうことに配慮した指導をしています。一度に10人くらいまでなら個別指導が可能です。

 もう2題具体例で解説したいのですが、長くなったので次回へまわします。


 社会人になったときにこういう「当たりをつける」という勉強の仕方が役に立ちます。ドンぴしゃり出なくても、ストライクゾーンに入っていればほとんどの仕事はOKです。どの辺りがストライクゾーンかがわかっていれば、シミュレーションの結果がその付近ならOKなのです。

 じつはビリヤードも同じことなんです。キャロムゲームですが、撞いた後の球の配置がアバウト半径15cmくらいの想定したゾーンに入っていれば十分です。あとはそれをこなす技術をしっかりトレーニングしておけばよい。それでセミプロの腕前です。自在にそういうことができるのはトッププロ。スリークッション世界チャンピオン小林先生かアーティスティックビリヤード世界2位の町田正さんクラスです。町田さんはボークライン日本チャンピオン。3ゲームだけお付き合いいただいたことがありますが、それはそれは見事なものです。球の動きとキュー捌きが美しい。あのキュー切れは、鉄のキューで素振りを繰り返したからでしょう、類を見ません。町田さんのお父さんの方のビリヤード店に鉄のキューがありました。

<答え>
問題3:(1)15cm   (2)9cm
問題4:(1)2√3    (2)1cm   (3)2/3π-√3/2 (cm^2)

*#3507 数学のセンス(1):数字に表れる美への感動がセンスを育てる Feb. 16, 2017 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15-1

 #3509 数学のセンス(2):「同型性」と「拡張」⇒どのように考えるのか Feb. 19, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-19

 #3511 数学のセンス(3):授業時間数減少、数量、平面図形 Feb. 24, 2017 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23

 #3512 数学のセンス(4):空間図形 イメージ操作 Feb. 26, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-26


 #3514 数学のセンス(5):空間図形と論理的思考 Mar. 2, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-03-02




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#3510 学力は道徳心や郷土愛と一体であれ! Feb. 21, 2017 [さまざまな視点から教育を考える]

 2月19日に「釧路の教育を考える会」(角田憲治会長(元釧路教育長))の集まりがあった。FMくしろの教育ラジオ番組「ストップ・ザ・学力低下」のタイトル変更がメインテーマだった。今日(2月21日)が第122回目、いままでは「釧路の教育を考える会」のメンバーが交代で出演してきた。順番が回ってきてわたしも2度出演したことがある。
 2012年12月に基礎学力保障基本条例が制定されて5年目に入ったし、学力も低下傾向は脱したようにも見えるので、タイトルを変更し、市教委やJCの協力を得て、一緒にやっていこうということになって、調整を進めている。
 FB上の掲示板で番組タイトル案がいくつか示され、会議で4つの案を並べて話し合った。「気分上々!学力向上!」の案に賛成が多かったので、それを俎板に載せた。口ずさんでみて、順序を逆にした「学力向上!気分上々!」がいいだろうということになった。

 市教委とは「学力向上」でいいのだが、JCさんがやりたいテーマは「道徳心や郷土愛」なのだから、JCさんとすりあわせをするということで話が決まった。

 学力が高いということは一つの武器で、それが私的利害や悪意に利用されると害悪も大きくなる。学力は善良な心に支えられなければならない。
 基礎的学力である「読み・書き・算盤」や高度に専門的な学力は大和心に支えられてこそのものである。日本人は「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」という商道徳を世代を超えて伝えてきた。学力を上げると共に、私的利害に拘泥せず、世間とか郷土という公的なものへ貢献するという心も育て、鍛えるべきなのだろう。
 そうして考えると、学力は道徳心や郷土愛とセットではじめて十全なものになると考えられるのである。このことは釧路市基礎学力保障条例にある「教育目標」そのもの。

 ○ふるさと釧路を愛し、活力あるまちに奉仕する人づくり
 ○伝統と文化を大切にし、主体的に学びつづける人づくり
 
 学力向上に心の充実が視野に入ってくるというのはまことに喜ばしい、四月からの新番組に期待したい。

 FMねむろは10年ほど前には教育に関する番組をやっていたことがある。
 釧路に比べて根室市議会は教育に関する関心や議論に乏しい、しかし、教育と道徳は地域繁栄の礎(いしずえ)である。

 根室人は現状打破する意思ありや?


*「第3763回 学力向上!気分上々!」 釧路市議会議長月田さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/51833813.html

*基礎学力保障条例
https://www.city.kushiro.lg.jp/common/000043831.pdf

*「次のステージへ(地域を愛し、国を愛す)」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8755210.html


〈 余談:ナショナリズムとパトリオティズム 〉2月22日夜追記
 弊ブログ#1030で採りあげたので、そちらをごらんください。
*#1030 nationalism とpatriotism :遠藤利國訳・幸徳秋水『帝国主義』May 17, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-17

*#1029 『現代語訳 帝国主義』幸徳秋水著・遠藤利國訳 May 16, 2010
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-16




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#3509 数学のセンス(2):「同型性」と「拡張」⇒どのように考えるのか Feb. 19, 2017 [数学のセンス]

 「#3507 数学のセンス(1)」で、美意識感動する心センスを磨くと書きました。11-19までの数の平方数に隠された神秘的ともいえる「数字の美しい配列と構造」を例にとって説明しました。
 2回目である今回は成績上位の中2の生徒へ実際にやっている指導上の留意点を書きます。

 定期テストと学力テストすべてで学年トップを獲り続けているこの生徒は中3の数学の全部の章をやり終え、総合問題をやっています。ちょうど1年先取り学習していますが、難関大学受験を予定しているからで、高校2年の夏休みころまでに数Ⅲ終了の戦略の下に学習を進めているからです。首都圏の進学校とほぼ同等の進捗度合いです。
  英語は5月ころから9ヶ月をかけて高校3年間の教科書を消化します。並行して中級レベルの文法問題集を1冊やります。高校1年になったらテクストは(2次試験対策をかねて)英字新聞記事を読み漁ります。
  一番大事と考えているのは国語、これは読書量がモノを言うので、生徒の読書力の成長に合わせて良質と考える本を選んで音読指導を3年間続けています。10冊は読んだかな。弊ブログのどこかで読み終えたリストとこれからの予定を載せています。現在進行形なのが斉藤隆著『語彙力こそが教養である』、そして次回は福沢諭吉著『福翁自伝』、世阿弥著・林望現代語訳『すらすら読める風姿花伝』です。
○音読リストを載せた弊ブログ「#3405 原典のススメ:愛と寛容性概念の混同(中2学力テストから) Sep. 2, 2016 」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01

 数学と英語を教えながら、「読み・書き・そろばん(計算)」という基礎技能の充実を図り、受験勉強を超えて、学問の普遍的な方法を伝えています。

 「憶えるよりも考える」
 「迷ったときは原理原則に還る」
 「複雑な問題に遭遇したら、必要なだけの小部分に分割する」
⇒デカルト『方法序説』より

 この三項目は名刺の裏に印刷してあり、塾生に机の周りのどこかに張っておけと指示しています。「憶えるよりも考える」と言ってもどのように考えたらよいのかを具体的な問題の中で説明しなければ、伝わりません。そのためにこれから解説する四項目に留意しながら指導をしていますどのように考えたらよいのかという試みがこれら四項目にこめられています

 さて、前置きはこれくらいにして、ここから本題です。成績上位生対象の授業は自力で予習させて足りないところだけを解説、演習中心の授業を展開し、4つの点に留意して質問に答えながら指導しています。

(1)同型性について
 「①距離・②時間・③速さ」、「①食塩・②食塩水・③濃度」、「①合計・②人数・③平均」の三種類の文章題はじつは計算式がすべて同型です。各項目を記号として眺めると計算式は同じになります。仮に①をp、②をq、③をrとすると、これらの項目には次の関係式が成り立ちます。

 p=qr
  q=p/r
  r=p/q

  pとqは加法が成り立ちますがrは内包量ですので加法が成り立ちません。この三種類の問題は同じ表に問題文の条件を入力することで簡単に式が作れます。線分図やポンチ絵と併用してもらうと威力が倍増します。

     a   b   c
距離D   
時間T   
速度V   
   a   b   c
  p   
  q   
  r   


 異質に見える問題の背景に同型性があることがわかれば、憶えるべき公式は一つですみます。少ない公式で種類の異なる問題を解く、こういうトレーニングを積み重ねることで、異質な分野に同型性があることを発見できるようになります。分野が違っても共通の操作はあちこちに出てくるので、自分でリンクを張るようになります。
 わたしはユークリッドの『原論』とマルクス『資本論』に体系的同型性を見つけました。デカルトも『方法序説』で「科学の方法四つの規則」で同じことを述べています。あとで抜粋引用します。


