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#3538 ∀n [ n≧3⇒∀x∀y∀z ¬(x^n+y^n+z^n] May 7, 2017 [数学四方山話]

  標題は論理式であるが、何を意味しているかわかる人は数学科か哲学科を卒業した人だろう。
  三月から数理論理学や数学の本を読んでいるのは、論理式に不案内だと気が付いたから。高校数学Ⅰには「集合と論理」あるいは「命題と論証」という章があるから、教える方は数理論理学の大学教科書程度の本は読んで演習問題を解き視野を広げたほうがよい。大きな山は裾野も広い。

  今日はサイモン・シン著 青木薫訳『フェルマーの最終定理』(新潮社 2000年刊)を読んでいた。この本を読むのは3度目である。昨年10月に2度目に読んだ時には気が付かなかったが、翻訳者の青木さんは京大理学部卒業、同大学院修了の翻訳家、そして女性である。翻訳文の感じがやわらかいと思っていたが、女性だったのだ、数学の本だから翻訳者は男だと思い込んでいた。彼女は「訳者あとがき」に次のように書いている。

「もう一つ、本書の書き方でわたしが好感をもったのは、日本人研究者と女性研究者の取り扱いである。…また、女性研究者の取り上げ方も並々ならぬ好意的な(というより、正当な、と言うべきか)もので、同性としてうれしく思った。」・・・『フェルマーの最終定理』p.393

  谷山・志村予想の志村五郎先生と、翻訳作業中の1999年に京都大学の特別講義で出逢ったことがp.395に書いてある。


      ∀n [ n≧3⇒∀x∀y∀z ¬(x^n+y^n+z^n]

  『フェルマーの最終定理』にはそれを表す論理式が載っていない。フェルマーはこの難題を論理式で語ったわけではないからだろう。さて、どういう風に記述すればよいのだろうと手元にある本を調べてみたらあった。この論理式は松坂和夫著『数学読本6』p.1369からの引用である、「nが3以上の自然数ならば、方程式 x^n+y^n=z^n を成り立たせる自然数x,y,z は存在しない」ということを表している。n=2は三平方の定理だから、それが成り立つのは中学生にもわかる。ではn=3や4の場合にはこの方程式が成り立つのかという問題である。

  面白いもので、2か月ほど数理論理学関係のベーシックな本を3冊ほど読んでいたから、なるほどこう書くのかと合点がいった。論理式に慣れたようで、すんなり読めた。

  3月下旬に東京へ行き、本屋で小島寛之著『証明と論理に強くなる :論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで』(技術評論社2017年2月刊)の本を見つけ、読んだ。前からゲーデルの不完全性定理が気になっていた。中学生の日本語音読テクストとして10年以上使用してきた藤原正彦著『国家の品格』(新潮文庫)にゲーデルの不完全性定理が載っていたからである。

「1931年にオーストリアの数学者クルト・ゲーデルが「不完全性定理」というものを証明しました。不完全性定理というのは、大雑把に言うと、どんなに立派な公理系があっても、その中に、正しいか正しくないかを論理的に判定できない命題が存在する」(『国家の品格』p.45)

  しかし、ゲーデルの証明を読んでもわかるはずがないと思い込んでいた。そんなことは数学者にしか理解できないと。
  3月下旬に東京へ行っていつものように本屋で暇をつぶしていたら、面白そうなタイトルの本を見つけた。小島寛之の『証明と論理に強くなる』である。この本は数理論理学の入門書であり、ゲーデルの不完全性定理の証明の入り口まで案内してくれると書いてあった。これ幸いと購入してすぐに読んだ。この本はゲーデル不完全性定理の入り口まで案内してくれるだけだから、そこから先は数理論理学の教科書を1冊やりとおしてから、ゲーデルの証明にトライしてみろということ。手順を踏めば、ゲーデルの不完全性定理の証明を理解することができるらしい。

 ゲーデル著 林晋・八杉萬利子訳『ゲーデル 不完全性定理』(岩波文庫 2006年刊)を読んでみたが、解説はわかるが、ゲーデルの証明そのものは論理式のオンパレードだから、数理論理学の教科書をしっかりマスターしないと理解できない。なかなか手強い。そういうわけで、いま2冊専門書を読んでいる。
  どちらも名著の復刊である、前原昭二著『記号論理入門』(日本評論社 2014年新装版)と松坂和夫著『集合・位相入門』(岩波書店 2016年第58刷)。『証明と論理に強くなる』では意味不明だった「⇒導入」と「⇒除去」の意味が『記号論理入門』ではよくわかった。
「仮定⇒証明⇒結論」と論証過程を分類すると、証明には仮定を含む必要がないので、「⇒導入」した仮定を「除去」するのである。論理図の演習問題も豊富にあるから、これを丁寧にやることで、論理図の書き方にも慣れてくる。時間はかかるが、演習問題を一つ一つ丁寧にやって、技術を身に着けていくのがいい。

