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#2968 『資本論』と経済学(24):「浜矩子 予算案と公共性について」 Feb. 11, 2015 [資本論と21世紀の経済学(初版)]


22. <浜矩子 2015年度政府予算案と公共性について>

 NHKラジオ番組「ビジネス展望」(朝643分から10分ほどの番組、29日放送)で、同志社大大学院の浜矩子教授が、平成27年度政府予算案を俎板に載せて次のように論評した。
□ 予算最大規模
□ 歳出規模が過去最大
□ 国防費増額
□ 生活保護費は支給基準の見直しがなされて減額
□ 法人税減税の一方で、赤字企業への課税強化
□ 沖縄への振興策は減額

 これらを総称して「メリハリつきすぎ予算」、「依怙贔屓が見えすぎちゃう」とのたまう。とどめは「公共財の私物化と言うべきものではないか」。
 浜氏は公共財とは「幅広く人々に便益が及ぶもの、そのために公共部門が責任をもってサービスを提供する」と定義する。「そういうことをやるのが政府の仕事であって自分のやりたいことをやるのは公共サービスではない、安倍政権においてはその辺のところが非常に混同されている」と鋭い指摘。
 私物化の具体例を次々に挙げた。
□ 政治家が軍備を強化したいと思うから国防予算を膨らませる
□ 気に食わない相手に対しては支援の規模を削り込んでしまう⇒沖縄
□ 人気を取りたいから、新幹線網を整備する
□ 大企業を自分が優遇したいから法人税を減税

  ようするに、自分たちがやりたいことをやるという姿勢がはっきり見える、こういうのは政策意図とは言わない。自分がやりたいことをやるのは、公共部門が政策に携わるときの発想ではない。
 聞き手が次のように問いただした。
      公共事業は景気の下支えに必要
      国防予算増額は周囲の安全保障環境の変化に対応するもの
      法人税減税は国際競争力を強化するためのもの

 浜氏の答えは次のように原理原則に還るものだった。 公共性とか公益性とはどういうことをさすのか?政府の役割はどういうものか?①放置しておくと誰もやらないことをやる、②ほうっておくと消えてしまうサービスを提供する、③誰も見向きもしない弱者を助ける。政府や国家は国民のためにサービスを提供する事業者であり、そういうこと(①、②、③)を前提にわれわれは税金を払って政府や国家を養っている。安倍政権の平成27年度予算案はその辺に対する認識が希薄である。
 浜氏はジョン・メナード・ケインズの言を挙げた。政府にとって重要なのは、個々人がすでにやっていることを少し上手にやるあるいは少し下手にやることではなく、他の誰もがやらないことをやるのが政府の仕事である」、ケインズは財政政策にとって重要なポイントをしっかり指摘している。
  安倍政権の平成27年度予算案が民意の結果ではないかとの質問に対しては、次のようにばっさり切り捨てた。「傲岸不遜、選挙で勝てば何をしてもいいのか?自分たちのやっていることはすべて公共性があるのか?そんなことはない、(自民党や公明党に)投票しなかった人もいるし、それに今回の選挙では自民党は議席を減らしている。国民すべてのために公共性、公益性を考えなければならない。(安倍政権は)民主主義のプロセスをわかっていない。」

  過去最大規模の予算についてはどのように思うか問われて、数字を挙げて警鐘を鳴らした。

「公的部門の借金残高がGDP233.8%、破綻しつつあるギリシアですら179.9%、こんな状態にあるのに、一方でやりたいことをやるために歳出規模を最大にするというのは公共性や公益性がない。借金を返すために借金をしていく一方で、派手な事業を積み上げていく。これはやはり公共性を意識していない政策姿勢。」

  新規国債は減る計画だがという問いには次のように答えた。

「円安、株高、そういう状態を政府が作り出したパフォーマンスの成果、だから何をやってもいいんだということではない。」自作自演の円安と株高で一時的に税収が増えただけ、後にはたいへんなツケが回ってくるということだろう。 

