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#3278 「天保の改革」が教科書に載っていない?:こんなに楽しい社会科の勉強 May 1, 2016 [データに基づく教育論議]

<更新情報>
 5/2 朝8時40分 天保の改革は世界史を挟んで後ろに載っているという指摘が合格先生からあったので、訂正した。どうしてこういうヘンテコリンな構成にしたのか、やはりわたしには謎である。
 5/2 11時20分 <余談-2>追記。『古事記伝』『ほつまのつたゑ』『古事記』
 5/3 お昼に<余談-3>追記 『驕れる白人と戦うための日本近代史』を紹介

 中2の生徒が2人、社会科の勉強の仕方がわからないというので、教科書を持ってこさせた。教科書や年表を調べながら、英語の単語の暗記用カード(3×6cmくらいの大きさで画用紙ほどの厚さ)に記入してみようというわけである。カードを使った項目暗記とA3用紙を使って図にする2通りの方法で勉強すれば、定期テストは90点以上とれるし、学力テストも85点はそれほど難しいことではない。社会ができないという生徒は、そういう努力をしない生徒だろう。
 各カードにはA面に項目名を書き、B面にそれに関連する事項を3-5項目記入していく。カードを作成した段階で、頭の中の整理が半分くらいはついてしまう。項目を一つ一つ調べて自分の手で書くことが勉強なのである。

 社会は暗記だけではすまない科目である。仕組みが見えてこないとわからないところは、数学の勉強と共通するところがある。
 たとえば、①江戸ではなく大阪が天下の台所であるのはなぜか、②大阪に各藩の蔵屋敷が並んでいるのはなぜか、③米相場やリスク回避の先物取引がなぜ大阪で産まれたのか、そういう問題意識をもって勉強するか否かで学力に大きな差がつく。
 税金(年貢)の仕組みや公共事業(橋・道路の整備、飲料用水路、農業用水など)の仕組み、人糞の回収方法と農業、古くから発達していた日本海航路や瀬戸内海航路、武士の収入や支出(すなわち家計)の仕組みは経済のあり方に関係している。
 農山村の自治の仕組みや江戸の町の自治組織としての火消しの役割を考えないと、江戸時代に警察機構の人数が極端に少ない理由がわからない。百万人の江戸の町に町奉行所は北町奉行所と南町奉行所の二つだけで、それぞれ「与力25騎、同心120人が配置され」(『涅槃の雪』12ページ)、百万人の町であった江戸市中の警察(町奉行所)にはわずか290人の人数しかいなかったのである。治安がよかったのはなにも現代だけとは限らない。日本は江戸時代から400年間世界で一番治安がよいのである。現代よりも江戸時代の方が治安がよいとさえいえる。東北大震災の福島や熊本地震の益城町で頻発した火事場泥棒は、泥棒の風上にもおけないという「泥棒の倫理」が徹底していた。
 百万人が住む江戸の町に治安要員が290人ですんだのは、自治組織のお陰である。揉め事はほとんどその自治組織内で処理されていた。揉め事があると、町の世話役や名主が出てきて仲裁を取り仕切る、当事者はその決定に従うのである。コミュニティの中で思い役割を背負っていた仲裁者の権威が高かったことと、当事者が納得するような公平な裁きができたをということがいまと異なる。弁護士なんぞは江戸時代では職業として成り立つ余地がなかった。

 当時の世の中の実情を知らないと社会科の「歴史」科目はなにがなんだかわけがわからない。暗記は重要だが、数百項目を暗記してすむような科目ではない。「なぜ?どうして?」と頻繁に問わなければ、相互の関連が見えてこない。それが見えてくると、地理と歴史と公民に接点が出てきて、勉強がとっても楽しくなる、社会科とはそういう科目です。