(2)概念、フィールド、公式などの拡張
 数学ではしばしばさまざまな概念の「拡張」が行われます。
 数に関しては自然数の加法・減法と乗除算が定義されます。次いで、自然数から分数へと数の概念の拡張が行われます。これらは小学生段階ですが、中学生になると整数概念が定義され自然数は「正の整数」、ゼロ、「負の整数」が定義されます。このように数の概念の拡張が行われます。中3になると無理数が定義され、数は有理数の範囲から実数へと拡張されます。高校2年で虚数が導入され、数の概念は複素数へと拡大します。それだけではありません、数列が出てくると、有限数列から無限数列へと対象が拡張されます。
 座標をみるとxyで定義された平面座標(デカルト平面)が現れ、ついでもう一つ座標軸が追加されて空間座標が定義されます。数Bのベクトルではベクトル平面とベクトル空間が、数Ⅲでは複素平面と極形式が定義されます。このように座標平面も拡張が次々に行われます。
 三角比(数Ⅰ)は三角関数(数Ⅱ)へ拡張されます。
 1次関数⇒2次関数⇒n次関数への拡張、そして系列の異なる指数関数、対数関数へと拡張されていきます。無理関数や分数関数へも拡張がなされ、逆関数が定義されます。
 n次関数の微分と積分が定義され、数Ⅲでは三角関数や指数関数、対数関数へと拡張されます。
 拡張されるたびにそれぞれで類似の操作をトレーニングすることになります。
 たとえば、三角形の面積は四つの式で書き表せますが、それぞれが関連しています。

 ○ 1/2×底辺×高さ
 ○ 1/2×b×c×sinA
 ○ √s(s-a)(s-b)(s-c)
  ○ 1/2×|a vector|×|b vector|×sinθ
 ○ 1/2×|axby-bxay

  三角比を習えばそれを利用した三角形の面積の公式が出てきます。基本はもちろん一番目に挙げたものですが、三角比を利用して定義します。
 平面上、三角比、ヘロンの公式(三角比からの派生公式)、ベクトル、平面座標(ベクトルからの派生公式)。三角形の面積だけでもこれだけ奥行きがあります。数学の世界が広がっていくのは、楽しいことです。

 中高の数学は概念の拡張が次々になされていきますから、概念が拡張されると何が起きるのか、類似の操作や公式の定義のし直しがなされることが体験的に理解できていきます。
 「拡張」を意識して数学を学ぶと、森全体が見わたせるので自分がいま何をやっているのかがよくわかります。こういう過程を通して概念の拡張やフィールドが変わることによる数学的操作の焼き直しを学ぶことで数学への理解が深いものになります。
 中高で学ぶ数学の構造はあんがいシンプルなものの繰り返しなのです。

 たとえば、三平方の定理(中3)のところで、フェルマーの最終定理を解説します。そこで生徒と遊びます。

  X^n+y^n=z^n

 n=2のときが三平方の定理です。xyzが整数になる組み合わせは無限にあります。生徒たちにやらせてみたらいい。4例を探させてみたらいかが?
 三平方の定理もこういう一般式の「n=2」の特殊なケースだということがわかります。「一般⇔特殊⇔個別という整理も自然にできるようになります。
 n=2のときは無数に自然数の組み合わせがありますが、ではn=3,4,5・・・のときに自然数の解はあるのかという疑問がわくのは自然な流れです。これも拡張のひとつの例でしょう。
 nが3以上だと(x,y,z)の自然数の解は存在しないというのがフェルマーの最終定理ですが、1995年2月13日にようやく証明されました。世界中の数学者がチャレンジして360年かかってシンプルなフェルマーの最終定理が証明されたのです。アンドリュー・ワイルズが成し遂げました。

 弊ブログ#3437でフェルマーの最終定理の証明と経済学の関連について言及しています。

*#3436 フェルマーの最終定理と経済学(序):数遊び  Oct. 13, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12-1

 #3437 フェルマーの最終定理と経済学(1):純粋科学と経験科学 Oct. 15, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-10-15

 #3438 フェルマーの最終定理と経済学(2):不完全性定理と経済学 Oct. 18, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-10-17


 #3439 フェルマーの最終定理と経済学(3):整理作業-1 Oct. 19, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-10-18

 マルクスも『資本論』でフィールド(場)の拡張という体系構成にとって不可欠の操作をしています。「資本論と21世紀の経済学」というカテゴリーにまとめてあります。経済学に興味のある方はそちらを参照ください。

(3)必要なだけの小部分に分解せよ
 同型性とさまざまな数学的な概念の拡張について思うところを述べました。デカルト『方法序説』から、科学の方法四つの規則について引用しておきたいと思います。高校生や大学生のみなさんは何度も読んでください。
 受験には複合問題が出題されます、2分野は標準問題、3分野の複合問題は難易度が高くなりますが、2分野は2つに3分野の複合問題は3つに分解するとシンプルな問題になります。
==========================
<デカルト 科学の四つの規則>まだ若かった頃(ラ・フェーレシュ学院時代)、哲学の諸部門のうちでは論理学を、数学のうちでは幾何学者の解析と代数を、少し熱心に学んだ。この三つの技術ないし学問は、わたしの計画にきっと何か力を与えてくれると思われたのだ。しかし、それらを検討して次のことに気がついた。ます論理学は、その三段論法も他の大部分の教則も、道のことを学ぶのに役立つのではなく、むしろ、既知のことを他人に説明したり、そればかりか、ルルスの術のように、知らないことを何の判断も加えず語るのに役立つだけだ。実際、論理学は、いかにも真実で有益なたくさんの規則を含んではいるが、なかには有害だったり、余計だったりするものが多くまじっていて、それらを選り分けるのは、まだ、下削りもしていない大理石の塊からダイアナやミネルヴァの像を彫り出すのと同じくらい難しい。次に古代人の解析と現代人の代数は、両者とも、ひどく抽象的で何の役にも立たないことだけに用いられている。そのうえ解析はつねに図形の考に縛りつけられているので、知性を働かせると、想像力をひどく疲れさせてしまう。そして代数では、ある種の規則とある種の記号にやたらとらわれてきたので、精神を培う学問どころか、かえって、精神を混乱に陥れる、錯雑で不明瞭な術になってしまった。以上の理由でわたしは、この三つの学問(代数学・幾何学・論理学)の長所を含みながら、その欠点を免れている何か他の方法を探究しなければと考えた。法律の数がやたらに多いと、しばしば悪徳に口実を与えるので、国家は、ごくわずかの法律が遵守されるときのほうがずっとよく統治される。同じように、論理学を構成しているおびただしい規則の代わりに、一度たりともそれから外れまいという、堅い不変の決心をするなら、次の四つの規則で十分だと信じた 第一は、わたしが明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れないことだった。言い換えれば、注意ぶかく速断と偏見を避けること、そして疑いをさしはさむ余地のまったくないほど明晰かつ判明に精神に現れるもの以外は、なにもわたしの判断の中に含めないこと。 第二は、わたしが検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること。 第三に、わたしの思考を順序に従って導くこと。そこでは、もっとも単純でもっとも認識しやすいものから始めて、少しずつ、階段を昇るようにして、もっとも複雑なものの認識まで昇っていき、自然のままでは互いに前後の順序がつかないものの間にさえも順序を想定して進むこと。
 そして最後は、すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、なにも見落とさなかったと確信すること。
 きわめて単純で容易な、推論の長い連鎖は、幾何学者たちがつねづね用いてどんなに難しい証明も完成する。それはわたしたちに次のことを思い描く機会をあたえてくれた。人間が認識しうるすべてのことがらは、同じやり方でつながり合っている、真でないいかなるものも真として受け入れることなく、一つのことから他のことを演繹するのに必要な順序をつねに守りさえすれば、どんなに遠く離れたものにも結局は到達できるし、どんなにはなれたものでも発見できる、と。それに、どれから始めるべきかを探すのに、わたしはたいして苦労しなかった。もっとも単純で、もっとも認識しやすいものから始めるべきだとすでに知っていたからだ。そしてそれまで学問で真理を探究してきたすべての人々のうちで、何らかの証明(つまり、いくつかの確実で明証的な論拠)を見出したのは数学者だけであったことを考えて、わたしはこれらの数学者が検討したのと同じ問題から始めるべきだと少しも疑わなかった
  デカルト『方法序説』 p.27(ワイド版岩波文庫180 *重要な語と文章は、要点を見やすくするため四角い枠で囲むかアンダーラインを引いた。


==========================

(4)単純なものから複雑なものへ=順序の想定
 より単純なものから複雑なものへという順序を想定することは知識の整理にとって大切なことです。科学の方法四つの規則の第三がそうした方法(=上向法)を示唆しています。学問においてはもっとも大事なことなのですが、これはまた別の機会に書きます。
 「資本論と21世紀の経済学」というカテゴリーが弊ブログにありますが、経済学に関してはそこに書き溜めてあります。

 生徒から質問のある都度、こうした4つの観点から具体的に繰り返し説明しています。数学を通じて、普遍的な学問のやり方を教えているつもりです。
 数学は他のさまざまな学問に深く関わっています。成績上位生は数学の勉強を通じて学問全般に視野を広げる努力をしてください。


