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#3159 日本語読み・書きトレーニング(6):数学と「読み」のスキル-2 Oct. 19, 2015    [数学]

<追記・編集メモ>
 10/20 朝10:40 漢字変換ミス修正、追記および編集

 10/21 朝9:00 D領域について追記

<高校数学と「読み」 >

 今回は高校数学の問題を2例挙げて、どのようなそしてどれくらいの深さの「読み」が要求されるのか検討してみます。国語の問題の「読み・書き」の「読み」スキルとは異なる「数学特有の問題文の読み方」へ言及することになるでしょう。
 換言すると、標準的な普通科の数学を理解するために中学時代にどれくらいの「読み・書き・計算」能力を育てておけばよいのかを高校数学の観点から見ておこうというわけですから、基礎学力ではなく標準学力という視点から眺めることになります。

 先週2年生から質問のあった問題は、次のような条件付確率の問題でした(進学講習のプリントからの質問でした、間違いないと思いますが、記憶で書きます)。
---------------------------------------------
XYZの袋に赤玉と白玉が入っている。
 X: 赤4  白2
 Y: 赤2  白4
 Z: 赤1  白5
このとき、Xの袋から赤玉を引く確率を求めよ。
---------------------------------------------

 質問した生徒は問題文の意味理解が十分ではなかったので、問題文を図にしてどういうことを求めているのか、題意解説をしました。
 ついでやらなければならないのは、条件付確率の公式解説です。
 
 条件付確率とは、ある事象Aが起こったときに事象事象Bの起こる確率をいい、これを PA(B)と書きます

 この問題に即していうと、「赤玉をとりだした(事象A)ときに、それがXの袋の赤玉(事象B)である確率」ということになります。注意しなければならないことは、この問題の標本空間(=全事象)は赤玉を取り出すということです。白玉を含めた18個が全事象ではないというところが読みのポイントなのです。
 ところが公式は白玉も含めた標本空間を対象にして説明されます。数学的な手続きとしては厳密なのですが、解説は冗長です。

 PA(B)=P(A&B)/P(A)

  この問題に即して計算すると、
 P(A)=(1/3)*(4/6)+(1/3)*(2/6)+(1/3)*(1/6)=7/18・・・①
  P(A&B)=(1/3)*(4/6)=2/9・・・②

  PA(B)=P(A&B)/P(A)=(2/9)/(7/18)=4/7・・・③

 ①は全事象は赤白全部の玉の数ですから18、それに対して赤玉は7個ありますから、こんな計算しなくても表を一瞥しただけで全事象は18個、そのうち赤玉は7個ですから、「P(A)=7/18」は即座に算出できます。
 いずれにせよ、①②を算出してから③の値を求める。「守・破・離」の「守」は公式を適用するのに慣れるということです。公式を使うとこういう計算になるわけですが、問題を読み替えられたら、解法はずっと簡単になります。

   「赤玉を取り出したときに、それがXの袋の赤玉である確率」
 赤玉の全事象は7個、そのうちXの袋にあるのは4個、したがって確率は・・・4/7

 言い換えをして、その意味するところを図でイメージできれば、それだけでじつに簡単に問題が解けてしまいます。どこが違うのかと言いますと、図にした後で公式へ向かわずに、根本的な意味理解をするところが違うのです、つまり、読みの深さが違うんですよ、公式が要らなくなるほどに。途中のややこしい計算は一切なしで答えへまっしぐらです。

 また、次のように問題文の読み替えをしても単純化ができます
  「XYZの表を「Xの袋」に網掛けして、さらに赤玉全部に網掛けをすると、両方の網掛けが交わる部分は赤玉4個、そして赤玉の全部の個数は縦に表を集計して7個。」
 赤玉であってそれがXの袋の赤玉である確率を求めたらいいから、答えが4/7であることはすぐに了解できるでしょう。
 条件付確率はこのように問題の読み替えができれば、単純な問題に変わります。頭の中にどのような図を描いて問題を整理するかが勝負所です。
 「数学的な読み」の厳密さは、それぞれの分野の基礎的な理解を前提にしていますから、基礎的理解なしには問題文を読み切れないという現実があります。そこから、いくら文学書をたくみに読み理解できても、数学の問題文の読解はまったく別世界であるというあたりまえの結論に辿りつきます
 ここまで読めれば、公式を自在に駆使できるトレーニングを積んでいながら、公式にとらわれずに問題の本質を見抜き、自在に対処できる、「守・破・離」の離のステージ。