 各藩は年貢を取り立て、米を海運で運び、大阪蔵屋敷に運ぶ。取引量が多く米相場が立つくらいだから、全国からお米を集め、それを換金する場所として大阪がいくつも好条件を備えていたことがわかる、ではその好条件とは何か?
 年貢米や特産物を換金しなければ各藩の財政が成り立たない。お城の普請、家臣への支払い、橋や街道の整備、用水路の掘削整備などのインフラに関わることなどお金のかかることはたくさんある。地震でお城が壊れ、海辺の村や町が津波で大きな被害を出す。たとえば、熊本地震はいまだ収束しておらず、震度1以上の地震が1000回を越えたが、地震や津波ばかりでなく、台風被害や旱魃もたびたび全国各地を襲っていることはいまと変わらない。
 幕府は直轄領からしか年貢が入らないから、幕府財政を維持するために金銀銅の鉱山経営、そして商工業者や株仲間からの運上金や冥加金などの収入で財政運営をしていた。
 江戸の町人や武士たちがどのような生活をしていたのか、経済がどういう仕組みで動いていたのか、そういうことも歴史のうちに入る。

 対比しながら覚えていくと相互の特徴がよくわかる。たとえば、元禄文化と化政文化は百年ほど時代が違うが、それぞれ代表的な文学作品や芸術作品を並べて比較してみたらその特徴がよく理解できる。文化や庶民の生活は政治と関係がある。幕府の規制が厳しくなり、見えないところにお金をかけるようになったのが化政文化の特徴だろう。
 元禄も化政も元号が元になっていることを生徒たちは知らなかった。学校の授業では語彙解説をもっと重視してもらいたい。元禄は1688年から17年間、文化・文政は1818年から28年間で、その次の元号は天保の改革で知られた天保である。
 文学や芸術は元禄文化と化政文化にきっちりと分類できるわけではなく、そこからはみ出す重要な作品群があることも知っておきたい。日本絵画において群を抜いた天才絵師伊藤若冲(1716-1800)は青物問屋の商売から隠居し、1758年から絵を描くことに没頭し作品を残している。元禄と文化文政の時代の狭間にすぐれた作品を残した絵師である。絵を描くために他の雑事をすべて捨て去り、出家(隠居)した姿は、お釈迦様に似ている。江戸時代の浮世絵や日本絵画はヨーロッパの画壇に絶大な影響を与えている。そういうことも具体例を通して中学生は知っておくべきだ。

 生徒の教科書を見て、ほんとうに驚いたのは教育出版の歴史教科書に天保の改革(1841年~)が載っていないこと。驚きました、「ない、天保の改革がなかった」のです高校『詳説日本史』(山川出版社 2005年刊)には210ページにちゃんと載っています。

<合格先生から次の投稿あり、よって訂正します>5/2あさ8時40分追記
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天保の改革は、教科書に載っていますよ。
 ただ、構成が変なんです。
 享保の改革・寛政の改革のあと、世界史を挟んで、大塩平八郎~天保の改革と続きます。
by 合格先生 (2016-05-02 04:36)
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 なるほど、享保の改革と寛政の改革の後は世界史に飛んでいたので、そこで江戸時代が終わってしまったと思い込みました、その後まで見てなかったのはわたしのミスです。山川出版の高校『詳説日本史』はそういう誤解が生じないような構成になっていました。(ここまで追記)

 江戸の三大改革の年と人と主要政策をカードに書いてみなさいと指示したら、享保の改革と寛政の改革が載っているだけで、天保の改革の記述がない。こんな杜撰な教科書を使っているのかとビックリ。わたしが教科書を編纂するなら江戸の三大改革はどれも外せない項目である。なぜ、こんなことになったのか理由がわからない。実際には世界史を挟んで、その後に書かれてある。ここは江戸時代の三つの改革の共通点と相違点を比較しながら読み取るように誘導すべきで、そういう配慮が構成に見られないのはどういう了見か、やはりわたしにはちっとも理解できないのである。(削除箇所の後の部分を追記した)