〈 余談 〉
 #3507投稿欄から(加筆しています)
==================
40年ほど前に、東京のF学院渋谷進学教室で教えていたときのことなのですが、四谷大塚で全国2位の生徒が入塾してきたことがありました。Y武先生が担当したのですが、問題消化速度が大きくて教え切れないので変わってほしいと言われて、交代したことがあります。
その生徒の母親からの「要望で400ページ弱の文章題専用問題集を使いました。
なるほど速い、105分の授業で20ページほどやれるんです。質問が時々出るので、どういう問題で質問がでるか2回観察しました。新傾向問題で急ブレーキがかかります。他の問題はほんとうに高速でした。わたしとほとんど変わらぬ速度で解いていました。
要するに、パターンで解ける問題がものすごく速かったのです。それが通用しない新傾向問題のところで3題に2題の割合でブレーキがかかり質問が出ました。
2ヶ月ほどで1冊やりきりました。あんなに高速でさまざまなパターン解法を駆使できる生徒はなかなかいません。さすが全国2位です。

わたしの感想は、「頭はあまりよい方ではない」というものでした。パターン練習のやりすぎで、頭が固くなってしまっているように見えました、もったいない。
四谷大塚の模試で全国ナンバー2でしたから、東大へは入学できたでしょう。
珠算実務検定試験1級の問題を制限時間の半分の5分でやるのと変わりません。そういう意味で受験の芸に秀でていました。

速度が大きいことは実社会でも武器になりますが、それだけのことです。標準レベルの難易度の仕事をさせたら抜群に生産性が高いでしょう。しかし大事なのはいままで出遭ったことのない複合分野の問題を解決できるかどうかということです。

小2の息子さんが、二桁の自然数の2乗の計算を工夫して答えを出す、つまりは「遊び」、どれほど楽しく遊んだかが計算の仕組みを理解させ、数学のセンスや創造性を育みます。
道草が必要なんです。直線的なのは考えもので、原野をゆったり流れる川のように蛇行しながら流れていけばいいのです。
by ebisu (2017-02-17 22:53) 
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*#3507 数学のセンス(1):数字に表れる美への感動がセンスを育てる Feb. 16, 2017 
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 #3509 数学のセンス(2):「同型性」と「拡張」⇒どのように考えるのか Feb. 19, 2017
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 #3511 数学のセンス(3):授業時間数減少、数量、平面図形 Feb. 24, 2017 
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 #3512 数学のセンス(4):空間図形 イメージ操作 Feb. 26, 2017
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〈 音読リスト:#3405より 〉
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< 国語力アップのための音読トレーニング >
 中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』
○『声に出して読みたい日本語②』
○『坊ちゃん』夏目漱石
○『羅生門』芥川龍之介
○『走れメロス』太宰治
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
 『五重塔』幸田露伴
 『山月記』中島敦
●『読書力』斉藤隆
●『国家の品格』藤原正彦
 『日本人は何を考えてきたのか』斉藤隆
 『語彙力こそが教養である』斉藤隆 ⇒現在音読中、2017年3月中旬読了予定

 これから読むものをどうしようかいま考えている。
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳
 『福翁自伝』福沢諭吉
 『善の研究』西田幾多郎
 『古寺巡礼』和辻哲郎
 『風土』和辻哲郎
 『司馬遼太郎対話選集2 日本語の本質』文春文庫
 『伊勢物語』

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で十数年使用した実績がある。音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが2年前から希望者のみに限定している。)
・・・
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「#3405 原典のススメ:愛と寛容性概念の混同(中2学力テストから) Sep. 2, 2016 」
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*#3507 数学のセンス(1):数字に表れる美への感動がセンスを育てる Feb. 16, 2017 
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 #3509 数学のセンス(2):「同型性」と「拡張」⇒どのように考えるのか Feb. 19, 2017
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 #3511 数学のセンス(3):授業時間数減少、数量、平面図形 Feb. 24, 2017 
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 #3512 数学のセンス(4):空間図形 イメージ操作 Feb. 26, 2017
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 #3514 数学のセンス(5):空間図形と論理的思考 Mar. 2, 2017
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#3508 中学数学授業の進捗管理について Feb. 18, 2017 [データに基づく教育論議]

 中2の生徒に訊いてみた。
T:「第6章確率」に入ったか?
S:まだ「5章三角形と四角形」をやってます。確率は期末テストの範囲に入らないと説明がありました。

 C中学校である。B中学校の生徒にも同じ質問をしたが、まだ確率の章に入っていなかった。A中学校は不明である。

 最後の章である「第6章確率」は2月になって時間数が残り少なくなり、すっ飛ばしされるのが常態にみえる。4月になってからやった学校もあった。
 高校生になってから副作用が出る。高1の数Aで確率を学ぶが、ほとんどの生徒が苦手の分野である。中学校で時間数が足りなくなり、数時間でやったことにしてしまい、理解が浅くわけがわからぬまま通過してしまうからだろう。
 本来なら、2月中旬には教科書の全部の章をやり終わって、復習にはいっているはず。復習せずに新学期に突入したら、四月のお迎えテストの平均点がいいはずがない。

 できれば発展学習でパーミュテーション記号のnPrやコンビネーション記号のnCrを利用した計算法も説明して理解を深めてもらいたい。樹形図と記号による計算を並べて見せてあげたら、理解はずっと深いものになる。

 民間企業で仕事のスケジュールを、続けて2年間守れなければ、賞与の査定は下がるし、昇給にも差し障る。なにより客が離れていくので、そういう社員には叱責が飛ぶし、何度言ってもスケジュール管理ができなければクビにせざるをえない。会社の存続が危うくなるからである。
 学校というのは一般社会とはまったく違う基準と常識で動いているようだ。学校には教頭職と校長職の管理職がいるが、実情から推察すると授業の進捗管理はなかなか難しいようだ。民間企業人から見ると不思議だ。

 最近、授業参観があったようだが、あいかわらず保護者はほとんど来ていないそうだ。子どもが中学生のときに東京郊外の学校で授業参観したが1クラスに20人以上保護者がいた。入りきれなくて廊下から眺めている人もいた。根室は1クラス数人だけだそうだ。異常に見える根室の保護者たちの教育への関心の低さも、こういうルーズな授業進捗管理がはびこる遠因に挙げられる。学校の授業がどういう状態でもクレームを言う保護者はほとんどいない。もちろん塾の先生も。
 自分のふるさと、そして自分の子どもが通う学校をよくしようと思ったら、授業参観はすべきだし、参観のあとでなされる保護者会でも忌憚のない発言をした方がよい。

 授業があまりに騒がしいのでびっくりする保護者がすくなくない。学級崩壊状態を目撃して心配している保護者がいても、学校にはものを言わないケースが多い。揉め事は誰でも嫌なものだし、何か言うことで自分の子どもが不利益を受けることも嫌だ。世のため人のためと思っても、なかなか言いにくいというのが実情ではないだろうか。
 わたしもこのごろはあまりこうしたことを書かなくなっています。何度も何度も書いたので、あきれています。道教委は授業の進捗管理がルーズなことが学力を下げている実情を心配して全道の中学校へ通達を出したことがありますが、笛吹けど根室市教委は踊らず。やはり嫌なんですね、学校の先生たちへモノを言うのが。
 それぞれの人が、自分の仕事をきちんとやれば、子どもたちの学力は大きく上昇します。

 中3なら学力テスト平均点が120点以下(五科目300点満点)、中1と中2なら230点以下(五科目500点満点)の学年には学級崩壊状態があると判断しておおよそ当たっている。時々先生の説明が聞こえなくなるだけで、3年生なら平均点が20-30点下がり、1・2年生なら50点以上も下がる。
 釧路の14中学校で学力テスト総合B(10月実施)で五科目平均点が120点以下なのは鳥取西中学校の116.8点のみ。13位の共栄中学校は127点です。

 根室の市街化地域の3校は、
        総合A 総合B 総合C 模試1 模試2
 A中学校 127.6 130.2点
 B中学校 118.2 129.8 116.0
 C中学校 112   119  109  108  120点

 3校とも釧路の中学校の底辺レベルの平均点です。
 教育こそが町づくりの礎(いしずえ)、ふるさとの町をよくするには教育からではありませんか?