  数学の論証とはユークリッド『原論』以来、現代数学の体系化を試みたブルバキ『数学原論』まで一貫して演繹システムである。ヒルベルトの『幾何学基礎論』も外すことができない。高校生や文科系大学の学生で好奇心の強い生徒諸君は、数学の世界に遊んでみたらいかが?
  数学のセンスが幾何(いくばく)かは必要です。受験数学という狭い範囲から出たら、景色が一変します。


<余談-1>
  ワイルズがフェルマーの最終定理を論証したのだが、著者のサイモン・シンは谷山・志村予想の証明のほうがより大きな快挙だとみる専門家が多いとを書いている。

「志村教授が自分の予想が証明されたことをはじめて知ったのは、『ニューヨーク・タイムズ』の第一面を見たときだった。ーー「数学界長年の謎に、ついに『解けた!』の声」。友人の谷山豊の自殺から三十五年目のことだった。谷山=志村予想が証明されたことは、フェルマーの最終定理が証明されたことよりもずっと大きな快挙だとみる専門家は多い。というのも、谷山=志村予想が証明されることは、他の多くの定理にとってとてつもなく大きな意義があるからだ。ところがジャーナリストたちはフェルマーばかりに焦点を合わせ、谷山=志村予想には軽く触れるだけーーあるいはまったく触れないーーことになりがちだった。」『フェルマーの最終定理』p.307

  翻訳者の青木が、サイモン・シンに好意をもったのは、国際舞台の場ではしばしば日本人研究者が、その業績の大きさに比して不当な扱いを受けることが多いのに、英国人の著者、サイモン・シンがちゃんと評価していたからだろう。

<余談-2>
  風が強いが、天気が良かったので、散歩(3180m)しました。昨日から首と肩の痛みがほとんどなくなっています。痺れを感じることがありますが、こころで抗わぬように、痺れや痛みをそのまま受け入れるように変えました。痛みや痺れはそれを嫌悪する感情をこころに起こします。これも老化と、ニコニコしながら微妙な身体のサインを受け入れています。ベットに横になった時に痺れと痛みが消えたので楽です。
  2月頃から毎日ヨーグルトを600gほど食べていたので、それを1/3に減らしました。別海牛乳を温め、専用容器に入れて市販ヨーグルトを種に混ぜ、毛布でくるんで5時間保温したら出来上がりです。果物を混ぜて食べています。そして、体の筋肉をリラックスさせるために、最近あまりやらなくなっていたヨーガを15分くらいやっています。歩く時には、足以外は力を抜いて重心移動を感じながら頭や腕や胴体をそれに同調させるようにしてみたら、気持ちがいい。無駄な力の入らない歩き方がいまのわたしにはいいようです。






フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

  • 作者: サイモン シン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/01
  • メディア: 単行本



数学読本〈6〉線形写像・1次変換/数論へのプレリュード/集合論へのプレリュード など

数学読本〈6〉線形写像・1次変換/数論へのプレリュード/集合論へのプレリュード など

  • 作者: 松坂 和夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1990/08/27
  • メディア: 単行本



証明と論理に強くなる  ~論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで~ (知の扉)

証明と論理に強くなる ~論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで~ (知の扉)

  • 作者: 小島 寛之
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2017/01/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/20
  • メディア: 新書




ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)

ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)

  • 作者: ゲーデル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/09/15
  • メディア: 文庫



記号論理入門 (日評数学選書)

記号論理入門 (日評数学選書)

  • 作者: 前原 昭二
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本



 



集合・位相入門

集合・位相入門


  • 作者: 松坂 和夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1968/06/10
  • メディア: 単行本







 

ユークリッド原論 追補版

ユークリッド原論 追補版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 2011/05/25
  • メディア: 単行本

幾何学基礎論 (1969年)

幾何学基礎論 (1969年)

  • 作者: ヒルベルト
  • 出版社/メーカー: 清水弘文堂書房
  • 発売日: 1969
  • メディア: -

幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)

幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: D. ヒルベルト
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫

ブルバキ数学原論〈〔第1〕〉集合論 (1968年)

ブルバキ数学原論〈〔第1〕〉集合論 (1968年)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京図書
  • 発売日: 1968
  • メディア: -


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