 各項目を三つぐらいずつグルーピングしてカードに書いて覚え、A3の用紙に起きた年順に関連図を描いて眺めたら歴史分野は90点はとれる。地理や公民も類似の方法で攻略可能だ。
 老中水野忠邦による天保の改革は「倹約令」を出して、贅沢品や華美な衣服を禁じた。さらに江戸に集まってきた人々をふるさとに強制的に返す「」人返しの法」を発して百姓の出稼ぎを禁じ、江戸に流入した貧民の帰郷を強制した。株仲間の解散も命じたのである。
 現代の日本で首都圏に集まった人々に帰郷を強制したらどういうことになるか、想像してもらいたい。職を失い生活に困窮する者たちが続出することになる、実際にそうなった。改革とは名ばかりで、ひどいことになったのである。唐津藩水野家の次男として生まれた水野忠邦は、長男が死んで家督を継いで藩主になると五年後に、出世欲に駆られて、唐津から浜松への所替えを幕府に申し出た(『涅槃の雪』56ページ)。実質の石高は10万石も低い。唐津藩では長崎奉行を賜るから、幕閣として立身出世の途が閉ざされるのである。水野忠邦は領民を棄て、藩士に犠牲を払わせても幕閣の一員として出世したかった。そして2年間で首尾よく老中首座に上り詰めるのである。頭が切れはしたが、傲慢な水野は寛政の改革の失敗から何も学んでいなかった。

 西條奈加の小説に『涅槃の雪』から紹介したが、主人公の門佑は南町奉行所で与力として働いており、水野が政権を握った天保改革の最中(さなか)に生きている。上司は北町奉行所の遠山左衛門尉景元、通称「遠山の金さん」である。天保の改革では庶民の楽しみであった寄席や歌舞伎小屋が取り潰されていく。雛人形の高級品が狙い撃ちにされ、禁止されたから、在庫を抱えた高級品店がつぶれ、大店(おおだな)の娘が吉原に身を落として自殺するようなことも起きる。高級品を作る腕のよい職人は仕事がなくなるから失業する。寄席をつぶせば、芸人も寄席の経営者も失業する。そんな話がこの小説に載っている。
 女浄瑠璃の取り締まりも出てくる。しばしば売春を伴っていたから、風紀紊乱の元として水野忠邦の指示の下、町奉行所による取締りが強化されたのである。
 江戸時代まで日本人はセックスにおいてはじつにおおらかであったが、そういうことは一切学校で教えない、高校日本史の授業では教えてもらいたい。日本人が数千年にわたって受け継いできた性風俗はいまや消滅しかかっている。性風俗は人間存在と宗教、そして思考や行動の根源に関わる問題だから、性に目覚め活発に行動しだす高校生や大学生は民俗学関係の本を読み、日本人が受け継いできた性風俗を知ってもらいたい。キリスト教の国々とはまったく異なる性風俗を日本人は数千年間受け継いできたのである。裸が恥ずかしいものだという感覚は江戸時代まではなかったから、混浴が普通だった。祭りや盆踊りは神様やご先祖への祝祭だから、この数日間だけは乱交が普通に行われた。もう百年もしたら、ほとんどの日本人が古代から引き継いできた性風俗がどのようなものであるのか、一部の学者しか知らないということになりそうである。そのときに日本の伝統的な性風俗は絶滅種としてレッドブックに記載されることになるのだろう。キリスト教国の性風俗はごめんこうむりたい。理由はフロイトやライヒの研究*が明らかにしているように、性的エネルギーは生命エネルギーそのものであり、性的欲求を無意識下で抑圧すれば精神神経症患者がたくさん出てしまう。キリスト教国のセックス観は、生命エネルギーの流れに蛇口を取り付けようというもので、無理がある。日本人のセックス観は抑圧のない開放系であった。それは自然の豊かな実りへの感謝とともにあり、おおらかで素直で健全なもの。『古事記』の冒頭には国産み神話が書かれているが、伊弉諾と伊耶那美のセックスから日本という国が始まっている。おおらかなこのセックス観や性風俗を、人類の平和のために世界の国々へ「輸出」したいくらいだ。フロイトの弟子であるライヒは異端の系譜であるが、なぜか永井荷風に師事して破門された凄腕の翻訳家平井呈一(ラフカディオ・ハーンの著作の翻訳が多く、その翻訳スキルは群を抜いている、なにより翻訳文の日本語が美しい)が連想される。
 平井は永井荷風のところへ出入りしていたときに、荷風がみずからの楽しみのために書いていたエロ小説『四畳半襖の下張り』を持ち出して仲間内で回覧、これが世に出るきっかけを作ったが、荷風の逆鱗に触れて破門になる。永井の切れる日本語の文章と比べても、平井の翻訳文は凄さにおいて引けを取らぬ。その辺りが、フロイトとライヒの事情に似ているものを感じた理由だろう。
 宮本常一著『忘れられた日本人』、鈴木理生著『殿様のお世継ぎのつくりかた』、樋口清之著『性と日本人』(講談社文庫 1985年刊)、下川耿史著『盆踊り 乱交の民俗学』、こういうことがわかっていないと、古典文学の世界の理解も浅くならざるをえません。