*学力テスト総合B 釧路の中学校の五科目平均点
http://www.kitamon.com/cpek/datas/1609a.shtml


〈 余談:英語授業の進捗管理 〉 2月20日夜10時10分追記
 中2の英語教科書の中の「Program 8」を飛ばした先生がいる。理由は新たな文法事項が出てこないからという。冬休みの宿題にして生徒の自主学習に任せて飛ばした。そして最後の章の「Program 12」はやるつもりがないようだ。もちろん年度末テスト範囲にも入っていない。p116~119まで「Extnsive Reading」があるが、これもやるつもりがない。
 その学校では1年生も「Program 10」までが学年末テスト範囲である。「program 11」はテストが終わってからやるつもりだろうか?
  「Program 8」を飛ばしたことを学校管理職が知らないのは現在の仕組み上仕方がないのでしょうが、学年末テストの範囲表はすでに生徒に配られているので、それを利用して授業の進捗チェックをするのが当たり前のはずですが、外側から見る限りなされていません。なぜやらないのでしょう?学校管理職と教科担当の先生たちが仲良く楽しくやるためですか?
 社会科のある先生のようにちゃんとしている教科もあることは書いておきます。

 2年前の11月に釧路で開かれた教育に関する全国シンポジウムの際に西日本から参加した先生たちと酒を飲みながら歓談する機会があった。何人かに聞いたが、1月末で教科書を全部終了して2月は1年間の既習事項の復習に充てるのがスタンダードだと言っていた。
 どうやら根室は、年度末テストの前までに教科書は全部やらずともかまわないと理解している先生が多いようだ。教頭も校長もチェックしている気配がない。だから毎年同じことが繰り返される。
 考え違いをしているのは担当教員だけではなく、学校管理職もそういう人が多いのだろうか?
 根室スタンダードは日本のスタンダードとかけ離れている、学力向上のためにはこういうところから改める必要がある。


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<進捗状況> 2/26追記
 そのごだいぶ急いだようで、数学は教科書を終了する学年が増えました。英語はプログラム8をはしょった学年がありました。一部の学校学年を除いて、付録のリーダーはやっていません。ちゃんとやるべきです。それでなくても教科書の分量が少なく長文読解問題が苦手の生徒が多いのですから。


#3507 数学のセンス(1):数字に表れる美への感動がセンスを育てる Feb. 16, 2017 [数学のセンス]

 今日(2/16)から所得税確定申告の受付開始です。ebisuは9時に根室税務署へ申告書類を提出に行ってきました。わたしの前に二人並んでいました。これから申告書作成コーナーで申告書を作成する人でした。部屋は申告書を作成している人でごった返していました。わたしの番が来て、作成した書類を手渡すと、それを見ずに「何かわからないことはありませんか?」と質問されました。「ありません」と答えると、それから2度書類をチェックして、マイナンバーと免許証で本人確認後、控えに受付済みの判を押して返してくれました。とっても忙しそうでした。

 さて、ここからが本題。
 ブログ「情熱空間」が「数字のセンス」を採りあげていたので、そこに書かれていたURLをクリックすると、「「基本」と「数字のセンス」」と題した小論が画面に出てくる。釧路の教育を考える会の「合格先生」が書いているブログである。
 釧路の教育を考える会にはさまざまな職業の人たちが集(つど)っていて、その中には学習塾関係者も数名いる。釧路と根室の教育改革をしなければ地域の未来が危ういということで意見が一致しているだけで、指導論についてはそれぞれ一家言をもっているから、テーマを決めてFBの専用掲示板で議論をすることがある。相手の意見に耳を傾け理解して、自分の意見と比較して議論をする、議論をする中でいままで気がつかなかったことに気がつく、意見が異なるからこそ議論は楽しいもの。
 「基本」と「数字のセンス」に興味のある方はURLをクリックしてご覧いただきたい。
 ブログ「情熱空間の記事を」引用した後で、投稿したコメントに加筆して並べておく。それぞれの意見をじっくりみて、お考えいただけたら幸いです。

*http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8735737.html#comments
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2017年02月12日

これが実に弱い(割合・単位換算・時間の計算)

3分の2って、約66.7%、約0.67倍だね。
同じく3分の1は、約33.3%、約0.33倍のこと。
2割5分増しの割増賃金は、125%で1.25倍のこと。

こうした日常的に使う、小数・分数の感覚。
以前よりはだいぶましになってきましたが、こうした感覚がうんとこさ弱いのが、我が釧根の子ども達です。
弱い、本当に弱い。
(悲しいかな、大人も同様…。涙)
その点、今も昔も同様です。

くしろ子ども未来塾で「算数検定」を担当させていただいて実感するのですが、かなり改善されてきてはいると思うものの、それでもまだまだ…。

「割合」、これが実に実に弱いんですね。
つまりは、小数・分数の概念、それがまだまだ。
同様に「単位換算」も、まだまだかなり弱い。
(1m=100cm 1kg=1000g 1km=1000m 1L=10dLといったもの)
「時間」の計算も同様ですね。
(時計を見比べて、経過した時間を答える問題)

割合・単位換算・時間の計算。
抽象概念の初歩の段階ですが、この三点セットが、まだまだかなり弱い。
中学生になっても、「果汁30%」と聞いてイメージできないのならば、それってつまりけっこうな重症。
濃度(理科)や時差(社会科)の計算は、自力ではできないでしょう。

割合の感覚、単位換算の感覚、時間計算の感覚。
それらは、頭で(なんとなく)理解しただけではダメなんですよね。
それだと、その感覚は身につかない。
繰り返し、反射的にイメージできるまでトレーニングすることによって、やっと感覚が身につくんです。

ところが、それをやるように主張すると、やれ詰め込みだのなどと、例によって批判されるんですよね(苦笑)。

合格先生は「センス」と表現していますが、まったくもってその通り。
現状、良くなってきたとは言え、まだまだです。
基本の習得、つまりは量を消化させなければ、適正な感覚は身につかないですからね。

●「基本」と「数字のセンス」
http://www002.upp.so-net.ne.jp/singakukouza/jijimonndai.html#Anchor-10742

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〈 投稿欄から 〉
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3. Posted by ebisu   2017年02月15日 00:02
(前のコメントを受けて)
同じ経験をわたしもしたことがあります。スキルス胃癌で釧路の病院に入院していたときのことです。ベテランの看護師さんが、最近の若い看護師は希釈倍率の計算もできない人がいるので困ると言ってました。

ところで、「基本と数字のセンス」に34/51の約分の例が出ていました。北見では二桁の素数を使う約分を小学生にやらせていたと書いてありましたが、立派なものです。

ところで34と51の一の位の4と1を見てすぐに気がつくのは、7と9の段の九九に
 7×2=14
 7×3=21
 9×6=54
 9×9=81

この二つの数字が、九九の答えの一の位に4と1を含みます。だから、17が素数であると知らなくても、17で割れそうだとわかります。19が無理なことは見ただけですぐにわかります。
約分した後に分子分母が一桁になるものはどんなに大きな数字でも1桁の素数(2,3,5,7)で割り切れます。だから素数を暗記する必要はないのです。3桁の素数でも簡単に約分できます。)

同じことは11~19までの平方数でも言えます。末尾の一の位だけ見ていれば、どの数の平方数かわかります。必ず二つの数字がセットで出てきます。

「数字のセンス」とは素数を暗記していて約分がさっとできることではなくて、数字から規則性を見つけて上手に処理することだと思います
センスのない者はやたら暗記しないといけなくなります

脳のワーキングメモリーはそれほど大きくないようで、あまり暗記物を詰め込むと、容量不足が生じます。ワーキングメモリーには余裕があるほうがいいのです。ケアレスミスも防げます。いっぱいいっぱいだと集中している部分はいいのですが、その外側に漠然とした注意力が働かなくなります。「分散力」としか言いようがないのですが、集中力と同じくらい大事です。
(瞑想で意識の集中と分散トレーニングをすればだれでも使いこなせるようになります)
少ないルールでたくさん処理できるというのが数字のセンス、いや数学のセンスのような気がします

34/51については、もう一つやり方があります。34は偶数ですから2で割ってみます。51は3で割れるのは見ただけでわかるので3で割ります。そうすると、

34=2×17
51=3×17

素因数に簡単に分解できて、17で約分できることがわかります。この方法は案外使い勝手のよい汎用的なアプローチですから、この問題に限りません。
素数の17を暗記して小学生に約分練習させるのは結構ですが、二桁の素数は19、23、29、31、37、41、・・・97までたくさんありますが、全部練習させるのでしょうか?

わたしには二桁の素数を暗記して割り算練習をして約分を速くやるという方法は、「数字のセンス」と関係なさそうに見えます。

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4. Posted by ebisu   2017年02月15日 00:51

〈 美意識と数学のセンスについて 〉
平方数のほうの話を具体的に書いておきます。

①  ②       ③
121=11^2   1,9
144=12^2   2,8
169=13^2   3,7
196=14^2   4,6
225=15^2   5,5
256=16^2  6,4
289=17^2  7,3
324=18^2  8,2
361=19^2  9,1

①平方数 ②平方 ③九九の一の位が各平方数の一の位と同じ数になる数。

面白いでしょ、③の数字は足すとすべて10です。そして数字は1から順に綺麗に並んでいます。隠れていた構造に気がついて、「ああ、美しい」と感動する心がセンスを磨きます
数学のセンスはこういうシンプルな数字配列から規則性と美を見出すことなのです。

√169がいくつになるかは末尾の数字の9が九九で3と7の平方の末尾が9になることを知っていればわかります。√225より前なら小さい方13^2です。√289なら後の方、17^2です。