 公共性を前面に押し出しての浜氏の論の展開はなかなか迫力があった。わたしは11節<学としての『資本論』体系解説>で、資本論の公理・公準とは異なる13の公理・公準を挙げて、新しい経済学の枠組みを示した。

 
1.仕事は神聖なものであり、歓びである ⇒第1の公理
 
2.商品には価値がある、価値のないものは商品ではない ⇒第2の公理
 3.商品には使用価値がある、使用価値のないものは商品ではない ⇒第3の公理
 4.価値には普遍性がある ⇒第4の公理
 
5.一人前の職人の仕事は職種を超えて同一であるものとする ⇒第一の公準 
 6.商品の価値量はそれに含まれている一人前の職人の仕事量で決まるものとする ⇒第2の公準
 7.名人の仕事の質は無限大であるとする ⇒第3の公準 
 8.名人の仕事の質は一人前の職人の仕事の質と比較できない ⇒第5の公理
 
9.資本の運動は利潤を生み、生産性増大は利潤を増大させる ⇒第6の公理
10.小欲知足:欲望の抑制 ⇒第4の公準
11.生産力と環境との調和 ⇒第5の公準
12.売り手よし、買い手よし、世間よしの三法よし ⇒第6の公準
13.浮利を追わぬ ⇒第7の公準

 No.10
13は倫理基準でもある。第4の公準~第7の公準は、欲望のままに動いていい、自分さえよければいい、環境がどうなってもいい、取引相手に損をさせても世間に迷惑をかけてもいい、いまさえよければいい、そういう考えをいましめたものだ。政策決定権限のある者がこれらの倫理基準を無視して動いたら、長続きはしないし、大多数の者の幸福にはつながらぬ。
 
世界中の創業二百年を超える企業の7割ほどが日本にあるのは、「自分だけ儲けりゃ好い」とか「だまされるほうが悪い」という弱肉強食の価値観ではなく、毎日仕事の技術を磨き、誰が見ていなくても仕事の手を抜かず、「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」を旨として、浮利を追わないという、日本的倫理基準をベースに日本企業を運営してきたからだろう
 財政政策に関する公共性や公益性は、個々人の勝手気ままな欲望の拡大再生産を抑え、意見を異にする者たちのことも考慮に入れて政策決定をすることで担保される。自分たちのやりたいことだけをやるというのでは、その政策には公共性や公益性が微塵も感じられない。
 
国の財政は公共財であるから、その歳出を恣意的に加減した平成27年度予算案は「公共財の私物化」と言われてもしかたのないものになっている。
 
具体例として沖縄の件とTPPでの全国農協中央会つぶしを挙げるだけでいいだろう。沖縄県知事が当選後の陳情に東京へ来たが、菅官房長官にも防衛大臣にも門前払いを食らって沖縄へ戻った、振興予算も削られた、ひどい仕打ちに見える。TPPに抵抗する農協の力を削ぐために、監査権限をとりあげる。これも露骨な嫌がらせで、自分たちがやりたいこと(TPP)をやるためには何でもやるという典型的な姿勢であり、公共性や公益性をかなぐり捨てた蛮行である。

 日本経済の規模はGDPでみると世界の8.3%を占めており、ドイツとフランスを合わせた規模をもつ。その破綻は世界経済にとっても甚大な影響を及ぼさずにはいない。日本の経済規模は世界第3位、その政府が財政破綻したときの影響は全世界を駆け巡る。国内だけではない、世界に対しても責任ある行動をしなければならない。
 日本は縄文時代以来初めての人口減少時代に突入してしまったから、経済規模の縮小は避けられない。規模縮小を先読みしてそれにふさわしい経済政策を立案すべきであるのに、ありもしない「経済成長」の旗を降ろそうとしない。考え方の基本がしっかりしていない経済政策は危うい。安倍政権は公共財である政府財政をどのような経済学の公理・公準(=経済哲学および倫理基準)に基づいて立案・実行しようとしているのか?


*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 #2948 『資本論』と経済学(12) : 「学としての『資本論』体系解説」 Jan. 29, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30

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