性と文化の革命 (1969年)

性と文化の革命 (1969年)

  • 作者: W.ライヒ
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 1969
  • メディア: -

 わたしがもっているのは、1970年の初版・単行本である。このころは、精神分析やオルゴンエネルギーに興味があった。ヨーガのクンダリーニ・チャクラに興味をもちはじめたのも同じ時期である。

*#2812 日本人の性意識の変化: Women express pride in remainig a virgin Sep. 18, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-09-18


 日本古来からの性風俗の奔放さは、神事や農業と結びついているからで、セックスは繁栄の象徴なのであった。そういうものと山本周五郎著『小説日本婦道記』に描かれた武家の女の凛とした生き様が同時に存在しているから、江戸情緒というのはずいぶんと幅が広く奥行きのあるものに感じられる。

小説日本婦道記 (新潮文庫)

小説日本婦道記 (新潮文庫)

  • 作者: 山本 周五郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1958/10/28
  • メディア: 文庫



 ところで、職人文化はその仕事をめでて大金を支払う数寄者がいなければなりたたない。儲けたお金を自分の趣味に合わせて気前よく使うというのも江戸情緒であると同時に江戸の文化でもある。
 お上が贅沢を取り締まると、そういう最高水準の仕事をする職人たちが失業し、仕事がなくなれば最上級の職人の技術の伝承ができなくなってしまう。
 したがって、目利きである数寄者の減少も職人文化の伝承にとっては痛いのである。こういう話は現代にも通じる普遍性をもっている。

*#1801 西條奈加『涅槃の雪』とわがふるさと Jan. 11, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-01-11

*#2631 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(1) Mar. 31, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-30-1

 #2634 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(2) Apr.7, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-06

 #2643 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(3) Apr. 13, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13


 1800年前後のところは、林子平の「三国通覧図説」「三国通覧輿地路程図」や『海国兵談』を突っ込んで説明してもらいたい。領土領海について先人たちがどのように考えていたのか中学生は社会の授業で知るべきだ。とくに北方領土問題を抱える根室で「三国通覧図説」や『海国兵談』を授業で採り上げる意味は大きい。

海国兵談 (岩波文庫)

海国兵談 (岩波文庫)

  • 作者: 林 子平
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1939/03/02
  • メディア: 文庫


 大地みらい信金が主催して、地元の考古学者の北構保男先生所蔵の古地図百葉ほどを展示したことがあったが、そのなかに「三国通覧輿地路程図」があった。北構先生は印刷会社の会長でもあるが、その地図を現社長の山田さんが複製して、カレンダーとして顧客の一部と好事家に配ったことがある。幸いなことにわたしも一枚戴いたので大切に保存している。
 面白い構図の地図で、
中国大陸やロシアを下に配置し、日本列島はそれらの国が太平洋へ出るのを阻止するように、弧を描いて覆いかぶさっている。このように、通常の地図とは違って、東を上にしてユーラシア大陸と日本列島を見ると、日本の地政学的な問題がよくわかる。『海国兵談』の林子平らしい視点から描かれた地図である。
 ロシアと中国にとっては、日本は太平洋への進出を阻む目の上のたんこぶである。どちらの国も領土・領海膨張路線をとっているから衝突は避けられないのだろう。両国の領土領海拡張癖がなくならない限り、領土領海の揉め事におつきあいしなければならないのである。今日のニュースによれば、沖ノ鳥島が島ではなくて岩礁だから、沖ノ鳥島を基点とする半径200海里の排他的経済水域は認められないと台湾が言い出したようだ。いままでそういうことを台湾が主張したことはなかった、背後に中国の影が見える。巡視艇と漁船団を繰り出すと台湾当局がアナウンスしている。台湾漁船団が北洋の公海上でのサンマ漁をやりすぎて、資源が激減しつつあるから、他の水域を狙い始めた。この十年ほどで肥大化した台湾や中国の水産会社は原料がなければつぶれてしまうから、漁場開拓に必死だ。公海上だけではもう間に合わなくなってきている。