数字が大きくなるとルートが外せるのにできない中3が結構います。でも、平方数を暗記する必要はないのです。末尾に注目すれば候補は二つだけ、すぐに判別できます。

数字の背後にはさまざまな構造や美しさが隠されている、その構造や規則性は美しい、数学は美しい、そう感じるたびに数字や数学のセンスが磨かれる気がしませんか?
二桁の素数を暗記して、数字や数学のセンスが磨かれるこというのはなんだか怪しい説に聞こえます。ちっとも美しくないので感動がないのです。
(食を例にとればわかります。鮮度のよい魚の刺身を食べたら、おいしいという感動が生まれます。鮮度の悪いものとの差がはっきりわかるようになります。同じ刺身でも、刺身の色にあった美しいおお皿にのっていたらさらにおいしくなります。整理整頓がなされ掃除の行き届いた部屋で外の景色を眺めながら食べるとさらにおいしくなります。そういうことに感動することでセンスが磨かれるとわたしは思います。)

九九と逆九九が高速で言えれば十分、そして2桁の乗算の暗算ができたらなお結構。これができれば割り算も高速でやれます。商を立てるのにその都度考え込んでいるようではアウトです。2桁の乗算の暗算ができなければ、割り算の商を瞬時に立てることは無理です。

基礎トレーニング(九九と逆九九)を十分に積むこと、そしてセンスのよさは高校数学をやるときや実社会に出たときにこそ強力な武器に化けるでしょう。

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5. Posted by ZAPPER   2017年02月15日 10:49
ebisuさん
改めて考えてみると私自身、気づかないうちにご指摘の部分を「感覚的」に理解していたように思います。となると、やはり九九を含む基礎計算の段階で、シャワーを浴びるかのような練習量を積んだ経験の賜物。今の釧根の子ども達の多くはその反対ということが言えそうです。

先日、ウチの教室長とも話したのですが、図形がまた恐ろしいほどにできなくなってきています。立体図を立体として認識できない。それ以前、平行・交わるの概念が捉えられない。展開図以前、空間図形のねじれの位置をまるで理解できない…。まさに重症。そうした生徒が増えてきています。

本来、図形や確率は「教えなくてもできる」はずのものだと私は思っておりますが、いずれも以前にも増してひどい状況になっています。抽象概念の欠落を感じる昨今であります。

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〈 センスを磨くために必要な基礎能力 〉
 先生が百人いたら、百通りあるくらいに考えていいのかもしれません。意見の相違を楽しむのも一興です。
 特定の数字の配列の中に規則性や美しい配列がさらに隠されていることに気がつく者は、数学が楽しくてしようがなくなります。
 論語にも「これを知る者はこれを好む者にしかず、これを好むものはこれを楽しむ者にしかず」と言ってます。時間の流れの外側にたたずみ楽しんでいるうちに数字に関するセンスが磨かれます。夢中になって考えている内に時間があっという間に経過しているのに驚きます。通常ではない集中力が自然に発揮されています。
(2~4週間ほどもそういう状態を続けると脳がフルパワーで活動してなかなか止められなくなりますから、そういう時は必ずクールダウンしてください。目をつぶっても脳が勝手に動いて思考が止まりません、身体がつかれきるまで睡眠できない状態が訪れます。勉強や研究はすごい速度で進みますが危険です。)

 高校数学では三角関数で公式がたくさん出てきますが、基本公式をいくつか覚えていれば1分で他の公式を導き出せます。すべての公式を暗記しようとする者と基本公式だけ覚えて、そこから他の公式を派生的に導き出すトレーニングをしている者とでは数学の学力に雲泥の差が生じます。
 たとえば、基本公式、
 sin^2 θ+cos^2 θ=1
 この公式の両辺をcos^2 θで割ると、1+tan^2 θ=1/cos^2 θ が出てきます。倍角公式も半角公式も加法定理から簡単に導き出せます。こんなことは高校数学では常識ですね
 問題のパターンわけも、相互に関連のあるものをまとめてしまうとか、あるパターンから派生するものをまとめて憶えてしまう、そういうことをやってしまいます。
(基本定理と派生定理を区別して学ぶこと、基本定理の導出をやってみることや基本定理から派生定理を導き出すことは中学生からトレーニングしたほうがいいのです。分数から実数への数の概念の拡張もチャンスです。学力の高い生徒たちには概念の拡張が何をもたらすか教えてしまいましょう。)
 数学のセンスのよい者はあちこちで、相互の関連の糸を見つけて利用していますから、必要最小限の暗記で済ませています。脳のワーキングメモリーへ常駐させる情報を減らして負荷を小さくしてるのです。

 基礎能力①掛け算の九九が高速で言える②逆九九が高速で言える、そして③二桁の乗算が瞬時にできるだけで十分です。これだけで四則演算が高速にできます。瞬時に割り算の商を立てるためには二桁の概算が暗算でできれば何桁でも大丈夫です。高校数学の問題の2割はかなりの計算力を要求します。
 文章題は「読み・書き・そろばん」の読みとそろばん(計算)の両方が速くて正確なほど有利です。

 ところが計算力があることは直ちに数学のセンスのよさにつながりません。これはわたしの経験の範囲のことですが、珠算の高段者(女子が多いのですが、たまには男子もいますが)で数学が得意だという人は珍しいのです。3段以上は4桁の暗算が算盤を使ってやるよりも高速でできるので計算能力が抜群に高いのですが、数学が得意な人は少ない。
 珠算の高段者を見る限り、数学のセンスと計算力はリンクしていないかのように感じます。不思議ですね。たぶん、計算は速いが、数字の背後に隠れている美しさに気がつくことが少ないのでしょう。計算トレーニングのしすぎの弊害です。走ってばかりいないで、たまには道端の草花に目を移し、美しいと感動するこころの余裕が必要なのでしょう。(笑)

 わたしの意見を述べましたが、異論のある方はどうぞ投稿欄へ書き込んでください。穏やかな議論ができれば幸いです。

 次回は「センスを磨く指導のしかた」と題して、わたしがやっている成績上位生への指導上の留意点をまとめてみます。
 ニムオロ塾は個別指導なので、学力に応じて教え方を変えています。現在中2の成績上位生に3年間やってきたことを中心に紹介してみようと思います。
 その生徒は中1の最初の学力テストで学年2位の生徒との四科目合計点の差が1点、2回目のテストは1学期期末テストで英語が入るので五科目になりますが差は2点、すれすれでした。その後テストの都度2位との差は開いて2週間ほど前の2月2日の学力テストでは約百点の差が生じています。90%は本人の努力ですが、指導法の影響もすこしだけありそうです。

 デカルト『方法序説』にある「科学の方法四つの規則」ユークリッド『原論』の体系を意識した指導をしています。「概念の拡張」「基本と派生」を軸に教えています。
 こういうことを通してわたしは数学的思考法を生徒に伝えているのだと思います。「数学のセンス+数学的思考法」が身につけば、鬼に金棒と思いませんか?

*#3507 数学のセンス(1):数字に表れる美への感動がセンスを育てる Feb. 16, 2017 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15-1

 #3509 数学のセンス(2):「同型性」と「拡張」⇒どのように考えるのか Feb. 19, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-19

 #3511 数学のセンス(3):授業時間数減少、数量、平面図形 Feb. 24, 2017 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23

 #3512 数学のセンス(4):空間図形 イメージ操作 Feb. 26, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-26

 #3514 数学のセンス(5):空間図形と論理的思考 Mar. 2, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-03-02


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#3506 国税庁確定申告画面開けず:臨機応変 Feb. 15, 2017 [時事評論]

 数日前のことだが、所得税の確定申告書類作成のために国税庁のホームページから作業を開始するため、「確定申告等作成コーナー」という画面をクリックしたが、画面が開かない。

*国税庁の該当ホームページ
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kakutei.htm

 なぜだろうか考えてみた。わたしのパソコンはXPで動いている。マイクロソフトはXPのサポートを数年前にやめたが、わたしのパソコンは依然としてXPで動いている。もうすぐ10年になるはずだが、壊れるまで使うつもりでいる。国税庁はXPで確定申告する納税者のサポートをやめたのだろうか?昨年まではXPで青色申告決算書も申告書類も作成できた。

 しかたがないので、2/13に根室税務署へ出向いて税務署内の「所得税申告書作成コーナー」に設置してあるパソコンを利用させてもらった。決算書類はEXCELで「正規の簿記の原則」に従って作成済みなので所得税申告書作成作業だけやり、20分ほどで終了した。今年から住基ネットのマーナンバーの入力欄があるのでお忘れないように。
 その部屋では税務署員が3人対応していたが親切だった。

 一人が税務署員へ訊きながら作業しているところへ、もう一人の「納税者様」が現れた。

「おい、どうやってやるのか知らないからやってくれ」
「昨年はどうされたのですか?」
「そっちの方でやってもらった」
「そっちとはどちらですか?市役所でもやっていますが・・・」

 さらに数度やり取りがあって、どうやら昨年は市役所でやってもらったらしいことが判明。市役所内に2月16日から申告コーナーが開設されるので昨年どおりそちらのほうへどうぞということになった。税務署員は丁寧に対応していたが、「納税者様」はずいぶん横柄だった。税務署員の皆さん、ご苦労様。