 もう1題、2日前に質問のあった2次関数、円の問題、これも進学講習プリントです。こちらはメモってありましたので内容はプリントそのまま、間違いございません。(笑)
---------------------------------------------
  座標平面上に2点、A(3,2) B(1,-2)を通る円 K:x^2+y^2-8x+ay+b=0 (a,bは定数)がある。
(1)このとき、a,bを求めよ。
(2)円Kの中心座標を求めよ。
(3)直線ABと円Kで囲まれた2つの部分のうち、小さいほうをD(境界線を含む)とする。点(x,y)が領域Dを動くとき、x-yの最大値と最小値を求めよ。
---------------------------------------------

 (1)は「a,bを求めよ」とありますから、連立方程式の問題であることは容易に推測がつくでしょう。円Kの式に座標AとBの数値を代入すると方程式が2つできます。後は計算の手間のみ、中学3年生でも計算可能です。(式は省略)
 答えは、a=2, b=7

 (2)は元の円の方程式にa,bを代入して変形するだけですから、結果だけを示します。これも計算は簡単です。
    (x-4)^2+(y+1)^2=10              中心座標O(4, -1)

  (3)をどのように読むかが問題です。
 質問した生徒にこちらのほうから質問を投げてみました。「直線ABと円Kで囲まれた2つの部分のうち、小さいほうをD(境界線を含む)とする」と問題文に書いてあるので、どういうことか図示するように指示しましたが描けません。理由を訊くと問題文の意味がわからないという返事。
 さらに具体的な文言を確認すると、「小さい方をDとする」という文言が何を言っているのかわからないとの返事。そこだけ見ても「直線ABと円で囲まれた2つの部分」とつなげて考えないと「小さい方」の意味が正確に理解できません。漫然と字面を追っていただけ、中学校でやっていた「朝読書」と同じです。
 問題文を読んでも、概略図のイメージが脳内につくれないとこのようにたった2行の問題文を理解できない。おおよそ2/3~3/4の生徒に起きています。字面を追っているだけで、問題文の情報を処理して脳内にイメージをつくり、図の上での意味の確認作業ができていません。たぶん、中学1年生の1次方程式の文章題の指導や練習量、そしてトレーニングの仕方に、大きな問題がありそうです。この段階から、問題文を読み、イメージ構成トレーニングをしておくべきなのでしょう。
 概略図を実際に描くトレーニングを何度も何度も繰り返すことで、脳内にイメージを創ることにも慣れていきます。

 手順を示すと、座標(4, -1)を中心に半径√10の円を描き、次いでA(3, 2), B(1, -2)に直線を引いて眺めます。ここまでくれば円とABで囲まれた小さい方の意味がわからない生徒はいません。
 後で確かめると√10≒3.1であることも概算できていませんでしたから、y軸と円の位置関係も理解できていなかった。具体的な円と弦の概略イメージがないのでは、問題文のこの文言の意味がわからないのも無理ありません。
 こういうときは描いて見せて、描かせて見るしかないのです。わたしが黒板に概略図を描き、その後で黒板を見ないで描かせます。自分の手で作業させないと覚えられません。もう「小さい方」の意味もD領域もしっかり理解できました。

 次にとりあげるべきは、後続する「点(x,y)が領域Dを動くとき、x-yの最大値と最小値を求めよ」という文言です。x-yの値を問題にしているので、それをkに置き換えます。kはdie Konstante(ドイツ語"定数")のkですが、この場合は一定の値ではなくて変化する量ですからkで置き換えるのはちょっとおかしいとは思いますが、細かいことはとりあえずご勘弁を願います。

   x-y=k・・・①  ⇒  ℓ:y=x-k・・・②

 ①から②が得られます。①を見たときに直線の式「y=ax+b」に変形できることに気がつくのが数学的なセンスです。
  この直線を円Kの上の方から下へ平行移動させる動画をイメージします。最初に円と接点をもち、ついで2箇所で円周を切り、そしてまた接点をもち、その後ゆっくり離れていくのがイメージできれば問題は解けたも同然です。
 直線 ℓ:y-x-kが円から離れていくイメージに、なぜかキューブリックの映画「2001年宇宙の旅」の1シーンが重なりました。宇宙船の修理のために宇宙服を着て船外へ出たクルーが、人工知能「ハル」に殺されて、宇宙船から離れて回転しながら漆黒の闇に吸い込まれていくシーンです。