*#1325 古地図2葉 三国通覧輿地路程図と全圖蝦夷改正 Jan. 2, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-01-02

 #1328 「古地図(2) 三国通覧輿地路程図」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-01-04-1

 #2260 東西の古地図に見る日本・北海道・千島:展示会 Apr. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-10


 田沼意次の時代(1772年10代将軍家治の側用人となる)も蝦夷地開発の関係で特筆すべきだ。田沼意次は蝦夷地にたくさんの武士を送り込むことを計画していた。北方の開発を大々的にやっておけば、日本の版図はずいぶん大きかっただろう。重商主義の政策が、頑迷固陋の幕閣に嫌われた。寛政の改革で松平定信が従来の重農主義路線に戻してしまうのである。頭のよい者ではあったろうが、その政策は大失敗であった。なぜ、大失敗なのか、中高生はその政策を調べて箇条書きにして、しばし眺めてから、関連図を作って考えたらいい。

 田沼意次は重商主義路線へ舵を切り、新田開発や武士を数万人単位で送って大々的な蝦夷地開発をやろうとした革新的な政策立案者だったのだが、田沼というと賄賂とイコールになって評価が低い。ところが政治家や役人が賄賂をとることはいまも昔も変わらないから、取り立てて田沼が貪欲だったとは言いがたいであろう。最近の例では、経済産業大臣だった甘利明がいる。URと政治家の癒着は広く噂されてきたところで、甘利氏の例は氷山の一角にすぎない。東京地検の動きも実に遅かった。
 大石慎三郎『田沼意次の時代』は1991年の出版であるが、中学社会科担当の先生たちにぜひ読んでもらいたい。いわゆる「通説」の中にはたぶんに怪しいものが多いから、先人の労作に目を通していただき、授業で説明すれば、歴史に興味をもつ生徒が増える。高校受験や大学受験レベルの社会科の知識の切り売りでは、どんなにすばらしい授業をしても、トップレベルの生徒たちの心を打つことは永久にないだろう。弊ブログでは何度も書いているが、教師は労働者ではなくインテリである、広汎で深い知識そのものが武器であることを自覚し、専門知識を深め、広い教養のなかでその知識を統合して生徒たちに授業で開示してもらいたい。

 生徒がカードを50枚ほど書いたら、チェックしてあげるつもりでいる。次のステップは、A3用紙に関連図の描き方のコーチである。教え方が下手なわたしには、一人ひとりに手間を惜しまぬことしかよい案が浮かばぬ。TOSSの先生の授業はいま思い出しても上手だった。

<余談-1>
 好奇心が沸いたら、さまざまな本を高速で読みこなすことができるように、音読トレーニングが大切である。とくに、行の折り返しの部分の先読みスキルがしっかりすれば、読解力がはっきり上がる。
 「読み・書き・そろばん(計算)」の基礎学力のうち、もっとも重要なのが、先頭にある「読み」である。

<余談-2:『古事記伝』>
 教科書に本居宣長の『古事記伝』が出てきたので、たまたま書棚にあった岩波文庫『古事記伝』を中2の生徒に見せてあげた。賀茂真淵があなたしかいないと、いま注釈を付けておかないと後の世の人々が理解のできないものになると、本居宣長に自分がやれなかった仕事を託すのである。江戸時代にはすでに漢字の訓読みがわからなくなっていたのである。
 カードA面には「『古事記伝』1790年(寛政10年)、『古事記』8世紀初頭」と書かせた。B面には「①本居宣長、②賀茂真淵から仕事を託された、③『古事記』に古語の訓を付し、そして注釈をつけた」と書いてもらった。
 もう一つ、『古事記』のカードを自分で調べて作成させた。A面は「『古事記』712年」、そのB面には、①稗田阿礼が暗誦していたものを太安万侶が漢字を充てて筆録、②天武天皇の指示で編纂」と書く。関連があるので、『日本書紀』のカードも作らせた。720年舎人親王が中心となって編纂したもの。
 古事記の元となっている本だと言い伝えられている原文対訳の『ほつまの伝え』が書棚にある。これは貴重な本で、上代文字と漢訳が上下に組まれている。五七調の1万行の詩で構成されている。すごい本だ、これもたくさんの人に読んでもらいたい。わたしがもっているのは、平成6年の初版である。新宿紀伊国屋本店で、出版されたばかりのこの本をたまたま見つけ、夢中で立ち読みして内容を確認し、購入した。あっというまに2時間ほどが過ぎていた、感動の出遭いをした本である。
 古事記は原文はたいへん難しいので、明治天皇の玄孫である竹田恒泰著『古事記完全講義』と『現代語古事記』を推奨する。とっても読みやすいので、中学生や高校生はこの本で日本という国の成り立ちを知ってもらいたい。自分の国の成り立ちすら知らないようでは、国際人にはなれない。もちろんならなくたってよい。(笑)