 お友達ならいざ知らず、赤の他人の税務署員へ物を頼むのにあんなに横柄な態度をしなくてもいいのにと感じたしだい。
 子どもに「そんなことしちゃいけません」と言うべきところを、「てめえ、なにやってんだこら」なんて言葉が普段でているようなら、親の方が問題です。家庭内での日常会話こそ品よくやりたいもの、それがそのまま躾けになります。

 思い出したことがあります。もう10年も前になるだろうか、市立根室病院の夜間の救急外来に酒に酔った「患者様」が現れて、待たされたので言いがかりをつけて医者を殴ったという「事件」がありました。
 こういう大人たちは幼少期にどういう家庭の躾けのされ方をしたのだろうか、そして中高生時代をどのようにすごしたのだろうと想像した。いまの中高生は大丈夫か?こういう大人が5%もいたら、根室は民度の低い地域だと思われる。

 生態系の種の多様さが安定性を保障しているように、一つの地域にはいろいろな人がいたほうがいいに決まっている。でもね、言葉はちゃんとしたい。
 できることから心がけたい、人とのコミュニケーションはもっと穏やかに、丁寧な言葉でしたいものだ。



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#3505 弊ブログ記事一覧:#3401⇒#3500  Feb. 14, 2017 [ブログ記事履歴]

 2016年8月28日から2017年2月7日までの弊ブログ記事の一覧表です。
 ご覧いただく場合は欄外右下最下段の「検索ボックス」に、たとえば「#3401」と半角で入力してください。

#3401 高3 :'Thinking outside the box' を読む(1) Aug. 28, 2016 
#3402 高3 Thinking Outside the box (2):本文 Aug. 29, 2016  
#3403 平成28年夏 日本経済を見る:内橋克人  Aug.30, 2016 
#3404 根室産の新鮮サンマ+台風10号の話  Aug. 30, 2016 
#3405 原典のススメ:愛と寛容性概念の混同(中2学力テストから) Sep. 2, 2016 
#3406 経済学対話:西田幾多郎・ヘーゲル・マルクス・・・ Sep. 6, 2016 
#3407 ノートをとる必要がないプリント主体授業増殖中  Sep. 8, 2016 
#3408 ノートをとらないプリント授業の副作用は社会人になってから現れる Sep. 9, 2016  
#3409 「釧路・網走・根室」市長、三人よれば文殊の智慧? Sep.11, 2016 
#3410 怪談牡丹灯篭 白石加代子朗読  Sep. 13. 2016 
#3411 年金積立金運用報告書を読む①  Sep. 14, 2016 
#3412 秋!散歩、そして朝食に旬の秋刀魚  Sep. 15, 2016 
#3413 年金積立金運用報告書を読む②  Sep. 16, 2016 
#3414 年金積立金運用報告書を読む③  Sep. 17, 2016 
#3415 年金積立金運用報告書を読む④  Sep. 18, 2016 
#3416 年金積立金運用報告書を読む⑤:シミュレーション Sep. 18, 2016 
#3417 年金積立金運用報告書を読む⑥:定量的に考えよう Sep.19, 2016 
#3418 年金積立金運用報告書を読む⑦:気になる変化 Sep. 22, 2016 
#3419 プーチンと2島返還で交渉?:議論もしないで勝手に決めるな Sep. 23, 2016 
#3420 物の怪が蠢く築地市場の豊洲移転  Sep. 24, 2016 
#3421 数学:低学力のメカニズムとその破壊 Sep. 24, 2016 
#3422 秋の原野を走る Sep. 25, 2016 
#3423 英和辞典を購入!:スーパー・アンカー英和辞典 ミッキーマウス版 Sep. 27, 2016 
#3424 取材力:市立根室病院の赤字額はいくら? Sep. 29, 2016 
#3425 根室半島東部一周47km (1)  Oct. 2, 2016
#3426 写真で見る根室半島東部一周47km: サイクリング  Oct. 2, 2016  
#3427 グッドニュース:経済団体の教育事業連携 Oct. 4, 2016 
#3428 東電広瀬社長発言:廃炉費用計上で債務超過になる Oct. 5, 2016 
#3429 第2回フリー授業参観:C中学校  Oct. 6, 2016 
#3430 検証:東京電力が原発事故の廃炉費用計上で債務超過になる  Oct. 7, 2016 
#3431 検証:基本問題のみの授業と学力テストのレベルの差 Oct. 9, 2016 
#3432 10月だというのに秋刀魚が売り場にない Oct. 9, 2016  
#3433 授業のレベル低下が先か、生徒の学力低下が先か? Oct. 10, 2016 
#3434 教育で一番大切なことは「情緒」:大数学者岡潔の言 Oct. 11, 2016 
#3435 弊ブログ記事一覧:#3301⇒#3400  Oct. 12, 2016
#3436 フェルマーの最終定理と経済学(序):数遊び  Oct. 13, 2016 
#3437 フェルマーの最終定理と経済学(1):純粋科学と経験科学 Oct. 15, 2016 
#3438 フェルマーの最終定理と経済学(2):不完全性定理と経済学 Oct. 18, 2016 
#3439 フェルマーの最終定理と経済学(3):整理作業-1   Oct. 19, 2016 
#3440 上位生の枯渇と地域経済の関係 Oct. 19, 2016 
#3441 音読トレーニングと中2の語彙力 Oct. 20, 2016 
#3442 学力テスト総合A:釧路と根室の比較  Oct. 22, 2014 
#3443 根室の高校統合:具体策の用意はあるのか? Oct. 22, 2016 
#3444 人はどうやって言葉を習得するのか(1):2.5-3歳 Oct. 30, 2016 
#3445 RBは今年最後のラン? Oct. 30, 2016 
#3446 信頼の喪失と回復  Nov. 1, 2016 
#3447 仕事(職位)と責任:新教育委員長に天神氏 Nov. 3, 2016 
#3448 日銀保有の国債を政府債務と相殺すればゼロ? Nov. 3, 2016 
#3449 地方議員の定数と報酬:ブログ「オータムリーフの部屋」へ Nov. 5, 2016 
#3450 ニムオロ塾 授業日数の短縮:来年4月から Nov. 6, 2016 
#3451 釧路出身予備校数学講師志田さん講演会 Nov. 8, 2016 
#3452 根室高校女子バレー部全道大会出場:おめでとう Nov. 9, 2016
#3453 3人×5本か5本×3人か?: 単位の計算が潜んでいる Nov. 11, 2016 
#3454 総合体育館建て替えは必要か:不適切な検討体制 Nov. 13, 2016 
#3455 根高女子バレー部全道大会 Nov. 16, 2016  
#3456 福島第一原発事故不可解な後始末:ある試算 Nov. 16, 2016 
#3457 根室で火事:光洋町五階建て市営住宅 Nov. 16, 2016 
#3458 取著(しゅちゃく)  Nov. 17, 2016 
#3459 JR北海道13区間維持困難 Nov. 19, 2016 
#3460 根室高校入試倍率はどうなる? Nov. 19,2010 
#3461 情報収集・整理の仕方と文書作成の基本 Nov.21, 2016 
#3462 ブレーンストーミング⇒KJ法⇒PERT Nov. 22, 2016 
#3463 福島県沖M7.4の地震あり:数学は役に立つ Nov. 22, 2016 
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#3504 抗癌剤オプジーボのコストと薬価について Feb.12, 2017 [時事評論]

〔更新情報〕
2月12日朝10時半 染色体検査結果情報の学術目的での公開構想を追記
     午後3時 〈 余談:学術開発本部から関係会社管理部への異動の経緯 〉追記


 肺癌やメラノーマに有効な抗癌剤オプジーボのコストがいくらであるかわたしは知らないが、製造数量が増えればコストがどうなるかぐらいの知識ならある。

 小野薬品工業が開発したオプジーボは肺癌患者の1/4くらいに顕著な効き目があるという。メルクが類似の薬効をもつキイトルーダという抗癌剤を開発した。こちらは50%の肺癌患者に有効だという。
 どちらも他の癌にも効くようだが、患者一人に1年間投薬を続けると3600万円もかかってしまう。昨年11月24日の日系新聞記事によれば、オブジーボの保険点数が半分になったというから、1800万円だ。
*オプジーボと競合 米メルクのがん免疫薬承認へ・・・日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22HK5_U6A121C1TI1000/

 経験を踏まえた上で一般論を言うと、製造初期のころはコストが高いが、数が10倍100倍となるにしたがって製造コストは1/10、1/20に劇的に下がるもの。
 SRLでは、導入当初は特殊検査部で検査をして、量が増えてくるとCA19-9 はルーチン検査部門であるRI検査部の担当となった。ルーチン部門で大量に検査すると検査コストは劇的に低下する。それは大量検査に必要なお膳立てがそろっているからだ。