 円kの外略図を描くためには、円の中心と半径、そして点Aと点Bがあればよい。r^2=10でしたから、r=√10。
  3^2<r<4^2
  3.1^2<r<3.2^2
 これより、√10は3.1と3.2の間に、そして3.2よりにあることがわかります。そうすると、y軸と円kの距離はB点のx座標からrを引いてえられるので、おおよそ4-3.2≒0.8だけ離れています。円の中心(4,-1)にコンパスの中心をおいて、半径3.2で円を描けばいい。座標を1cmの単位でとればほぼ正確な図がかけます。
 実際には概略図を描くために必要な計算を1分程度でやれる計算力があるかどうかが重要です。時間の制限の中での勝負ですから、トロトロやっていたのでは埒が明きません。高校数学はこうした単純計算を高速でやることが当然の前提の上に成り立っています。そんなことを意識して勉強している中学生も中学校で数学を担当されている先生も稀です、しかし、高校へ入学すれば、単純計算が高速でできることが前提になって問題が組み立てられています。高校数学をこなす標準学力を支える基礎計算力とは相当にレベルの高いものだということ
 全珠連珠算3段程度の暗算能力があれば、高校数学は計算の速度と精度において圧倒的に有利といってよいでしょう。定積分の計算のとき、四則演算の量の多さに辟易している人は多いでしょう。

 最初のポイントは①の式、それが直線の式②を表すことに気がつくことです。そこまで読めたら、後はその直線の式が上から降りてくる動画イメージで確認すればよいだけ。上から降りてくるときに最初の接点がkの最小値、そして円から離れるときが最大値になりますが、この問題には「領域Dを動くとき」という制限がありますから、領域Dの下端がkの最大値だとわかります。
 ここまでくれば後は計算力での問題です。
 円の直線の接点は円Kの式のyに(x-k)を代入して、判別式がゼロになるkを求めます。
 
  k: x^2+(x-k)^2-8x+2(x-k)+7
      =2x^2-2(k+3)x+k^2-2k+7

  この式から判別式を作るのは簡単です。
 
   D={-2(k+3)^2} - 4*2(k^2-2k+7)
     =4(k+3)^2-4*2(k^2-2k+7)
 
  接点はD=0ですから、両辺を4で割ると計算が楽になります。できるだけ数字は小さくしてやるのが計算の定石です。計算結果は次のようになります。

    k^2-10k+5=0

 計算がちょっとしんどかったかもしれません。後は2次方程式の一般解の公式を適用すれば解が求められます。

    k=5±2√5

 k=5+2√5のときは、領域Dを通らないので題意にあいませんから、k=(5-2√5)が(x-y)の最小値、k=3が最大値となります。  
 
 計算がちょっと大変ですが、これくらいの計算力がなければ「標準問題」は解けません中学校時代に時間を計って計算トレーニングをしなかった人には結構厳しいでしょう。計算は少し工夫すれば、楽にやれます。途中で判別式の両辺を4で割ってしまう操作がそれ。どのようにやれば単純化できるのか、常に考えながら計算を進めましょう。

 ついでに解説しておきますと、判別式がゼロになるときに出てきたもう一つの解のk=(5+2√5)は②の直線の式と円の下側の接点とy軸の交点座標を表しています。
   y=x-(5+2√5)
 √5の値は「富士山麓にオウム啼く=2.23620679・・・」は暗記しておきましょう。二桁わかれば十分ですから、「5-2*2.2=0.6」、「5+2*2.2=9.4」となります。
 これくらいの図なら、A4の用紙に定規で1cmを単位として正確に座標をとり、円を描いて、直線を平行移動させて確認すべきです。普段の勉強をそこまでやっておけば、理解がぐんと深くなります。 

〈11月3日追記〉
 ハンドルネーム ペトロナスさんが「点と直線の距離の公式」を使った解法をブログに載せていることをコメント欄で知らせてくれました。こちらの解法もやってみてください。
------------------------------------------------
円と直線で囲まれた領域の問題は、進研模試の過去問です。
(2)に「点Aにおける円Kの接線の方程式を求めよ」が入ってます。
詳しい説明はブログ記事にUPしています。
出題者の意図は円Kの接線と円Kの中心の距離が半径√10であることから点と距離の公式を使って解いて欲しいのだと思います。

http://blogs.yahoo.co.jp/east201110/13427565.html
by ペトロナス (2015-11-03 15:13) 
-------------------------------------------------