ほつまつたゑ

ほつまつたゑ

  • 作者: 鏑 邦男
  • 出版社/メーカー: 溪声社
  • 発売日: 1998/08
  • メディア: 単行本

現代語古事記: 決定版

現代語古事記: 決定版

  • 作者: 竹田 恒泰
  • 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
  • 発売日: 2011/08/30
  • メディア: 単行本

古事記完全講義

古事記完全講義

  • 作者: 竹田 恒泰
  • 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
  • 発売日: 2013/09/17
  • メディア: 単行本


<余談-3:この時代に白人国家は何をしていたのか?>
 この時代に白人国家の領土拡張が盛んに行われ、世界のいたるところが白人国家の植民地にされました。
 日本の江戸時代を白人の世界支配の文脈の中で、白人国家対有色人種の国という対立軸でとらえる必要があります。大東亜戦争はそういう文脈の延長で分析すると、まったく違う様相をみせます。『驕れる白人と戦うための日本近代史』をいう本がありますが、著者の松原久子さんはドイツ語でこの本を書きました。出版した後に石をぶつけられたと書いています。白人たちは自分たちがしてきた悪逆非道な自らの歴史を日のあたる場所に出されるのが嫌なのです。
 白人国家対有色人種の国々という文脈でいま一度世界史を、そして日本史を眺めてください。
 わたしは単行本の初版と文庫本の両方もっています。線を引いているので初版の値打ちはありません(笑)。歴史が大好きな生徒たちにプレゼントするために文庫本を数冊買いました。まだ、2冊残っています。

驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫)

驕れる白人と闘うための日本近代史 (文春文庫)

  • 作者: 松原 久子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/09/03
  • メディア: 文庫





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涅槃の雪 (光文社時代小説文庫)

涅槃の雪 (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 西條 奈加
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/08/07
  • メディア: 文庫



田沼意次の時代

田沼意次の時代

  • 作者: 大石 慎三郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1991/12/18
  • メディア: ハードカバー

田沼意次の時代 (岩波現代文庫―学術)

田沼意次の時代 (岩波現代文庫―学術)

  • 作者: 大石 慎三郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/06/15
  • メディア: 文庫

忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/05/16
  • メディア: 文庫
盆踊り 乱交の民俗学

盆踊り 乱交の民俗学

  • 作者: 下川 耿史
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2011/08/19
  • メディア: 単行本
混浴と日本史 (単行本)

混浴と日本史 (単行本)

  • 作者: 下川耿史
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/07/24
  • メディア: 単行本

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コメント 6

tsuguo-kodera

 素晴らしい講義でした。一気に読んでしまいました。私は歴史を勉強したのは大学受験の日本の歴史全集だけと言えます。大学も高校も試験で点数をとりやすいから、良い成績をもらうために教科書を暗記しただけです。
 もちろんあげて頂いたすべての本も目を通したこともなく、そのような著者や研究者が居たことも知りませんでした。
 でも不思議なのです。管理人さんの今日の論旨の隅から隅まで賛同し、同じような考え方をしているし、むしろしていたと言うべきなのかもしれません。
 なぜそうなのか。不勉強家の私が勉強家であり、抜群の頭脳の持ち主と似た考え方になっているのか。もちろん私はスッポン、管理人さんはお月さまなのに似た考え方になるのか。
 また新しい好奇心が湧いてきました。何故だろうがです。知識はなくてもここで一人ブレーンストーミングをして考え方を整理すると創造性につながるのを知っています。それだけなのです。今の知識を最大限に生かし整理する手法が創造性開発の教えなのです。
 私の手法も同じ、ただ最後に絵やモデルを発想に使うだけなのです。此処が一番難しいのですが。ありがとうございます。
 なお、またブログを書き始めるつもりです。本の売り方を考えて気が付いたことを書きたくなりました。今日のコメントと同じ理屈ですが。あり難いものです。南無阿弥陀仏。
by tsuguo-kodera (2016-05-02 04:27) 