 SRLに入社した1984年に経理担当役員の指示で富士レビオの子会社である東レ富士バイオの取締役と翌年度の腫瘍マーカCA19-9の検査試薬の仕入れ値の交渉をしたことがある。当時この腫瘍マーカは大型開発項目で急激に売上げの伸びが期待されたSRLの大型独占販売商品だった。
 いくらで値を決めたかは憶えていないが、数十倍の数量保障をすることで値段を半分以下にしてもらった。低価格で販売して腫瘍マーカー市場の寡占を狙ったのである。あれは大当たりだった。原価無視の低価格で売り出し、それを追っかけるようにコスト削減に邁進して利益の確保を実現した。製造初期のコスト見合いの価格をつけていたら、腫瘍マーカ市場を席巻するほどの大型商品にはならなかっただろう。価格戦略とコスト削減戦略が功を奏したのである。84年の夏ころ、入社半年のわたしにこんなに大事な仕事を経理担当役員のI本さんが任せてくれた。こいつに任せたら面白そうだと思ったのだろう、馬が合ったのだ。わたしは東証Ⅱ部上場準備がらみでそれまで解決できなかった経理部の課題をいくつか解決していた。I本さんは富士銀行(現みずほ銀行)からの出向役員だった。「○○へ行くからついてこい」とよく連れまわって途中いろいろ話をしてくれた。
 CA19-9は特定の腫瘍に反応するのではなく腫瘍があれば数値が上がるからいまでも使われている。CA19-9 の値が上がれば体内のどこかに癌の存在可能性がある。わたしは半年に一度程度腫瘍マーカ検査をしてもらっているが、CA19-9はCEAとセットになっている。主治医のところは残念ながら検査外注先はSRLではない。根室市立病院はSRLだ。ずいぶん前のことだがSRLの社長が表敬訪問したことがある。昔はSRLの釧路営業所長は根室まで病院を開拓するつもりがなかった。120kmも車を走らせて売上げを確保するのをためらったのだろう。釧路には大きな病院がいくつもあるから、わざわざ根室まで足を伸ばす必要がなかった。検査技術レベルの高い会社だったから、座っていても病院の方から声がかかることが多かったのである。オヤジが癌になって釧路市立病院で手術を受けた前後についでに釧路営業所に寄ったことがあった。本社経理部で全社予算の統括業務をやり、八王子ラボ学術開発部門のスタッフだったので、営業部門に顔が利いた。寄ったついでの雑談に、根室市立病院は遠すぎるかと訊いたことがあった。営業担当役員の一人は厚岸出身だった。学術開発部門の次の異動先は社内公募に応募して関係会社管理部、これはなぜか営業担当常務直轄部門となり、営業部門と同居していた。この部門で子会社経営分析と臨床検査会社の買収および資本提携交渉を担当した。そして資本提携交渉が成立した福島県郡山市の臨床検査会社に出向になった。買収した金沢の臨床検査会社とどちらがいいと言われたので、迷わず経営建て直しに困難が大きい方を選んだ。層でなくては面白くない。金沢の方は経営分析をした後ラボを視察して経営改善の目処がついていたのである。誰でもできそうな仕事は自分の領域ではないと判断した。

 産業用エレクトロニクス輸入商社にいた1981年ころのことだったと思うが、マイクロは計測器でマルチチャンネルアナライザーが売れ出していた。2000万円もする高額機器だったので、社内で開発した。試作機は回路はマッピングで作成しアッセンブラでプログラミングしていた。試作機で機能の確認が終わるとプリント基板で製造を始めた。プロトタイプは1000万円ほどかかったが、製造段階へ移行するとコストは人件費を入れても200万円弱だった。それを1000万円で販売した。ウィルトロン社やヒューレッドパッカード社の同等品が2000万円だったからコスト見合いで値決めをする必要がなく、性能見合いで値決めしたのである。プロトタイプの開発段階から製造段階へ移るとコストは劇的に下がる。
 こういう点からメルクの新商品キイトルーダの立ち位置を眺めると、性能見合いの価格戦略を決め込んでいるように思える。オプジーボよりも性能が優秀なのだから、オプジーボ相当の保険点数がつくのは当然で、コスト見合いで対価各路線をとる必要がないからだ。製薬市場では日本市場は米国に次ぐ。メルクが手にする売上げは日本国内メーカである小野薬品の10倍以上だろう。小野薬品は年商1300億円弱だったが、オプジーボ発売で売上げが2倍に急増している。それを横目で眺めながらメルクは大喜びしているだろう。おそらく1600万円でもメルクが考えていた発売価格よりもはるかに高いにちがいない。コスト見合いの価格をつける必要がないのだ。

 SRLは染色体外注検査市場では1980年代後半に8割のシェアを握っていた。保険点数が製造コストに見合わないので、学術開発本部担当取締役のI神さんに相談して、厚生省に原価資料をオープンにして保険点数をアップしてもらうように働きかけたことがあった。15%ほどアップしたので、染色体部門の採算がよくなった。これで他のセンターの新規参入の敷居が低くなった。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」である。
 当時、信頼性のある染色体検査の原価資料なんてSRL以外にはもっていなかっただろう。上場準備作業で統合会計情報システムが動き出しており、そのサブシステムとして原価計算システムが存在していた。1989年時点では、上場要件を満足する統合会計情報システムをもった臨床検査会社は他にはなかった。他の業界でも統合会計情報システムの例はほとんどなかっただろう、それほど難しい仕事だったのである。核の部分と各サブシステムとのインターフェイス仕様と外部設計、実務設計は入社3ヶ月ぐらいでわたしが担当した。8ヶ月で会計・支払いシステムが本稼動した。当時は全部つくりこみであるから、統合システム・パッケージ開発をしたようなものだ。
 1989年ころに英国エジンバラのIRS社が製造した染色体画像解析装置を3台導入してコスト低減をしたがそれでも染色体部門は採算がきつかった。顕微鏡写真を切り貼りして検査報告書を作っていたが、画像解析装置を導入してから、並べ替えが画面上でできるので、高品質のレーザプリンタで検査報告書を出力できるようになった。画像もそのままデータファイルとして保存できるように変わった。
 採算が悪いからといって染色体検査受託を中止するという選択肢はなかった。企業の社会的責任から、ナンバーワンラボとしては全国の大学病院から染色体検査を受注せざるをえない、そういう事情があった。
 1990年当時SRLは3000項目程度の検査受託をしていたが、黒字だったのは200項目ぐらいだった。採算のとれる項目はわずか7%である。200項目で売上げの7割をカバーしていた。
 検査品質を上げるためならお金に糸目をつけずに性能のよい機器をそろえた。ウィルス部では蛍光顕微鏡は全部カールツァイス製である。ラボ研で大学の先生を案内すると、機器を見てうらやましがった。「SRLの検査技術は人と高性能の機器に支えられています」と説明した。カールツァイス製はニコンの蛍光顕微鏡の1.5倍の価格だった。
 世界一厳格な米国臨床病理学会による品質管理基準CAPライセンスを1989年ころ国内初導入した。3000項目全部の標準作業手順書を作成して、それを英訳し、電子ファイル化したのである。SRLという会社はこういうチャレンジャブルなお祭り騒ぎの好きな会社である。

 染色体検査についてもうひとつ大事なことを書いておきたい。1990年ころ学術開発本部スタッフとして仕事していたが、このときに染色体検査データベースを患者名など個人情報を落としたファイルを全国の研究者に疫学研究データベースとして公開する構想をもっていた。染色体画像解析装置を導入して、検査結果はすべて画像ファイルとして保存してあるので、世界最大のデータベースだったのだ。学術的な価値は測り知れない。福島第一原子力発電所事故が日本人の染色体にどのような影響をもたらしたかもこのデータベースの解析からわかるだろう。27年間ほどの期間のデータベースが存在している。
 わたしは学術開発本部で開発部でメーカと検査試薬の共同開発および共同開発手順の標準化や学術情報部と日本標準検査項目コード制定へ向けての作業や海外製薬メーカからのラボ見学対応などの仕事をしていた。在任期間は2年ほどだったが、もう1年いたら、この構想実現に動いただろう。I神取締役にも話していなかった構想であるが、話せばすぐにOKが取れるから、そちらに仕事のウェートを移さなければならないので躊躇したのかも知れぬ。そのころ沖縄米軍からの依頼があった出生前診断に関するトリプルマーカ(MoM値)の検査受託をするための専用システム開発とトリプルマーカの日本人の基準値作成のための共同研究を慶応大学産婦人科教室とはじめていた。SRL側でプロジェクト全体の統括もしていたので、一段落ついてからの仕事と考えていた。
 学術目的での染色体データベースの公開は研究者たちに歓迎され、SRLの評価をさらに高いものにしただろう。いまからやってもらいたい。NATUREやSIENCEに載せられるような学術研究論文が日本から30はでるだろう。研究者からみたら、よだれが出そうなご馳走なのである。自治医大名誉教授の櫻林先生が40代のころ、「SRLは宝の山だ」と言っていた。先生はSRL顧問で免疫電気泳動の研究をしておられた。臨床化学部の検査項目だったが、他の検査部門も同様に研究論文の種になる検査情報が山ほど蓄積されている。当たり前すぎてSRL自身がそのことにあまり気がついていない。学術研究利用を促進すべきだ。