 高校数学の問題文の「読み」の実際と、問題をより速く理解するための「静止画イメージ」(条件付確率)と「動画イメージ」(2次関数)利用の実例を挙げました。「数学的な読み」は対象となっている分野の基礎的な理解を抜きにしては成り立たぬということ、文学も『源氏物語』を原文で読むぐらいに深まれば同じ現象が現れます。登場人物相互の社会的身分の距離によって敬語が書き分けられているので、その辺りの基礎的理解なしには理解ができません。同型性がここにも顔を出しています。納得はしていただけないでしょうが、型という点から考察すると、数学の問題を解くのも源氏物語を原文で読むのも、同じという話です。

 数学の問題文の読みは、脳内で問題文にある条件を整理しながら図をイメージできたら、「読み」が高速になると同時に飛躍的に深くなります
 問題文を読み、その中から問題を解くために必要な条件を整理しながらそれを脳内にイメージとして展開していくことが、どれほど威力をもつかお分かりいただけたのではないでしょうか
 女子が苦手なのは、イメージを扱う部分です。脳の物理的な大きさには性差があって、男のほうが1割ほど大きい。そのことにが関係しているのだろうと思いますが、男子はイメージを操作することにおいて女子よりも圧倒的に有利です。男子生徒は生物学的に有利な脳の機能を生かして問題にチャレンジしてもらいたい。
 脳が1割ほど大きいからイメージを操作しやすいのか、それとも別な機能の点で男のほうがイメージ操作が有利になるのかは、医学的にははっきりしていません。男の脳と女の脳はその大きさも働き方も異なっているということだけは確かなようで、脳科学が脳の機能の性差を明らかにしつつあります。
 「女の考えることはわからない」とは男の台詞ですが、女たちも「男はちっとも女の気持ちをわかってくれない」と言ってます。お互いに永遠の謎ですから、興味が尽きないのかもしれません。(笑)

< 余談:数学描画ソフトGRAPES >
 フリーソフトです。関数の概略図がうまく手書きできないとき、あるいは書いた概略図が正しいかどうかを確認するときには、関数を入力して試してみてください、ソフトが描画してくれます。
 何度か使ってみましたが、とっても便利です。マニュアルや仮説の問題及び解説がついているのでそれを読むもよし、本が出ているのでそちらを買うもよし。

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~tomodak/grapes/

 「世のため人のため」、そうした心意気で仕事をしてくれる人がいるのはとってもありがたいことです。
 


*#2853 『釧路市学力保障条例の研究(1)』東大大学院教育行政学論叢 Oct. 29, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-29


*#3154 日本語読み・書きトレーニング(1) Oct. 11, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-11-1

 #3155 日本語読み・書きトレーニング(2):総論 「読み」と「書き」 Oct. 12, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-12

 #3156 日本語読み・書きトレーニング(3):先読みの技 Oct. 14, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14

 #3157 日本語読み・書きトレーニング(4):「書き」の「守・破・離」」 Oct. 15, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14-1

 #3158 日本語読み・書きトレーニング(5):数学と「読み」のスキル Oct. 16, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-15

 #3159 日本語読み・書きトレーニング(6):数学と「読み」のスキル-2 Oct. 19, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-19

 

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ペトロナス

円と直線で囲まれた領域の問題は、進研模試の過去問です。
(2)に「点Aにおける円Kの接線の方程式を求めよ」が入ってます。
詳しい説明はブログ記事にUPしています。
出題者の意図は円Kの接線と円Kの中心の距離が半径√10であることから点と距離の公式を使って解いて欲しいのだと思います。

http://blogs.yahoo.co.jp/east201110/13427565.html
by ペトロナス (2015-11-03 15:13) 

ebisu

ペトロナスさん

相変わらずスマートな解法の提供ありがとうございます。
出題者はあなたが述べたように、「点と直線の距離の公式」を使ってほしいのでしょうね。

点(x,y)から直線 ax+by+c=0 間での距離、
d=|ax1+by1+c|/(√a^2+b^2)

この方法でも解いてもらいます。複数の解法を学ぶことで問題の全体が見えてきて、それぞれの解法のメリットとデメリットも比較できます。

本欄の方へペトロナスさんのブログのURLを追記しておきます。
いつもご親切にありがとうございます。
by ebisu (2015-11-03 22:32) 

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