合格先生

 天保の改革は、教科書に載っていますよ。
 ただ、構成が変なんです。
 享保の改革・寛政の改革のあと、世界史を挟んで、大塩平八郎~天保の改革と続きます。
by 合格先生 (2016-05-02 04:36) 

ebisu

合格先生

おはようございます。
載っているのですか、見落としましたね。

>ただ、構成が変なんです。
>享保の改革・寛政の改革のあと、世界史を挟んで、大塩平八郎~天保の改革と続きます。

分断されて載っているのですか、たしかに「構成が変」ですね。

本文を訂正して、合格先生のコメントを挿入しておきます。
就寝前の貴重なお時間を割いてくださって、ありがとうございます。

by ebisu (2016-05-02 08:29) 

ebisu

koderaさん

おはようございます。
訂正の方を優先したので、貴兄へのコメント返しが後になってしまいました、ごめんなさい。

貴兄ととわたしは思考が似たところがあるのはやってきた仕事から当然のことだと思います。システム関係の知識はわたしとはぜんぜん量も質も違っています。理系の学部で学んだ貴兄には比較すべくもありません。とくにハードウェアの領域や理系のソフトウェアの部分はわたしの弱点です。

koderaさんはワープロ専用機開発の時代に、富士通とシャープでそれぞれ製品開発を担当されました。わたしは1979年からいくつかのシステムを開発した後に、1983-4年に統合システム開発を担当して、システム開発のさまざまな専門書を読み、実際に仕事でそれらの本にあった技能を使って磨いた経験があります。
理系のkoderaさんと文系のわたしは、共通の勉強と仕事をしたようです。

頭の中に、イメージやモデルをつくって考え、それを紙に描くあたりもよく似ています。
これはシステム関係の学習をする前から、記憶にある限りでは中学のときからです。
その辺りもたぶん共通しているのでしょう。もともと、システム思考向きの頭脳の使い方をしていたのです。そして、それがある時期に仕事になってさらに磨かれた。

時代の先端をいくよい仕事をいくつか経験するというのはありがたいことです。
会社という場は、ちゃんと稟議書を書いて説得できれば、いくらでも必要なお金を使わせてくれます。個人ではできないスキルアップが仕事を通じて獲得できます。わたしたちは、いい時代にサラリーマンをしていましたね。(笑)
by ebisu (2016-05-02 09:08) 

ZAPPER

関孝和、水戸光圀。教育出版の歴史教科書には昔から載っていませんね。いわゆる江戸三大改革の内容についても、他の教科書会社より貧弱です。

それでもまぁ、以前よりはだいぶ「まし」になったとは思います。以前の教育出版の地理なんかは、本当に最悪の見本でしたから(苦笑)。

でもしかし、この釧根の地では、教科書採択は「変えちゃいけないもの」みたいですから、教科書は常に教育出版で決まりなのでしょうね…。
by ZAPPER (2016-05-02 11:21) 

ebisu

ZAPPERさん

『大日本史』を編纂した水戸光圀も載っていないのですか。
釧路市の鳥取神社は鳥取藩士がつくった神社ですが、鳥取神社は水戸徳川家に伝わる家宝がいくつかあります。鳥取藩と水戸徳川家は縁が深い。

*#3188 釧路鳥取神社でルーツを探す Nov. 25,2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24-1

日本が誇る江戸期の大数学者である関孝和も載っていないのですか。
こう並べると、単なる見落としではなさそうですね。
こんなヘンテコリンな編集の教科書を採択しているのは、いったい誰なんでしょう?
採択されている教科書を並べて見たら、その地域の教育レベルがわかりそうです。

高校の山川出版の『詳説日本史』はしっかりした編集です。
by ebisu (2016-05-02 11:48) 

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