 話を元に戻そう。オプジーボは1年前よりは1/10以下にコストを低減できているのではないか。保険点数を審議する機関のメンバーに薬剤の製造コストを調べられる人材が必要だ。これから効き目が著しく高い抗癌剤が医学の分野、バイオの分野遺伝子工学の分野などから続々と開発されるだろう。基礎研究が急速に進んでいる。
 #3490で九州大学大学院農学研究院教授の角田佳充(かくたよしみつ)氏(生命機能科学部門生物機能分子化学講座生物物理化学研究室)の基礎研究を紹介しました。

*#3490 勉強と研究はどうのように違うか:生物物理化学の先端 Jan. 6, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-01-05

〈 余談:学術開発本部から関係会社管理部への異動の経緯 〉
 学術開発本部を出た経緯を書いておく。
 経営企画部が各部門の業務の3割削減プロジェクトを組織したことがある。学術開発本部担当取締役のI神さんはわたしを学術開発本部の担当に任命した。プロジェクトのヘッドは経営企画部のN川さんだった。キナ臭い感じがしたので全体構想の説明が終わった2回目のPTミーティングで「プロジェクト終了後に人員削減要求がでることはないでしょうね、業務削減で生じた余剰人員は学術開発本部では新規企画に投入するので、スタートに当たって確認しておきたい」、そう質問をしたら、N川さんは「ありません」と明言。わたしは学術開発本部の3部門25名がやっている仕事(日次、週次、月次、四半期、年次の仕事と非定期に分類)の棚卸しをして、表にまとめ、各担当者の理解と納得ずくで、優先順付けをして業務を3割削減した。その際に、プロジェクトリーダーであるN川さんには人員削減はしないと念押しして了解をもらっているから、新規企画に余剰となった人員を投入すると説明していた。もちろん、I神取締役へも報告して了解をもらっていた。
 ところがプロジェクト終了後に人員削減の話が出て、数名人員を出さざるをえなくなった。そこへ関係会社管理部新設の社内通達が回り、初めて社内公募で部員を集めるというのである。わたしはプロジェクト担当者として本部内の全員に人員削減がないことを説明しながら業務3割削減をしたから、その約束が反故になったので、自分が先に出ることにした。つぶしのきく自分が出ることで本部から異動する人員を一人は減らせる。すぐにI神取締役に話そうとしたら、副社長のY口さんから電話があり、八王子ラボへ用事があっていくので応接室で話があるという。電話があって数時間で副社長はラボに現れ、3つある応接室の一つで話を聞いた。「公募の件はI神取締役には話すな、話せば異動の件はつぶれる」というのである。学術開発本部で3部門の仕事をこなせ、調整のできる人材は一人だけだったから、I神取締役が異動に強硬に反対することを予測して調整に来たのだ。新設される関係会社管理部で子会社経営分析や管理の専門スキルをもつ者は社内に他にはいなかった。実際に、異動してから、経営分析や会社買収交渉、資本提携交渉業務を担当することになった。公示まで口止めされたので、公募に応じたことを直属上司であるI神取締役に報告できなかった。
 副社長は陸軍士官学校と海軍士官学校の両方に合格して、陸士を選んだ軍国青年だった。普通は海軍士官学校のほうへ行くのだが、なぜか陸士を選んだ。戦後になってから陸士出では就職に不都合なので東大に入りなおして卒業した、なかなか抜け目のない頭の切れる人である。旗色を見るに敏で、うまくいっている限り強い味方でいてくれるから、仕事で失敗ナシなら安心してタッグを組める人だった。2度助けてあげたことがある。
 公示の当日、一切知らされていなかったI神さんは怒っていた。なぜ話さなかったとなじられたが、「言えない事情がありました、申し訳ございません」とだけ伝えた。副社長から口止めされていたとは言わなかった。言い訳するようでみっともなかったからだ。公示になったからには取り消しはきかない。
 産業用エレクトロニクス輸入商社にいたときに経理担当役員から初社長の話を聞いた。スタンフォード大学でヒューレットやパッカードと同窓で、戦時中は三井合同の管理職だったという。財閥解体で何人もの社員のクビを切った後、自分もけじめをつけるために退社して、起業したという。HP社の日本総代理店からスタートした会社だった。横河電機とHP社が日本法人をつくるときに、社員の大半の移籍を済ませて、独立系輸入商社として再スタートした。入社したときには他界されていてお会いしたことはなかったが、話を聞いただけでその潔さに惚れていたのだろう。
 N川さんから言質をとったつもりだったが、危惧した通りの結果になったのは、わたしが悪い。本部内の学術情報部、精度保証部、開発部のメンバーには今回のプロジェクトには人員削減の隠れた意図がありそうなことをはっきり言っておくべきだった。うすうすわかっていたのだから。だまされたわたしが悪いから、自分が学術開発本部に残る選択肢がなかったのである。そこへはじめての組織新設に伴う社内公募があったから、天はそこへ行けと言っているような気がした、異動に迷いはなかった。能力を買ってくれて学術開発本部に誘ってさまざまな仕事を任せてくれたI神取締役にはたいへん申し訳ないことをした。
 出向から本社経営管理部(元財務経理部が名称変更)へ戻ったときに、N川さんがいた。経理業務にスキルはまったくなかった。わたしの部下になるところだったが、わたしの本社帰還するとすぐに他部署へ異動になった。
 経営企画部は専門スキルを持たない社員のたまり場だった。自意識過剰なものが多く、わたしには掃き溜めに見えた。難関大学出身者が集まっていたことは事実である。30歳までに責任を持たされて、ちゃんと仕事をやっていないと専門知識は増えずスキルも育たないものだと思った。
 入社1年目に自治医大の櫻林郁之介先生から、臨床検査項目コード検討委員会の委員長をやっているので、手伝ってほしいと頼まれた。ついては、財務経理部から総合企画室(後に経営企画室)に移籍した方が仕事がしやすいだろうから創業社長の藤田さんへ異動の件を頼んでみるからと相談があった。専門スキルのない総合企画部の面々とは話が合いそうもないので異動はお断りした。翌年の1985年にNTTデータ通信事業本部を巻き込む「臨床診断システム開発と事業家構想」を社内提案して、創業社長のF田さんから200億円の稟議にOKをもらった。事業を10個のプロジェクトに仕事を分割していたが、その中の一つが臨床検査項目コードの標準化だった。日本標準臨床検査項目コードがなければ、全国の大学病院や専門病院をネットワークでつなぎ、データをコンピュータで処理できない。光カードでのカルテの標準化も考えていた。
 そういうところへタイミングよく業界大手6社でラボで使用している項目コードを標準化しようという提案がBMLのシステム部長のKさんからあった。SRLシステム開発部の課長だったK原さんがわたしに話しを持ってきた。臨床科学部のK尻部長に話を通して、臨床病理学会臨床検査項目コード委員会の委員長でSRL顧問の櫻林先生に登場願って、、臨床病理学会発表で日本標準コード制定へと方向転換することに決めた。大手6社の第2回目のミーティングのときにわたしから話を持ち出した。業界で標準コードを決めても大学病院は「臨床検査業界標準コード」を使ってくれるはずがない、臨床病理学会項目コード検討委員会とタイアップして産学協同で検討すれば、合意できた臨床検査項目コードは日本標準検査項目コードに化ける、わたしたちはそれぞれのラボで実施している検査項目資料を持ち寄って名称を整理し、分類の仕方や付番方法などの検討作業をやって黒子に徹することにした。臨床病理学会から日本芳醇臨床検査コードとして公表すれば全国の病院が受け入れる。事実そうなった。6社に異論をいう人はなかった。
 櫻林先生にはわたしの方から話をするから、次回から産学協同での日本標準コード作業委員会になる旨、大手六社のシステム部門と学術部門の了解をいただいた。日本発の世界標準コードは一つもないので、世界標準コードにしたかったのだが、日本標準コードで作業は終了。途中で抜けたからしかたがない。
 SRL社内で当時反対が起きた。システム部長のS茂さんが強硬に反対したが、その部下であるK原課長は反対を押し切って参加してくれた。そういう経緯があったので、プロジェクトが軌道に乗って、事務局をBML社からSRLに移すときに櫻林先生から、「S茂システム開発部長が反対だったでしょう」とクレームがあった。でも、課長のK原さんと、K尻臨床化学学部長が全面協力してくれたし、K尻さんは学術情報部長になっていたので、事務局をやる場合の担当部門長だから、SRLに移していいでしょうと説得すると、にっこり笑って応じてくれた。もっていって当然だが一言しておかないと腹の虫が収まらないというのが櫻林先生の本心だっただろう。以心伝心、楽しいやり取りだった。
 いろんな人間がいて、さまざまな考え方があるから、すったもんだはある。真っ当な方向へその都度舵を切ればいいだけ。
 櫻林先生は当時は自治医大助教授だったが、現在は名誉教授、一般社団法人HECTEF(Health Care Technology Foundation)理事長、一誠会さいたま記念病院名誉院長をしておられるようだ。
 
*HECTEFホームページ
http://www.hectef.jp/jigyou.html


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